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253話 返信(3)
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『交渉』の詳細を聞いた俺とセドリックは驚きを隠せなかった。ルーイ先生……相変わらず我々の予想を良い意味で裏切ってくれるな。確かにこれならば、カレンとノアはこちらの要求を受け入れる他ない。
「本当に……先生は私たちを驚かせることに対して天才的でいらっしゃる」
「褒め言葉として受け取っておくよ、セディ。レオンの方はどうかな。俺の作戦に異存はある?」
異存は無い……が、少し時間が必要だな。交渉を確実に成功させるために、こちらもしっかりと準備をしておかなければならない。
「いいえ。とても良い案だと思います。さすが先生ですね」
称賛の言葉を送ると、先生は嬉しそうに笑った。掴みどころが無く、飄々としたような印象を与える先生だけど、喜びは素直に表現してくれる。神が人間に褒められて喜ぶというのも不思議な感じだが、これも先生の対人能力の高さゆえか。
本人がどこまで計算して行っているかは分からないけど、とにかく先生は人の心を掴むのが上手い。容姿の良さも相乗効果を生み出しており、ほぼ無敵状態だ。ニュアージュの二人組相手にも上手く対応してくれることだろう。
そうなると……不安要素は先生ではなく、俺たち補佐する側の人間ということになる。先生から演技力が必須とは聞いていたけど、その通りであった。ほんの僅かでも不自然な態度を取ろうものなら、簡単にこちらの意図に気付かれてしまうだろう。
「内容に関しても問題ないと思いますが、実行に移す前に父に報告しなければなりません。ジェイクたち一番隊の捜査状況も把握しておきたいですし、2日ほど準備期間を設けてもよろしいでしょうか?」
「そうだね。今すぐやろうといっても難しいだろう。実施するタイミングはお前たちに任せるよ」
「ありがとうございます。先生はそれまで体を十分に休ませておいて下さい。何かありましたらすぐにお知らせ致します」
「はい、はい。横になってさえいれば平気だからね。てか、俺も一番隊の隊長さんの報告一緒に聞きたいんですけどダメ?」
「ダメということはありませんが……」
「だったらお願い。隊長のジェイクさんとも話してみたいからね」
ニコラ・イーストンについてはもちろんだが、先生はまだ会ってないジェイクのことも気になっているようだ。俺が後からジェイクの報告内容を伝えるより、直接聞いて貰った方が齟齬も発生しないだろう。先生が同席してくれることで、新たな発見を得られる可能性もある。断る理由はないか……
「分かりました。ジェイクが俺の元に帰ってきたら、そのように場を整えましょう」
「あの、レオン様……」
「なんだ、セドリック」
「おふたりの決定に意見するわけではないのですが、気掛かりな事があります。バルトは先生にどのような印象を持っているのでしょう。陛下から説明を受けたはずですので、不敬を働くことは無いにしろ……先生の正体に勘付かれやしないかといささか心配です」
セドリックはジェイクと先生が直接対面するのに不安を感じているのか。今のところ、先生について特に何か言われたという事は無いのだが……
「ジェイクから先生への言及は無かったぞ。あいつも他の者たちと同じような認識をしているんじゃないか?」
「ディセンシアの遠縁ってヤツね。あれもちゃんと調べたらバレそうなもんなんだけど、国王と王太子が味方してくれてるせいか以外と大丈夫なんだよね」
セドリックの心配をよそに先生はカラカラと笑っている。そんな呑気な態度を取る先生を見て、セドリックは眉間に皺を寄せている。
実際、父上の後ろ盾があるのは大きい。加えて先生があまりに堂々としているのもあって、彼の身分に関して疑いを持つ者は今のところ現れていないのだ。
「ジェイク隊長が信頼に値する人物なら正体を明かしても問題ないんだけど……セディ的にはその辺が心許ないのかな?」
「バルトがダメだという意味ではなく、秘密というものはそう易々と打ち明けるべきではありません。先生の身の安全を守るためにもです」
セドリックの言葉に熱が籠る。警護に直結する問題でもあるので仕方ない。間違ってはいないが……ここまで頑なであるのは私情も大いに混ざっていそうだな。
「先生……セドリックの気持ちもご理解下さい。それに、あなたは神です。この国で最も身分が高く、尊い存在なんです。繰り返しになりますが、ご自分をもっと大切にお願いしますよ」
「別に俺は自分を安売りしてるつもりはないんだけど……まあ、気を付けるよ」
バルトは慎重で疑り深い人間だ。でも、それを理由に接触を避けようものなら余計に不信を抱かせてしまうだろう。俺は先生ならジェイクとだって上手くやれると思っているが、セドリックを見ていると楽観的過ぎたのだろうか。
「セディ、俺お腹空いちゃったな。パンケーキ食べたい。クリームとフルーツがこれでもかって乗ったやつね」
「……さっきお茶受けのクッキーを食べたばかりじゃないですか。夕食の時間まで我慢して下さい」
「世界で一番格好良くて可愛いくて素敵な俺が食べたいって頼んでいるんだよ? レオンがさっき言ったよ。俺をもっと大切にしなきゃ」
俺の発言が先生に良いように解釈されてる。全く……俺たちの葛藤なんてどこ吹く風だな。先生のマイペース振りに、セドリックも脱力してしまった。覇気の無い声で『却下』と呟いた。
「本当に……先生は私たちを驚かせることに対して天才的でいらっしゃる」
「褒め言葉として受け取っておくよ、セディ。レオンの方はどうかな。俺の作戦に異存はある?」
異存は無い……が、少し時間が必要だな。交渉を確実に成功させるために、こちらもしっかりと準備をしておかなければならない。
「いいえ。とても良い案だと思います。さすが先生ですね」
称賛の言葉を送ると、先生は嬉しそうに笑った。掴みどころが無く、飄々としたような印象を与える先生だけど、喜びは素直に表現してくれる。神が人間に褒められて喜ぶというのも不思議な感じだが、これも先生の対人能力の高さゆえか。
本人がどこまで計算して行っているかは分からないけど、とにかく先生は人の心を掴むのが上手い。容姿の良さも相乗効果を生み出しており、ほぼ無敵状態だ。ニュアージュの二人組相手にも上手く対応してくれることだろう。
そうなると……不安要素は先生ではなく、俺たち補佐する側の人間ということになる。先生から演技力が必須とは聞いていたけど、その通りであった。ほんの僅かでも不自然な態度を取ろうものなら、簡単にこちらの意図に気付かれてしまうだろう。
「内容に関しても問題ないと思いますが、実行に移す前に父に報告しなければなりません。ジェイクたち一番隊の捜査状況も把握しておきたいですし、2日ほど準備期間を設けてもよろしいでしょうか?」
「そうだね。今すぐやろうといっても難しいだろう。実施するタイミングはお前たちに任せるよ」
「ありがとうございます。先生はそれまで体を十分に休ませておいて下さい。何かありましたらすぐにお知らせ致します」
「はい、はい。横になってさえいれば平気だからね。てか、俺も一番隊の隊長さんの報告一緒に聞きたいんですけどダメ?」
「ダメということはありませんが……」
「だったらお願い。隊長のジェイクさんとも話してみたいからね」
ニコラ・イーストンについてはもちろんだが、先生はまだ会ってないジェイクのことも気になっているようだ。俺が後からジェイクの報告内容を伝えるより、直接聞いて貰った方が齟齬も発生しないだろう。先生が同席してくれることで、新たな発見を得られる可能性もある。断る理由はないか……
「分かりました。ジェイクが俺の元に帰ってきたら、そのように場を整えましょう」
「あの、レオン様……」
「なんだ、セドリック」
「おふたりの決定に意見するわけではないのですが、気掛かりな事があります。バルトは先生にどのような印象を持っているのでしょう。陛下から説明を受けたはずですので、不敬を働くことは無いにしろ……先生の正体に勘付かれやしないかといささか心配です」
セドリックはジェイクと先生が直接対面するのに不安を感じているのか。今のところ、先生について特に何か言われたという事は無いのだが……
「ジェイクから先生への言及は無かったぞ。あいつも他の者たちと同じような認識をしているんじゃないか?」
「ディセンシアの遠縁ってヤツね。あれもちゃんと調べたらバレそうなもんなんだけど、国王と王太子が味方してくれてるせいか以外と大丈夫なんだよね」
セドリックの心配をよそに先生はカラカラと笑っている。そんな呑気な態度を取る先生を見て、セドリックは眉間に皺を寄せている。
実際、父上の後ろ盾があるのは大きい。加えて先生があまりに堂々としているのもあって、彼の身分に関して疑いを持つ者は今のところ現れていないのだ。
「ジェイク隊長が信頼に値する人物なら正体を明かしても問題ないんだけど……セディ的にはその辺が心許ないのかな?」
「バルトがダメだという意味ではなく、秘密というものはそう易々と打ち明けるべきではありません。先生の身の安全を守るためにもです」
セドリックの言葉に熱が籠る。警護に直結する問題でもあるので仕方ない。間違ってはいないが……ここまで頑なであるのは私情も大いに混ざっていそうだな。
「先生……セドリックの気持ちもご理解下さい。それに、あなたは神です。この国で最も身分が高く、尊い存在なんです。繰り返しになりますが、ご自分をもっと大切にお願いしますよ」
「別に俺は自分を安売りしてるつもりはないんだけど……まあ、気を付けるよ」
バルトは慎重で疑り深い人間だ。でも、それを理由に接触を避けようものなら余計に不信を抱かせてしまうだろう。俺は先生ならジェイクとだって上手くやれると思っているが、セドリックを見ていると楽観的過ぎたのだろうか。
「セディ、俺お腹空いちゃったな。パンケーキ食べたい。クリームとフルーツがこれでもかって乗ったやつね」
「……さっきお茶受けのクッキーを食べたばかりじゃないですか。夕食の時間まで我慢して下さい」
「世界で一番格好良くて可愛いくて素敵な俺が食べたいって頼んでいるんだよ? レオンがさっき言ったよ。俺をもっと大切にしなきゃ」
俺の発言が先生に良いように解釈されてる。全く……俺たちの葛藤なんてどこ吹く風だな。先生のマイペース振りに、セドリックも脱力してしまった。覇気の無い声で『却下』と呟いた。
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