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第28話 故国の凋落
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私がガルディアでライオネル公爵の庇護のもと、少しずつ自分の居場所を築き、その才能を開花させつつある一方で、私の故国であるエスタード王国は、深刻な混乱の渦に巻き込まれ始めていた。
その情報は、ガルディアの広範な情報網からもたらされるものや、時折ヴァルテンシュタットを訪れるエスタードの商人たちの噂話など、様々な形で私の耳にも届いていた。そして、その内容は、私の心を複雑な思いで満たすものばかりだった。
まず、私が婚約破棄されてからというもの、レオンハルト王子の失政が目に余るようになったらしい。私が影で支えていた頃は、少なくとも表面的にはそつなくこなしているように見えた彼の執務も、その「縁の下の力持ち」がいなくなった途端、たちまち立ち行かなくなったのだ。
重要な政策決定は遅々として進まず、以前私がまとめた資料や提案は埃をかぶったまま。外交においては、近隣諸国との間で些細なトラブルが頻発し、その対応も後手後手に回っているという。経済指標も軒並み悪化し、特に物価の上昇は庶民の生活を直撃し、国内の不満は日増しに高まっているとのことだった。
(やはり……殿下お一人では、無理だったのね……)
それを聞いて、安堵したわけではない。むしろ、胸が痛んだ。私がどれだけ侮辱され、傷つけられたとしても、エスタードは私の生まれ故郷であり、そこにはマーサのような大切な人もいるのだから。
レオンハルト殿下の新しい婚約者候補と噂されていたイザベラ・フォン・ローゼンベルク嬢は、確かに華やかで社交界では注目を集めていたけれど、実務能力に関しては皆無だったらしい。彼女は、王太子妃教育にも熱心ではなく、ただ贅沢なドレスや宝石を身に着け、夜会で踊り明かすことしか興味がないという有様。当然、王子の執務を助けることなどできるはずもなく、むしろ彼の浪費を助長するばかりだと、陰で囁かれているそうだ。
「エスタードの貴族たちも、相変わらずだそうですよ。自分たちの権力争いに明け暮れて、国のことなど真剣に考えている者はほとんどいないとか。……アリアナ様のような方がいらっしゃらなくなった今、あの国は一体どうなってしまうのやら」
執事のクラウスさんが、同情するような、それでいてどこか軽蔑するような口調で、私にそう語ってくれたことがある。彼の言葉は、エスタードの貴族社会の腐敗ぶりと、その将来の暗さを的確に言い表していた。
私がエスタードにいた頃、必死に隠蔽し、取り繕ってきた問題点が、私が去った途端、まるで堰を切ったように噴出し始めている。それは、皮肉なことではあるけれど、私のこれまでの努力が、決して無駄ではなかったということの証明でもあったのかもしれない。
(けれど……だからといって、私が今、何かできるわけでもない……)
故国の惨状を伝え聞くたびに、私の心は重く沈んだ。マーサは元気にしているだろうか。民衆は、この苦しい状況に耐えているのだろうか。そんな思いが頭をよぎる。
だが、今の私には、もうエスタードに対して何もできることはない。私は、ガルディアの人間として、ライオネル公爵の婚約者として、ここで自分の役割を果たすしかないのだ。
時折、故郷の空を思い浮かべながら、私は複雑な感傷を胸の奥にしまい込み、ガルディアでの日々に意識を集中させるよう努めた。エスタードの未来がどうなるのかは分からない。けれど、私はここで、自分の選んだ道を、力強く歩んでいくしかないのだから。それが、皮肉にも私をこの道へと追いやった彼らへの、私なりの「答え」になるのかもしれない、と思いながら。
その情報は、ガルディアの広範な情報網からもたらされるものや、時折ヴァルテンシュタットを訪れるエスタードの商人たちの噂話など、様々な形で私の耳にも届いていた。そして、その内容は、私の心を複雑な思いで満たすものばかりだった。
まず、私が婚約破棄されてからというもの、レオンハルト王子の失政が目に余るようになったらしい。私が影で支えていた頃は、少なくとも表面的にはそつなくこなしているように見えた彼の執務も、その「縁の下の力持ち」がいなくなった途端、たちまち立ち行かなくなったのだ。
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(やはり……殿下お一人では、無理だったのね……)
それを聞いて、安堵したわけではない。むしろ、胸が痛んだ。私がどれだけ侮辱され、傷つけられたとしても、エスタードは私の生まれ故郷であり、そこにはマーサのような大切な人もいるのだから。
レオンハルト殿下の新しい婚約者候補と噂されていたイザベラ・フォン・ローゼンベルク嬢は、確かに華やかで社交界では注目を集めていたけれど、実務能力に関しては皆無だったらしい。彼女は、王太子妃教育にも熱心ではなく、ただ贅沢なドレスや宝石を身に着け、夜会で踊り明かすことしか興味がないという有様。当然、王子の執務を助けることなどできるはずもなく、むしろ彼の浪費を助長するばかりだと、陰で囁かれているそうだ。
「エスタードの貴族たちも、相変わらずだそうですよ。自分たちの権力争いに明け暮れて、国のことなど真剣に考えている者はほとんどいないとか。……アリアナ様のような方がいらっしゃらなくなった今、あの国は一体どうなってしまうのやら」
執事のクラウスさんが、同情するような、それでいてどこか軽蔑するような口調で、私にそう語ってくれたことがある。彼の言葉は、エスタードの貴族社会の腐敗ぶりと、その将来の暗さを的確に言い表していた。
私がエスタードにいた頃、必死に隠蔽し、取り繕ってきた問題点が、私が去った途端、まるで堰を切ったように噴出し始めている。それは、皮肉なことではあるけれど、私のこれまでの努力が、決して無駄ではなかったということの証明でもあったのかもしれない。
(けれど……だからといって、私が今、何かできるわけでもない……)
故国の惨状を伝え聞くたびに、私の心は重く沈んだ。マーサは元気にしているだろうか。民衆は、この苦しい状況に耐えているのだろうか。そんな思いが頭をよぎる。
だが、今の私には、もうエスタードに対して何もできることはない。私は、ガルディアの人間として、ライオネル公爵の婚約者として、ここで自分の役割を果たすしかないのだ。
時折、故郷の空を思い浮かべながら、私は複雑な感傷を胸の奥にしまい込み、ガルディアでの日々に意識を集中させるよう努めた。エスタードの未来がどうなるのかは分からない。けれど、私はここで、自分の選んだ道を、力強く歩んでいくしかないのだから。それが、皮肉にも私をこの道へと追いやった彼らへの、私なりの「答え」になるのかもしれない、と思いながら。
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