60 / 68
最終章 孫を追いかけ最後の追い込みで御座います。
8-4 国王在位10周年6の日で御座います。
しおりを挟む
「探偵さんよぅ。昨日は疲れたのぅ。わしはもう動けないんじゃ」
人鷲カフェ2号店のテーブルに、じぃじがだらしなく顎をのせておいでです。さすがに齢66の体には堪えたので御座いましょう。私も、一瞬の事でしたが、昨日の揉みくちゃに、まだ全身が痛とう御座います。
「どうぞ今日はゆっくりなさってください。今日の催しはゴブリンの森だそうです。冒険者を目指さないなら関係ないですし、光江さんはもうランクDの冒険者ですしね」
そうで御座いました。私、冒険者ギルドでギルド証を頂いたので御座いました。
「……そうですね、じぃじ。無理はいけません。明後日が私達にとって本番です。もう歳なんですから、今日明日はゆっくりどうぞ」
「もう歳って。ばぁばだって変わらんじゃろ」
「まぁ、そうで御座いますね。ですが私はピンガルの実を頂いてますから」
「おお、そうじゃったの。わしにもくれんか。あのミーナって人鷲に全部ジュースにしてもらって飲むんじゃ!」
全部だなんて、じぃじったら本当に欲張りで御座います。
「おい、じじぃ。ピンガルの実は大量に食べたら、腹を下すから気をつけるんだな」
「じじぃじゃない! じぃじじゃ!」
じぃじに強気なミーナさん。それに対抗するじぃじ。たまにはこう言う光景も面白いもので御座います。探偵さんも、レオンさんも何だか今日はのんびりお過ごしです。……そんな午前中の緩い光の中で、寛いでいる時で御座いました。
「おい、ヨーフ。随分と余裕な様子だな」
テーブルの前に現れたのは、真っ黒なマントを羽織ったローグさんで御座いました。……あら。真っ黒と申しましたが、翻ったマントの裏地は玉虫色で御座います。さすが本当の国王だけあって、お洒落さんで御座います。
「どうしたんですか? こんな所まで」
探偵さんが返すと、奥から、「いらっしゃい」と、威勢のいい声と共に、ウーグルさんが出ていらっしゃいました。
「陛下!」
一目見て驚いたので御座いましょう。ウーグルさんが、とんでもなく裏返った声で叫ばれました。
「……陛下。どうして私共の店にいらっしゃったのですか?」
そうでした。ウーグルさんは王室護衛隊の隊長だった方です。現国王の顔を知っていても当然で御座います。
「説明が難しくなるので、陛下と呼ぶのはおやめください。そうですね、ローグと名前で呼んで頂ければ」
ローグさんが気さくに笑って、おっしゃいました。ですがウーグルさんは、何も発せず突っ立ったままで御座います。
「ローグさんもコーヒーでよろしいですか?」
「あ、はい。コーヒーを」
「ウーグルさん。コーヒーをもう一つお願い致します」
探偵さんの向かいに腰を下ろしたのを確認して、ウーグルさんに注文を伝えます。
「……それで、どうしたんですか?」
探偵さんのお声に、仕切り直しで御座います。
「ああ。俺なりに考えてみたんだ。やはり増税を行い、私腹を肥やすアンダンは見過ごしてはおけない。それに……」
「それに何ですか?」
ローグさんが、グッと何やら考え込んでおいでです。
「……康夫さん達の前でお話するのもなんですが。お二人の息子さんは国王として、この国を司るには役不足です。アンダンの言いなりで、ただのお飾りでしかない」
私達を前には話辛かった事は、よく分かりました。私達の息子……聖人を役不足だと言うんですから。ですが当然の事で御座います。
「……ローグさん。申し訳御座いませんが、当然の事で御座います。私達は聖人を国王にすべく育ててはまいりませんでした。先日のお話では、聖人達は自分達が、死んだものと思っているとの事でした。国王として召喚され、生きて行くためには、そこにしか選択肢がなかったんだと思っております」
「聖人さん達にとっての選択肢……そうですね。きっと他に選べる道がなかったんでしょう」
探偵さんが静かに、お答えくださいました。私達の気持ちを踏まえ、寄り添ってくださる探偵さんには、しつこいですが感謝しか御座いません。
「……そうですね。ですがもし選択肢が生まれたら?」
ローグさんの意図する事が見えませんでした。選択肢が生まれるとは?
「どう言う意味で御座いましょうか?」
「ヨーフにもしっかりと聞いておいて欲しい。私は国王の座を奪還する。国王として、この国を守っていく。と、なれば、現国王はお役御免だ。生前に召喚されたのであれば、元の世界に戻る事も出来るだろう。……私が国王に就く事で、生まれる選択肢。だがもし国王の座にしがみつくのであれば、戦う事になるだろう」
凛としたローグさんのお姿は、やはり国王になるべき方のお姿で御座いません。
「ローグさん。私達とローグさんの意見は一致しております。私の願いは孫の雷人と、息子達を連れて元の世界に戻る事だけです。そのためなら何でも致します」
「では、明日のお料理コンテスト、頑張ってください」
「え?」
当然、ローグさんが話を変えられて、びっくりで御座います。
「明日の優勝者の料理は、国王に献上されます。もし優勝して献上となれば、謁見の日を待たずに息子さんに会って頂ける。……そして息子さんの意思を聞いていただきたい」
んまっ。重大任務では御座いませんか。お料理は大好きですが、易々と優勝できるものでしょうか。……いえ、不安を口にしてはいけませんね。何が何でも優勝すると言う思いが無ければ、優勝などきっと出来ません。
人鷲カフェ2号店のテーブルに、じぃじがだらしなく顎をのせておいでです。さすがに齢66の体には堪えたので御座いましょう。私も、一瞬の事でしたが、昨日の揉みくちゃに、まだ全身が痛とう御座います。
「どうぞ今日はゆっくりなさってください。今日の催しはゴブリンの森だそうです。冒険者を目指さないなら関係ないですし、光江さんはもうランクDの冒険者ですしね」
そうで御座いました。私、冒険者ギルドでギルド証を頂いたので御座いました。
「……そうですね、じぃじ。無理はいけません。明後日が私達にとって本番です。もう歳なんですから、今日明日はゆっくりどうぞ」
「もう歳って。ばぁばだって変わらんじゃろ」
「まぁ、そうで御座いますね。ですが私はピンガルの実を頂いてますから」
「おお、そうじゃったの。わしにもくれんか。あのミーナって人鷲に全部ジュースにしてもらって飲むんじゃ!」
全部だなんて、じぃじったら本当に欲張りで御座います。
「おい、じじぃ。ピンガルの実は大量に食べたら、腹を下すから気をつけるんだな」
「じじぃじゃない! じぃじじゃ!」
じぃじに強気なミーナさん。それに対抗するじぃじ。たまにはこう言う光景も面白いもので御座います。探偵さんも、レオンさんも何だか今日はのんびりお過ごしです。……そんな午前中の緩い光の中で、寛いでいる時で御座いました。
「おい、ヨーフ。随分と余裕な様子だな」
テーブルの前に現れたのは、真っ黒なマントを羽織ったローグさんで御座いました。……あら。真っ黒と申しましたが、翻ったマントの裏地は玉虫色で御座います。さすが本当の国王だけあって、お洒落さんで御座います。
「どうしたんですか? こんな所まで」
探偵さんが返すと、奥から、「いらっしゃい」と、威勢のいい声と共に、ウーグルさんが出ていらっしゃいました。
「陛下!」
一目見て驚いたので御座いましょう。ウーグルさんが、とんでもなく裏返った声で叫ばれました。
「……陛下。どうして私共の店にいらっしゃったのですか?」
そうでした。ウーグルさんは王室護衛隊の隊長だった方です。現国王の顔を知っていても当然で御座います。
「説明が難しくなるので、陛下と呼ぶのはおやめください。そうですね、ローグと名前で呼んで頂ければ」
ローグさんが気さくに笑って、おっしゃいました。ですがウーグルさんは、何も発せず突っ立ったままで御座います。
「ローグさんもコーヒーでよろしいですか?」
「あ、はい。コーヒーを」
「ウーグルさん。コーヒーをもう一つお願い致します」
探偵さんの向かいに腰を下ろしたのを確認して、ウーグルさんに注文を伝えます。
「……それで、どうしたんですか?」
探偵さんのお声に、仕切り直しで御座います。
「ああ。俺なりに考えてみたんだ。やはり増税を行い、私腹を肥やすアンダンは見過ごしてはおけない。それに……」
「それに何ですか?」
ローグさんが、グッと何やら考え込んでおいでです。
「……康夫さん達の前でお話するのもなんですが。お二人の息子さんは国王として、この国を司るには役不足です。アンダンの言いなりで、ただのお飾りでしかない」
私達を前には話辛かった事は、よく分かりました。私達の息子……聖人を役不足だと言うんですから。ですが当然の事で御座います。
「……ローグさん。申し訳御座いませんが、当然の事で御座います。私達は聖人を国王にすべく育ててはまいりませんでした。先日のお話では、聖人達は自分達が、死んだものと思っているとの事でした。国王として召喚され、生きて行くためには、そこにしか選択肢がなかったんだと思っております」
「聖人さん達にとっての選択肢……そうですね。きっと他に選べる道がなかったんでしょう」
探偵さんが静かに、お答えくださいました。私達の気持ちを踏まえ、寄り添ってくださる探偵さんには、しつこいですが感謝しか御座いません。
「……そうですね。ですがもし選択肢が生まれたら?」
ローグさんの意図する事が見えませんでした。選択肢が生まれるとは?
「どう言う意味で御座いましょうか?」
「ヨーフにもしっかりと聞いておいて欲しい。私は国王の座を奪還する。国王として、この国を守っていく。と、なれば、現国王はお役御免だ。生前に召喚されたのであれば、元の世界に戻る事も出来るだろう。……私が国王に就く事で、生まれる選択肢。だがもし国王の座にしがみつくのであれば、戦う事になるだろう」
凛としたローグさんのお姿は、やはり国王になるべき方のお姿で御座いません。
「ローグさん。私達とローグさんの意見は一致しております。私の願いは孫の雷人と、息子達を連れて元の世界に戻る事だけです。そのためなら何でも致します」
「では、明日のお料理コンテスト、頑張ってください」
「え?」
当然、ローグさんが話を変えられて、びっくりで御座います。
「明日の優勝者の料理は、国王に献上されます。もし優勝して献上となれば、謁見の日を待たずに息子さんに会って頂ける。……そして息子さんの意思を聞いていただきたい」
んまっ。重大任務では御座いませんか。お料理は大好きですが、易々と優勝できるものでしょうか。……いえ、不安を口にしてはいけませんね。何が何でも優勝すると言う思いが無ければ、優勝などきっと出来ません。
36
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる