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第45話 最後の言葉
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レオンハルト殿下のガルディア滞在も、いよいよ最終日を迎えた。この数日間、彼は何度も私に接触しようと試みたが、その度にライオネル様に阻まれ、そして私の変わらぬ姿と、私たち二人の揺るぎない絆を目の当たりにし、彼の心は完全に折れてしまっているように見えた。
彼がガルディアを発つ日の朝。ライオネル様の計らいで、私は彼と二人きりで話す機会を与えられた。公爵邸の、静かな一室で。
レオンハルト殿下は、憔悴しきった様子でソファに座っていた。かつての傲慢な光を失ったその瞳は、どこか虚ろで、力がない。
「アリアナ……」
彼が、か細い声で私の名前を呼んだ。
「最後に……最後に、もう一度だけ、君に聞きたい。……本当に、私とエスタードへ戻る気はないのか? 私が……私が間違っていた。君の価値を、私は全く理解していなかった。今なら分かる。君こそが、私にとって、そしてエスタードにとって、必要な人間なのだ。どうか……もう一度だけ、チャンスをくれないか?」
その言葉は、以前のような独りよがりな響きではなく、どこか切実な、懇願するような響きを帯びていた。彼が、心から後悔していることは伝わってきた。けれど……。
「殿下」
私は、静かに、しかしきっぱりとした口調で言った。
「お言葉ですが、もう遅すぎるのです」
私の言葉に、彼の肩が小さく震えた。
「私は、ここで、このガルディアで、新しい人生を見つけました。私を心から愛し、私の才能を信じ、そして私を必要としてくれる人がいます。ここで、私は自分の力で立ち、自分の意思で生きていく喜びを知りました。それは、殿下が私に与えてくださったものではありません」
私は、まっすぐに彼の目を見つめて続けた。
「殿下は、私が『地味で華がない』とおっしゃいました。そして、私を捨てました。そのおかげで、私はライオネル様と出会い、本当の自分を見つけることができたのです。皮肉なことですが、ある意味では、殿下に感謝しているのかもしれませんわ」
「……アリアナ……」
「ですから、もう、私の人生に関わらないでください。私は、ライオネル様と共に、このガルディアで生きていきます。それが、私の選んだ道であり、私の幸せなのです」
そして、私は、この物語の始まりとなった、あの言葉を、今度は私自身の口から、彼に告げた。
「――手放したのは、貴方の方です、レオンハルト殿下」
その言葉は、彼にとって、決定的な最後通牒となっただろう。彼の顔から、最後の血の気が引いていくのが分かった。その瞳には、深い絶望と、そしてほんの少しの……諦観のような色が浮かんでいる。
彼は、もう何も言わなかった。ただ、力なく頷くと、ふらつく足取りで部屋を出て行った。その背中は、あまりにも小さく、哀れに見えた。
彼がガルディアを去った後、私は一人、部屋に残された。胸の中に、様々な感情が渦巻いていた。かつての婚約者への、ほんの僅かな憐憫の情。そして何よりも、過去と完全に決別し、新しい未来へと歩み出すことのできた、晴れやかな解放感。
(これで、本当に終わったのね……)
もう、エスタードの影に怯える必要はない。私は、自由なのだ。
窓の外には、どこまでも広がる青空が見えた。それは、まるで私の未来を祝福してくれているかのようだった。
私は、深呼吸を一つすると、愛する人の待つ場所へと、確かな足取りで歩き始めた。私の本当の幸せは、ここにあるのだから。
彼がガルディアを発つ日の朝。ライオネル様の計らいで、私は彼と二人きりで話す機会を与えられた。公爵邸の、静かな一室で。
レオンハルト殿下は、憔悴しきった様子でソファに座っていた。かつての傲慢な光を失ったその瞳は、どこか虚ろで、力がない。
「アリアナ……」
彼が、か細い声で私の名前を呼んだ。
「最後に……最後に、もう一度だけ、君に聞きたい。……本当に、私とエスタードへ戻る気はないのか? 私が……私が間違っていた。君の価値を、私は全く理解していなかった。今なら分かる。君こそが、私にとって、そしてエスタードにとって、必要な人間なのだ。どうか……もう一度だけ、チャンスをくれないか?」
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「殿下」
私は、静かに、しかしきっぱりとした口調で言った。
「お言葉ですが、もう遅すぎるのです」
私の言葉に、彼の肩が小さく震えた。
「私は、ここで、このガルディアで、新しい人生を見つけました。私を心から愛し、私の才能を信じ、そして私を必要としてくれる人がいます。ここで、私は自分の力で立ち、自分の意思で生きていく喜びを知りました。それは、殿下が私に与えてくださったものではありません」
私は、まっすぐに彼の目を見つめて続けた。
「殿下は、私が『地味で華がない』とおっしゃいました。そして、私を捨てました。そのおかげで、私はライオネル様と出会い、本当の自分を見つけることができたのです。皮肉なことですが、ある意味では、殿下に感謝しているのかもしれませんわ」
「……アリアナ……」
「ですから、もう、私の人生に関わらないでください。私は、ライオネル様と共に、このガルディアで生きていきます。それが、私の選んだ道であり、私の幸せなのです」
そして、私は、この物語の始まりとなった、あの言葉を、今度は私自身の口から、彼に告げた。
「――手放したのは、貴方の方です、レオンハルト殿下」
その言葉は、彼にとって、決定的な最後通牒となっただろう。彼の顔から、最後の血の気が引いていくのが分かった。その瞳には、深い絶望と、そしてほんの少しの……諦観のような色が浮かんでいる。
彼は、もう何も言わなかった。ただ、力なく頷くと、ふらつく足取りで部屋を出て行った。その背中は、あまりにも小さく、哀れに見えた。
彼がガルディアを去った後、私は一人、部屋に残された。胸の中に、様々な感情が渦巻いていた。かつての婚約者への、ほんの僅かな憐憫の情。そして何よりも、過去と完全に決別し、新しい未来へと歩み出すことのできた、晴れやかな解放感。
(これで、本当に終わったのね……)
もう、エスタードの影に怯える必要はない。私は、自由なのだ。
窓の外には、どこまでも広がる青空が見えた。それは、まるで私の未来を祝福してくれているかのようだった。
私は、深呼吸を一つすると、愛する人の待つ場所へと、確かな足取りで歩き始めた。私の本当の幸せは、ここにあるのだから。
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