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しおりを挟む「それで、僕はいつ死ぬの?」
お茶を吹き出すところだった。
そうしたら毒液をこのひとにぶっかけることになる。
薄くとも、それもきっと毒。
ロベリアは、飲み込んだあとに問いかけられて良かったと――いや、彼はそのタイミングを、きちんと読んでくれていたのだ。
この、ヨアヒム王子は。
――わかっていたのだ。
しらを切るのは、もはや無理かとロベリアは察した。
いや、いつからと、まず疑問に思った。
それに――面と向かって訊くか? とも。
ロベリアが、何も言えずに言葉が迷子になっても仕方ないだろう。
「……い、いつから?」
「ん?」
結局、尋ねられたのはいつから自分が彼を殺すためにいると気がついたのだろうかという初めの疑問。
失敗だ。
せめて自分だけで。
あの優しいヒューリック家の皆が、酷い目に遭わないようにしなければ。
優しい父が。育ての親が。使用人の皆さんが。
――誰より優しいお姉さまが。
「いつから?」
尋ねられたヨアヒムは「ふむ」と顎に指を置いて少し悩んだ。
「初めは入学式かなぁ? すごく、可愛い子がいるなぁ。白い髪て珍しいなぁて思ったら、幼い頃の病気が原因でそうなっちゃったて。聞いたら今は、もう病気は大丈夫かなって心配になって? 今、もう大丈夫だから学園にも入学しているのでしょうてハーゲンに言われてほっとして。でも本当に大丈夫? しんどくなったらいつでも言ってね? 横になれるようにするから。あ、膝枕する?」
まって。
「あ、あの……」
「ん? あ、膝枕いや? 抱っこする?」
そうではない。
「添い寝してもいい? あ、腕枕する?」
そうではない。
繰り返すがそうではない。
ここは王宮の花園にある東屋。
婚約者の二人きりの時間を邪魔してはならないと、使用人たちも離れている。
ハーゲンとはヨアヒムの護衛兼ねた側近だが、彼も今は離れている。ちなみに幼馴染みでもある。
彼らは離れていても警戒をしている。
それは主に侵入者や――暗殺者を。
よもやここに。
その暗殺者がいるとは思いもしないで。
ただただ、婚約者たちを二人きりに。素敵な時間を過ごさせてあげようと気を遣うばかりの彼ら。
花園も今を見頃の。気候も今日ならば外も良かろうと。身体の弱かったロベリアが寒がればすぐに膝掛けが、肩掛けが。いっそ代わりに室内も用意されているだろう。
どうする?
今、ここで――そう、茶菓子を食べるためのナイフやフォークがある。それを……――。
――止めた。
そんなことをしたら、ロベリアが暗殺者だとバレてしまう。
ヒューリック家に、咎が及んでしまう。
自分の役目はあくまでも――。
ヨアヒムの様子は、ロベリアが暗殺者であると明らかにして騒ぎにすることではないようだから。
「いつから……」
「うん、だから、一目惚れ……かなぁ?」
「……うん?」
先程から、会話が噛み合わないような気が、する。うん、とてつもなく噛み合っていない。
ロベリアが首を傾げれば、ヨアヒムは目を細めて微笑んだ。
「うん、君のことが好きだよ、ロベリア」
「好き? あの……?」
「その紫がかった青い瞳も好きだし、白い髪も好きだなぁ。あ、でも元の髪色はなんだったのかな? たぶんそっちも好きになると思うよ、僕」
「髪、は……」
彼は毒による発熱など、副作用で白くなってしまったことまで知っているのか。それは病によりと、周りには言ってあるのに。
本当のロベリアの髪色は父と姉と同じ、薄茶色だったらしい。世界で一番優しい色だと、ロベリアは思っていた。
彼らと一緒であれば、なんと嬉しかったことだろうかと……。
「でも、外見だけじゃないよ。話してみて、君のお姉さん思いなところとか、意外と正義感が強いところとか……ここまで、生きてきた強さとか。ちゃんと、好きになったから」
――だから、いつかな?
「君が、僕を殺してくれるんだよね?」
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