暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第17話 悔恨

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「グハァッ」

「ふんっ」

 首元を一閃。私は短剣で謎の男に致命傷を与える。

「グァッ……、なかなかやりますネ……。これは致命傷、致命傷ダ……。アァァ、なんと素晴ラシイ……!」

 謎の男は自分の首元をいじくっては血を舐めている。

「負けを認めたって事でいいんだよね? 私はそろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。なにか言い残すなら今のうちだよ」

「アァァ、なんと寛大ナ……! それでは1つ、重要な情報をお伝えしたいと思いマス……!」

「何?」

 この状況下でもなおこの余裕を持っている謎の男に、私は焦燥を覚えた。
 何?この余裕そうな表情は……?

「私の魔法で燃えた物は、対象が燃え尽きるか、私が死ぬまで・・・・・・消えることはありませン!!」

「は? 何を言って──」

 !!!

 今すぐ、私の本能がコイツを殺せと言っている……!!

 まずい、何か嫌な予感が……!!

「サヨウナラ、ルミツ様。そしてシルフ、サラマンダー」

「!!」

 謎の男の足元に、影のような何かが広がった。
 そして黒い泥のようなものが噴出し、謎の男を包み込んだ。

「待て!!」


 蝶華心得『ほむら朱雀飛斬すざくひざん


 私が走れる最速の技だから……! どうか間に合え! 首を断ち切れ……! 間に合え!!!!

 間に合え……!!

「間に合……」

 そんな思いも瞬く間に消えた。
 私の剣は空を切り、虚しい空振りの音が響いた。

「あ……、ああぁぁぁ……」

 やってしまった。

 逃がした。逃がしてしまった。






『酷い火傷……!』

『あいつの魔法は対象を燃やし尽くすまで消えない……!』

『私の魔法は1度触れさせルだけで死が確定しますからネ』






「あぁぁぁぁあぁああ……」

 後悔の念に押し潰される。嫌だ嫌だ、そんなこと絶対。
 ……でも、もう遅いのか。

「ごめん……シルフ……サラマンダー……」

 私は、私は……!!

「私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 逃がしてしまった。取り逃してしまった。消えない炎は2人を、村の人を焼き殺すまで燃やし続ける。
 私は救えなかった。延々と付き纏う炎から。

「ごめん、ごめんね……」

「待って、ルミツ」

「……?」

 声のする方を向くと、そこにはシルフが浮かんでいた。
 浮遊する姿は弱々しく、大きな火傷があちこちと散在している。

「ごめんね、シルフ……! 私、私……!!」

「見てよ、ルミツ」

 シルフを見る。痛々しい火傷を負っている。

 ……だがしかし、シルフに炎は見当たらなかった。

「シルフ……! どうして……!」

「助けてくれたんだ。とある人に」

「とある人……?」

「ついてきて」

 こんな炎を消せる人間がいるなんて、信じられない。

 ……いや、1人だけ、思いつく人物がいた。

 そして私はシルフに連れられてある場所に着く。

「ここは、私たちが泊まってた宿屋……」

 見るも無残な姿にはなっておらず、鎮火されて形を保っていた。

「正直私もビックリしたよ。あれは神秘だね」

 そして私たちは宿屋に入る。
 中には怪我人が多く運ばれており、家や血の焼ける匂いで鼻が曲がりそうだった。
 だが、どの人もあの纏わりつく炎は全て鎮火されていた。

「これは……」

「傷一つなく討伐とは、お見事です」

「き、君は……!」

「はい。聖女セイントスクエアです」





































「くっ、助かりましタ」

 謎の男が逃げた先、そこには屈強な大男に、小柄な女の子が佇んでいた。
 大男が話しかけてくる。

「なぁに、やられちゃってたの~?」

「フフ、ちょっと下手をとりましテネ」

「ふぅ~ん、ま、この子に1本とるなんて、そのルミツちゃんって子もなかなか見どころがあるじゃな~い」

 そういって大男は腕を回す。鍛え抜かれた上腕二頭筋を撫で下ろし、自分の筋肉に見惚れる。

「あんまいい事じゃない。1番雑魚だとしてもコイツは幹部なんだから」

「あら、確かにそうね。我ら八鬼魔眼はっきまがんの名前に泥を塗っちゃったわけだもんねぇ」

「私の転移魔法が無かったらそれこそコイツ死んでた」

「ハハ、感謝致しまス、リラティーナ」

「やれやれ、仕方ない子ね。ゼグラちゃんは」

「いや、2人も気をつけた方がイイデスヨ」

「はぁ? あんたみたいな雑魚と違ってこの私が殺られる訳が……」

「私、魔法無しでやられてしまいましてネ」

「……!」

「フフフ、いいわよ、面白いじゃな~い!!」

 大男は両手を大きく広げ、頬が紅潮する。

「このメリッサがそのルミツちゃんってのを、なぶり殺してあげるわ♡」

「フゥ、恐ろしいですネ」

「それじゃあ、いきましょうか」

「エエ」

「うん」

「「「我ら悔恨の瞳──すべてはあのお方のために」」」
































「聖女セイントスクエア……! なんでここに……!」

「ゆう……、リア様が嫌な予感がするとおっしゃってヒューナ村に戻るよう命じられたのです。驚きましたよ。私たちが着いた時、村全体は燃え盛り、中央広場では交戦があり、火のついた人々の炎は消えなかったんですから」

「そうだ、炎……! どうしてこの宿屋とこの人たちは無事で……!?」

「それは僕の剣のお陰かな」

「……!」

 声のする方を向くと、そこには銀髪の男が立っていた。

「久しぶり……いや、さっきぶりかな。ルミツちゃん」

「リア……!」

「ルミツ、この剣の力と聖女様の力を合わせて炎を消すことが出来たんだ」

「……ホントに?」

「あぁ、本当だ」

「あ、あぁぁ……、よかった、よかったぁぁぁ……。皆、無事で……、よかったぁぁぁ……!!」

 私は安堵により、涙を零した。
 それ同時に緊張の糸が切れ、眠りについた。
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