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七本槍
亀山城攻防戦
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安治は、忠三郎から託された三百騎を率いて、山岡の配下が守る出丸の前に陣取った。敵方もこちらの動きを察知したようで、数十名の兵士が弓に矢をつがえこちらを狙っていた。
「覚兵衛、このまま指をくわえているわけにもいかぬ。わしが五十人ほどを引き連れ、前に出る。お主は、後ろから援護してくれ。」
「かしこまりました。ですが殿、くれぐれもご油断召されるな。奴ら鉄砲も使ってくるやも知れませぬ。」
「深入りはせぬ。じゃが、奴らの手の内が分からねば攻めようがないからのう。」
安治は、身の危険を顧みず、五十人を引き連れ、櫓に向かって疾走した。安治たちの頭上を矢が飛んでいく。安治たちが駆けてゆくのを見届けた覚兵衛が、弓で援護しているのだ。櫓の兵士どもは打ってでるようなことはせず、櫓から礫のようなものを投げつけてきた。
「とまれ!とまれ!!」
安治は、大声を張り上げ、兵士たちを押しとどめた。敵方が投げつけた礫が安治の十間先に落ちたかと思うと、火縄銃でも撃ったかのような音が鳴り響き、黒いものがあたりに散らばった。
これか…。忠三郎が亀山城を攻めあぐねている理屈が、安治にも分かった。敵は、火器を使ってくるのだ。飛び散った黒いものは、まきびしであろう。このまま闇雲に突っ込んでも勝算は無い。安治は、一旦自陣に戻ることとした。
「覚兵衛、見えたか?奴ら、焙烙玉のようなものを投げつけてきおった。」
「よくぞ、踏みとどまれましたな。ですが、殿、これは好機ですぞ。」
覚兵衛は、事態を悲観するどころか、むしろ安治を励ました。それが気休めでないことは安治自身、よくわかっていた。
「覚兵衛よ、わしもお主と同じことを考えておった。用意はできているか?」
「抜かりはございませぬ。」
覚兵衛が伝令に指図すると、どこからともなく陣後方から小荷駄部隊が現れた。荷駄には竹筒がずらっと並んでいた。竹筒からは紐が出ていた。
「覚兵衛、部隊の頭どもを呼んできてくれ。わしから、申し渡す。」
「承知仕りました。」
言うなり、覚兵衛は駆け出していった。しばらくして、部隊の頭を引き連れて覚兵衛が戻ってきた。
「皆の衆、よいか。その出丸を守っている者どもは、忍びの者たちじゃ。火器を使ってくる故、容易には近づけぬ。」
安治がそう言うと、頭たちに緊張が走った。
「案ずるな。何も突っ込んで行けとは言わぬ。そこの荷駄に竹筒が並んでいるのが見えよう。あれには、火薬が詰まっておる。あの竹筒を矢に括り付け、紐に火を付けて、敵の出丸目掛けて放つのじゃ。奴らも火薬を使っておる。奴らの火薬に火がつけば、我らの勝ちじゃ。」
安治の言わんとしたことを呑み込んだ頭たちは、おおっと力強く応じた。
「各自、そこの荷駄を一台ずつ運び、弓兵に竹筒を配れ。支度が終わったら、弓兵は出丸から二百間離れたところに一列に並べ」
安治が命を下すと、部隊の頭どもは荷駄を引っ張り、持ち場に戻っていった。
しばらくすると、続々と弓兵が集まってきた。安治が言ったとおり、出丸に向かって横一列に並んでいる。
「弓兵の支度が整いました。」
覚兵衛が知らせにきた。丁度、出丸に向かって追い風も吹いている。
「皆の者、火を付けよ!」
安治は叫んだ。弓兵は、竹筒の先の紐に火を付け、満月のごとく弓を引いた。弓の死なる音が安治にも聞こえた。
「放て!」
安治の声と同時に、百を超える矢が一斉に放たれた。大きな弧を描いて出丸に向かっていく矢が、虚空で火の玉に変わる。
「今ぞ!者ども続け!」
安治は大音声とともに、槍を握りしめ駆け出した。
「殿を討たせてはならぬ!続け、続け!」
覚兵衛も叫びながら安治の後を追い、さらに足軽勢百ばかりが安治に続いた。火矢に怯んだ敵方は反撃を試みることもなく、右往左往していた。火矢の何本かが出丸の木戸に当たった。乾いた木戸はすぐに燃え上がり、出丸の中にも火が入った。轟音とともに瓦屋根がはじけ飛んだ。
「よし、火器を燃やし切ったぞ!我らの勝利疑い無しじゃ!かかれ、かかれ!」
焼け落ちた出丸に安治たちがなだれ込む。火器を失った敵方には、もはや反撃の手立ては残っておらず、敵方は散り散りに本丸に向かって逃げ始めた。
「覚兵衛、急ぎ蒲生様に伝えよ。山岡方が守る出丸を落とした故、狼煙を合図に総攻撃をかけてくれと。」
「委細承知!」
覚兵衛は、近習を引き連れ、忠三郎の本陣に向かった。
しばらくして覚兵衛が戻ってきた。
「殿、蒲生様、大層なお喜びでございました。総攻撃の準備は整っているとの仰せでございます。」
「ご苦労であった。これで亀山は落とせる。とはいえ、まだ亀山を落としたに過ぎぬ。勝負はこれからよ。」
安治は己に言い聞かせるように、覚兵衛に話しかけた。覚兵衛も深く頷いた。
「よし、狼煙を上げよ!」
安治は、近習に命じた。晴れ渡った空に白煙が登っていく。程なくして、轟くような音が聞こえてきた。忠三郎が、全軍を率いてきたのだ。本丸攻撃部隊として三千騎ほどが、安治が落とした出丸抜けて本丸に突き進んでいく。その他の兵士は、亀山城を十重二十重に取り囲んだ。安治は、本丸に向かった忠三郎の部隊には合流せず、そのまま包囲軍に加わり、亀山城の包囲を厚くすることに専念することにした。
「覚兵衛、このまま指をくわえているわけにもいかぬ。わしが五十人ほどを引き連れ、前に出る。お主は、後ろから援護してくれ。」
「かしこまりました。ですが殿、くれぐれもご油断召されるな。奴ら鉄砲も使ってくるやも知れませぬ。」
「深入りはせぬ。じゃが、奴らの手の内が分からねば攻めようがないからのう。」
安治は、身の危険を顧みず、五十人を引き連れ、櫓に向かって疾走した。安治たちの頭上を矢が飛んでいく。安治たちが駆けてゆくのを見届けた覚兵衛が、弓で援護しているのだ。櫓の兵士どもは打ってでるようなことはせず、櫓から礫のようなものを投げつけてきた。
「とまれ!とまれ!!」
安治は、大声を張り上げ、兵士たちを押しとどめた。敵方が投げつけた礫が安治の十間先に落ちたかと思うと、火縄銃でも撃ったかのような音が鳴り響き、黒いものがあたりに散らばった。
これか…。忠三郎が亀山城を攻めあぐねている理屈が、安治にも分かった。敵は、火器を使ってくるのだ。飛び散った黒いものは、まきびしであろう。このまま闇雲に突っ込んでも勝算は無い。安治は、一旦自陣に戻ることとした。
「覚兵衛、見えたか?奴ら、焙烙玉のようなものを投げつけてきおった。」
「よくぞ、踏みとどまれましたな。ですが、殿、これは好機ですぞ。」
覚兵衛は、事態を悲観するどころか、むしろ安治を励ました。それが気休めでないことは安治自身、よくわかっていた。
「覚兵衛よ、わしもお主と同じことを考えておった。用意はできているか?」
「抜かりはございませぬ。」
覚兵衛が伝令に指図すると、どこからともなく陣後方から小荷駄部隊が現れた。荷駄には竹筒がずらっと並んでいた。竹筒からは紐が出ていた。
「覚兵衛、部隊の頭どもを呼んできてくれ。わしから、申し渡す。」
「承知仕りました。」
言うなり、覚兵衛は駆け出していった。しばらくして、部隊の頭を引き連れて覚兵衛が戻ってきた。
「皆の衆、よいか。その出丸を守っている者どもは、忍びの者たちじゃ。火器を使ってくる故、容易には近づけぬ。」
安治がそう言うと、頭たちに緊張が走った。
「案ずるな。何も突っ込んで行けとは言わぬ。そこの荷駄に竹筒が並んでいるのが見えよう。あれには、火薬が詰まっておる。あの竹筒を矢に括り付け、紐に火を付けて、敵の出丸目掛けて放つのじゃ。奴らも火薬を使っておる。奴らの火薬に火がつけば、我らの勝ちじゃ。」
安治の言わんとしたことを呑み込んだ頭たちは、おおっと力強く応じた。
「各自、そこの荷駄を一台ずつ運び、弓兵に竹筒を配れ。支度が終わったら、弓兵は出丸から二百間離れたところに一列に並べ」
安治が命を下すと、部隊の頭どもは荷駄を引っ張り、持ち場に戻っていった。
しばらくすると、続々と弓兵が集まってきた。安治が言ったとおり、出丸に向かって横一列に並んでいる。
「弓兵の支度が整いました。」
覚兵衛が知らせにきた。丁度、出丸に向かって追い風も吹いている。
「皆の者、火を付けよ!」
安治は叫んだ。弓兵は、竹筒の先の紐に火を付け、満月のごとく弓を引いた。弓の死なる音が安治にも聞こえた。
「放て!」
安治の声と同時に、百を超える矢が一斉に放たれた。大きな弧を描いて出丸に向かっていく矢が、虚空で火の玉に変わる。
「今ぞ!者ども続け!」
安治は大音声とともに、槍を握りしめ駆け出した。
「殿を討たせてはならぬ!続け、続け!」
覚兵衛も叫びながら安治の後を追い、さらに足軽勢百ばかりが安治に続いた。火矢に怯んだ敵方は反撃を試みることもなく、右往左往していた。火矢の何本かが出丸の木戸に当たった。乾いた木戸はすぐに燃え上がり、出丸の中にも火が入った。轟音とともに瓦屋根がはじけ飛んだ。
「よし、火器を燃やし切ったぞ!我らの勝利疑い無しじゃ!かかれ、かかれ!」
焼け落ちた出丸に安治たちがなだれ込む。火器を失った敵方には、もはや反撃の手立ては残っておらず、敵方は散り散りに本丸に向かって逃げ始めた。
「覚兵衛、急ぎ蒲生様に伝えよ。山岡方が守る出丸を落とした故、狼煙を合図に総攻撃をかけてくれと。」
「委細承知!」
覚兵衛は、近習を引き連れ、忠三郎の本陣に向かった。
しばらくして覚兵衛が戻ってきた。
「殿、蒲生様、大層なお喜びでございました。総攻撃の準備は整っているとの仰せでございます。」
「ご苦労であった。これで亀山は落とせる。とはいえ、まだ亀山を落としたに過ぎぬ。勝負はこれからよ。」
安治は己に言い聞かせるように、覚兵衛に話しかけた。覚兵衛も深く頷いた。
「よし、狼煙を上げよ!」
安治は、近習に命じた。晴れ渡った空に白煙が登っていく。程なくして、轟くような音が聞こえてきた。忠三郎が、全軍を率いてきたのだ。本丸攻撃部隊として三千騎ほどが、安治が落とした出丸抜けて本丸に突き進んでいく。その他の兵士は、亀山城を十重二十重に取り囲んだ。安治は、本丸に向かった忠三郎の部隊には合流せず、そのまま包囲軍に加わり、亀山城の包囲を厚くすることに専念することにした。
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