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第43話 招かれざる客
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私とライオネル様の結婚式の準備が着々と進み、公爵邸全体が華やいだ喜びに包まれていた、そんなある日のこと。エスタード王国から、驚くべき知らせがもたらされた。
なんと、あのレオンハルト第一王子が、「両国の友好親善を深めるため」という名目で、公式にガルディア王国を訪問するというのだ。
(レオンハルト殿下が……このガルディアへ……?)
その知らせを聞いた瞬間、私の背筋を冷たいものが走り抜けた。友好親善などというのは、表向きの口実に決まっている。彼の真の目的は、間違いなく……私だ。
ライオネル様も、その報告を受けた時、眉間に深い皺を寄せ、明らかに不快な表情を浮かべていた。
「……あの男、まだ諦めていなかったか。友好親善とは、よく言ったものだ。その厚顔無恥さには、ある意味で感心するな」
彼の声には、冷たい怒りと、そして私を案じる響きが込められていた。
「公爵様……」
「心配はいらない、アリアナ。彼がどんな目的で来ようとも、君に指一本触れさせるつもりはない。ガルディア王国としては、表向きは国賓として丁重に迎え入れるが、その行動は厳重に監視させる。そして、君の安全は、私が必ず守る」
その力強い言葉に、私は少しだけ安堵感を覚えた。けれど、レオンハルト殿下が、わざわざこのガルディアまでやって来るという事実は、私の心に重くのしかかっていた。彼は一体、何を企んでいるのだろうか。
数日後、レオンハルト殿下率いるエスタードの使節団が、首都ヴァルテンシュタットに到着した。ガルディア側は、外交儀礼に則り、彼らを丁重に出迎えたが、その裏では厳重な警戒態勢が敷かれていた。
そして、その日の夜。公爵邸で、レオンハルト殿下を歓迎するための、小規模な晩餐会が開かれることになった。もちろん、私もライオネル様の婚約者として、その席に出席しなければならない。
(会いたくない……。けれど、逃げるわけにはいかないわ……)
私は、覚悟を決めて、ライオネル様に選んでもらった美しいドレスを身にまとい、会場へと向かった。ライオネル様は、ずっと私の手を強く握りしめ、私を励ますように優しく微笑んでくれている。
晩餐会の会場に入ると、すぐにレオンハルト殿下の姿が目に入った。彼は、以前よりも少しやつれたように見えたが、その瞳だけは、相変わらず傲慢な光を宿している。そして、私の姿を認めた瞬間、彼の顔には、一瞬だけ複雑な表情が浮かんだように見えた。それは、驚き、後悔、そして……まだ諦めきれない執着の色。
「やあ、アリアナ。……久しぶりだな。息災だったか?」
彼は、わざと親しげな口調で私に話しかけてきた。その声に、私の心は嫌悪感で凍りつく。
「レオンハルト殿下。ようこそ、ガルディアへお越しくださいました。私は、ライオネル公爵閣下のお陰で、大変健やかに過ごしておりますわ」
私は、努めて冷静に、そしてはっきりとそう答えた。彼の言葉に、そして彼の存在に、もう私が揺らぐことはないと示すために。
私の隣では、ライオネル様が、まるで私を守るように、レオンハルト殿下を牽制するような鋭い視線を向けている。
レオンハルト殿下は、そんな私たち二人の様子を見て、一瞬だけ唇を噛み締めたように見えたが、すぐにいつもの不遜な笑みを浮かべた。
「そうか、それは何よりだ。……だが、アリアナ。君は、本当にそれで満足しているのか? 君の本当の居場所は、ここではないはずだ。私はね、君を救いに来たのだよ。私と一緒に、エスタードへ帰ろうじゃないか」
その言葉は、あまりにも自己中心的で、独りよがりだった。彼は、まだ何も分かっていないのだ。私が、なぜエスタードを離れたのか。そして、なぜ今、ここにいるのか。
招かれざる客、レオンハルト王子。彼のガルディア訪問は、これから数日間にわたり、私たちに新たな波紋を投げかけることになるのだろう。けれど、もう私は恐れない。私の隣には、誰よりも強く、そして優しい人がいてくれるのだから。
なんと、あのレオンハルト第一王子が、「両国の友好親善を深めるため」という名目で、公式にガルディア王国を訪問するというのだ。
(レオンハルト殿下が……このガルディアへ……?)
その知らせを聞いた瞬間、私の背筋を冷たいものが走り抜けた。友好親善などというのは、表向きの口実に決まっている。彼の真の目的は、間違いなく……私だ。
ライオネル様も、その報告を受けた時、眉間に深い皺を寄せ、明らかに不快な表情を浮かべていた。
「……あの男、まだ諦めていなかったか。友好親善とは、よく言ったものだ。その厚顔無恥さには、ある意味で感心するな」
彼の声には、冷たい怒りと、そして私を案じる響きが込められていた。
「公爵様……」
「心配はいらない、アリアナ。彼がどんな目的で来ようとも、君に指一本触れさせるつもりはない。ガルディア王国としては、表向きは国賓として丁重に迎え入れるが、その行動は厳重に監視させる。そして、君の安全は、私が必ず守る」
その力強い言葉に、私は少しだけ安堵感を覚えた。けれど、レオンハルト殿下が、わざわざこのガルディアまでやって来るという事実は、私の心に重くのしかかっていた。彼は一体、何を企んでいるのだろうか。
数日後、レオンハルト殿下率いるエスタードの使節団が、首都ヴァルテンシュタットに到着した。ガルディア側は、外交儀礼に則り、彼らを丁重に出迎えたが、その裏では厳重な警戒態勢が敷かれていた。
そして、その日の夜。公爵邸で、レオンハルト殿下を歓迎するための、小規模な晩餐会が開かれることになった。もちろん、私もライオネル様の婚約者として、その席に出席しなければならない。
(会いたくない……。けれど、逃げるわけにはいかないわ……)
私は、覚悟を決めて、ライオネル様に選んでもらった美しいドレスを身にまとい、会場へと向かった。ライオネル様は、ずっと私の手を強く握りしめ、私を励ますように優しく微笑んでくれている。
晩餐会の会場に入ると、すぐにレオンハルト殿下の姿が目に入った。彼は、以前よりも少しやつれたように見えたが、その瞳だけは、相変わらず傲慢な光を宿している。そして、私の姿を認めた瞬間、彼の顔には、一瞬だけ複雑な表情が浮かんだように見えた。それは、驚き、後悔、そして……まだ諦めきれない執着の色。
「やあ、アリアナ。……久しぶりだな。息災だったか?」
彼は、わざと親しげな口調で私に話しかけてきた。その声に、私の心は嫌悪感で凍りつく。
「レオンハルト殿下。ようこそ、ガルディアへお越しくださいました。私は、ライオネル公爵閣下のお陰で、大変健やかに過ごしておりますわ」
私は、努めて冷静に、そしてはっきりとそう答えた。彼の言葉に、そして彼の存在に、もう私が揺らぐことはないと示すために。
私の隣では、ライオネル様が、まるで私を守るように、レオンハルト殿下を牽制するような鋭い視線を向けている。
レオンハルト殿下は、そんな私たち二人の様子を見て、一瞬だけ唇を噛み締めたように見えたが、すぐにいつもの不遜な笑みを浮かべた。
「そうか、それは何よりだ。……だが、アリアナ。君は、本当にそれで満足しているのか? 君の本当の居場所は、ここではないはずだ。私はね、君を救いに来たのだよ。私と一緒に、エスタードへ帰ろうじゃないか」
その言葉は、あまりにも自己中心的で、独りよがりだった。彼は、まだ何も分かっていないのだ。私が、なぜエスタードを離れたのか。そして、なぜ今、ここにいるのか。
招かれざる客、レオンハルト王子。彼のガルディア訪問は、これから数日間にわたり、私たちに新たな波紋を投げかけることになるのだろう。けれど、もう私は恐れない。私の隣には、誰よりも強く、そして優しい人がいてくれるのだから。
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