暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第21話 勇者との模擬戦

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「リア……、勇者って……」

「あぁ、隠しててごめんな」

「いや、全然隠せて無かったけど」

「……あれ?」

「聖女様連れてる時点でなんとなく察してたよ。リアが勇者っていうのは」

「えっ……!? じゃあ今の反応は何なんだよ……!?」

「いや、普通に勇者って公言しちゃって良いのかなって」

「あぁ、そういう……」

 勇者というのは世界を救うための機密事項と言ってもいいだろう。魔王を倒すために強大な力を持つ者。だからこそ様々な思考の人間や組織に命を狙われる可能性だって高いだろう。
 奴らの目的こそ分からないが、悔恨の瞳がその力を利用する目的で襲いかかったとしても何ら不思議ではない。
 そんな重大な話なのに、何故私なんかに……?

「ふふっ、その目はどうして僕が君に勇者であると告げたか疑問に思ってる目だね?」

「そりゃそうでしょ、そんな事無闇に話すべきじゃないのはリアも分かってるはずなのに」

「ああ、確かに分かってる。でも、ルミツなら良いかなって思ったんだ」

「……私なら?」

「あぁ。僕はこう見えて人を見る目があるからね。ルミツなら、信用に至ると思ったのさ」

「……そっか」

 信用……か。前世では信用されるために上辺の皮を取り繕う人間ばかりであった。暗殺者である私も同じようなものだ。
 そんな私が信用……か。ちょっと心地いいかもな。

「それで模擬戦の話、受けてくれるか?」

「もちろんいいよ」

 こうして私はリアと模擬戦をすることになった。

「場所はどうするの?」

「この神社内にしよう」

「ここ? なんか罰当たりじゃない?」

「大丈夫さ。それじゃあ今からスタートね」

「……え?」

 リアは剣をかかげ、私との距離を詰める。


「待って、私武器置いてきちゃっ──」


 そんなのお構いなしかのように私に剣を振り下ろしてくる。

 私はその剣の側面を拳で叩き、急ぎ距離を取る。


「ちょっと、危ないなぁ」

「流石だね。この程度のスピードならついてこられるか」

「はぁ、仕方ないなぁ……」

 私は地面にある小石を拾い、懐に入れる。

「いいよ、かかってきな? これでも体術は得意でさ」

「ふっ、嬉しいよルミツ」

 そうして切りかかってくるリア。
 剣は側面からの衝撃に極端に弱い。従って弾く時は剣の横側を叩けばいい。

「なかなかやるね……!」

「そりゃあどうも」

 意図的に速度を落としていたリアの剣は、ますますスピードを上げる。
 回避、弾き、と防戦を繰り返して私は隙を窺う。

「んっ……!」

「……! ここだっ!」


 リアの突き技。私の隙を見つけたのだと思ったのだろう。


「残念、それはトラップだよ」

「……!?」

 私は体を反らし、突き技を躱す。
 地面に手を付き、慣性のままバク転をする。
 その最中、私は脚をクロスさせてリアの剣を遠くへ飛ばす。

 そう、あの謎の男にやられた武器の絡め取りだ。

 カキィン!!

「なっ!?」

「驚いた? これでリアも丸腰だ。丸腰同士なら私が勝つって、リアならわかるよね?」

「くっ、確かにそうだな……。だけど、僕はまだ降参はしないよ」

 リアは武器に対して全力で走り出す。武器無しではどう足掻いても私には勝てないが、足の速さでならまだ勝ち目があると判断したのだろう。
 賢明な判断ではあるが、愚直すぎるな。

 私は懐の石をリアに向かって思いっきり投げつける。

「──!!」

「ちょっと痛いけど我慢してね」

 スパァン!
 恐らく銃弾程の初速はあるだろう。リアの後頭部に石が直撃し、リアは姿勢を大きく崩す。
 この衝撃で貫通も吹っ飛びもしないのは流石だ。

「ぐっ……!」

 その隙を見逃さず、私はリアに駆け寄る。

「まだだ……!」

 リアは足元の小石を私に投げつける。
 流石の筋力、私よりも速い初速はありそうだ。

 私は正面からそれを手のひらで受け、勢いを殺すように体を回転させる。

 ……思ったより勢いが強い。
 リアに投げ返すのは難しいな……。

 そう思い私は地面に小石を投げつける。

「くっ……!」

「武器を拾う隙はできちゃったか。まぁ仕方ない」

 私は更に石を拾い、懐やポケットなどに仕込む。

「いいよ、来な?」

「……」

 リアは無言で見つめてくる。隙を窺っているのだろう。
 凛々しく真面目ないい顔だ。精霊の皆もそりゃ気に入るか。

「なら、本気で行かせてもらうよ」


 魔雲魔法まうんまほうディム


「……!」

 来たっ、彼の本気が……!

 辺りに薄い煙のようなものが広がる。

「どう? ちょっとだけ僕のこと、認知しにくくなったんじゃない?」

「……たしかにそうだね」

 リアだけじゃない。地面の玉砂利、生えている木々、そして自分の身体の位置すらも、僅かに認知しにくい。

「……勇者とは思えない魔法だろ?」

 あたりの景色のせいではないだろう。リアの瞳が曇り、僅かに凛々しい顔に虚しさのようなものが浮かんだ。

「そんな事ないよ。これもまたリアの1つ、すごい綺麗だと思うよ」

「──そっか」

 私の言葉でわずかに安堵したのだろう。リアの肩の力が抜けていった。

「急にごめんな、ルミツ。模擬戦はここまでにしよう」

「え? もういいの?」

「ああ。言って欲しい言葉を言ってくれる人に刃を向けられなくなってしまったからね」

 リアは刀を鞘に収める。
 そうして私たちは模擬戦を終えるのであった。
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