あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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ベスが下がったあと、アリアナは初夜を一人でゆっくりと迎えた。本来なら悲しいはずだが、今となっては同室で二人きりなど避けたいアリアナにとってはありがたいことだった。

ベスが部屋にやってきて数分のちにクレメントも寝室に来た。妙に機嫌がいいのはおそらく恋人と一夜を過ごしたためだろう。この後、ベスを紹介してもらえるのもあるかもしれないが。

「おはようございます、クレメント様。昨夜はお帰りになるまでお待ちしようと思っていたのですが…疲れに耐えきれず、眠ってしまっていたようです。申し訳ございません」

しおらしく頭を下げたアリアナを、見下ろす形でクレメントは微笑んだ。

「いや、私も昨日は用があってね。遅くまで帰れなかったからちょうど良かったよ。」

新婚初夜に用事、と言う単語が馬鹿らしすぎてアリアナは笑いそうになるのを必死で堪えた。

「そうでしたか。ところで昨日お伝えしておりましたとおり、私の侍女を紹介させていただきます。ベスです。」

ぺこりとベスが頭を下げるとクレメントは嬉しそうに微笑んだ。

「以前使いで来た時も思ったが…本当に主従揃って美人だな。ベス、これからよろしく頼むよ」
「はい。クレメント様。どうぞよろしくお願いいたします」

慇懃に頭を下げたベスの様子を満足気に眺めているクレメントを見ながらアリアナは、もう一つの話を始めることにした。

「あの、クレメント様。早速で申し訳ないのですが…現在のハンゼ公爵の領地運営などに関する書類を一式見せていただけませんか」

アリアナが口にした瞬間、クレメントは露骨に嫌そうな顔をした。自分の代で赤字を膨らませている以上、経営能力がないことを純然と示すそれらの書類を見せることは彼のプライドをいたく傷つけているようだ。しかし、ゾーイ家から多額の援助を期待するには見せるしかないと思ったのか、渋々頷いた。

「あ、ああ。昼頃には持って来させるよ」
「わかりました。年間の収入の確認、領地の経営改善項目と公爵家の年間の支出項目の洗い出しを行った上で、具体的な方針を決めていきたいと思います」

アリアナがハキハキと告げると、苦虫を噛み潰したような顔をしながらクレメントがぼやいた。

「あなたがやるのか。けっこうなことだ。私はどうも数字に疎くてだめだな」
「ええ、そうですね。私は数字に強いと思いますので、お任せください」

後半、否定してもらえると信じて卑下したクレメントは、さらりと肯定されたことに戸惑いながらアリアナを見つめた。



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