暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第20話 神社と夜

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 心地よいベッド。まさかの部屋は1つしかなく、私たちは同じ部屋で寝ることになった。

 ……眠れない。

 そりゃそうだ。横にリアが居るんだ。

 そもそも何でこんなに私……。
 今までこんな動悸感じたことない。感情なのか……?

 よくわかんない。よくわかんないよ……。

「眠れない?」

「ひゃっ……! あっ、うん」

「何もそんなビックリしなくても」

「うぅ、ごめん……」

「大丈夫だよ。それより、眠れないならちょっと外に行かないか?」

「外?」

「そう、僕のお気に入りの場所だ。さっき燃えていないところをちらっと見たんだ。付き合ってくれるかい?」

「うん」

 そして私たちは外に出る。

 妙に生暖かい風が月夜の景色に似合わない。

 そうして家を出てしばらく歩くと、そこには不思議なものがあった。

「……ここ、神社?」

「あぁ、よく知ってるね」

「そりゃそうだよ」

 鮮明に赤く塗られた鳥居。妖艶な気配の漂う空間が、私の肌をピリピリと警戒させる。

「この世界は聖教会せいきょうかいのクリア教こそ事実、神の真実ほんとうはクリア教に在るとされている。あまり大声では言えないけど、僕はクリア教よりもこの神社の方が好きなんだ」

「ふーん」

「……クリア教は知らないのに神社は知ってるのか。ルミツは変わってるな」

「いやぁ……、まぁ事情があるんですよ」

 神社、鳥居? なんでこっちの世界にもこれらがあるんだ……?
 そもそもクリア教が主たる教えとなってるのはなぜ?
 神という存在はそもそもあるのか?

「入ろうか」

「いいのかな」

「大丈夫だよ、僕は昔からここで遊んでたからね」

「ふーん、じゃあ……」

 私は前世のマナーの通り、道の真ん中を避けて神社に入ろうとする。

「そうそう、そうやって道の中央は歩かないようにするんだ。神様の通り道だからね」

「ふーん」

 やっぱり文化も前世と同じだ。全く同じもの……。前世にクリア教は無かったのに?

 そうして私は鳥居内に1歩足を踏み出す。


「──!!」


 魔力が無い……!? 本来辺りに充満しているはずの魔力が……!?

「リア……!」

「?」

「魔力が無い……! どうして……!?」

「知らなかったのかい? 神社の内には魔力が充満しないんだよ。なぜだかは分かってないけど。何か魔法陣がある訳じゃないらしいんだけど」

「……」

 魔力を弾いている……いや、受け付けていない……? よくわかんないけど、とにかく境内に魔力が存在していない……。

「なんでだろう……」

「これは僕が生まれた時からそうだったんだ。それよりほら、綺麗だよ」


 神社の社殿の上に輝く月。妖艶な雰囲気を醸し出していたが、不思議と心地は良かった。


「……綺麗」

「クリア教の教会には神が在るとされている。かつてはいくつもの宗教があったけれど、クリア派の教団員には一人、とてつもなく強い戦士がいた。その人物が別の宗教派閥を皆殺しにしたそうだ」

「へぇ」

「……その反応だと、このおとぎ話も知らないのかい?」

「……うん」

「全く、常識は無いのに神社とか魔法とか、特殊なことばかり知ってるよな、ルミツって」

「あはは……」

 転生者だしそりゃそうだ。ここで転生者とわざわざ情報を漏らす必要も無いだろうから黙っておくけど。

「それじゃあ、これを知らないんだね」

「?」

「そのクリア派の戦士というのが、初代勇者なんだ」

「……へぇ」

 勇者の誕生はクリア教に関係があるって事なのかな……? なぜクリア教側に? そもそもクリア教がよく分かってないから、いくら考えても仕方ない訳だけど。

「初代勇者は圧倒的な力を持っていたらしい。魔法を使わずに魔王を討伐するに至るほどだ」

「ふーん、凄いんだね。初代勇者って」

「あぁ。だからどんな魔法を使うのか未だに解明されていないんだ。歴代の勇者の使う魔法は様々だし、初代勇者に関する記録がほとんど見つからないから、特定は未だに出来てないんだ」

 初代勇者がどんな魔法を使っていたのかは正直かなり興味がある。適性属性以外の魔法もほんの少しなら使えると聞くし、もし珍しい魔法だと判明したなら是非研究してみたい。

「まあ、それだけだ」

 こうして私たちは夜の神社で美しい眺めを嗜める。

 リアってなんだかよくわからない。他人に優しくするくせに、妙に飄々ひょうひょうとしている。

 出会ってまだ1日だけど、私、リアに惹かれてるのかなぁ……。そういう経験自体無いから、よくわからないな。
 前世では暗殺の手段として色恋仕掛けはしたものの、本当の恋など到底したことがない。

 火事の影響によって夜なのに生暖かい風が顔を掠める。私の火照った頬は温度が下げられることなく、とても熱かった。

「ねぇ、ルミツ」

「……ん?」

「模擬戦をしないか」

「……え」

 ……え?

「ルミツの気配は強者のそれだ。上手く隠しているけど、それが上手すぎて逆にわかっちゃったんだ」

「あはは……。私はまぁねぇ……」

 元暗殺者とも言えず、私は口を濁す。

「大丈夫だ、僕は勇者だから。退屈はさせない」

「退屈とかそういう問題じゃ……ん?」

 あれ? ……勇者?

「ん?」

「えええええええええええええええええ!?!」
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