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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第322話 メストとフェビル
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「メスト。ラピスから聞いているが昨日は休暇中にも関わらず、王都の一件を収めてくれたようだな。礼を言う」
ダリアの横暴から翌日。
出勤早々、団長専用の執務室に呼び出されたメストはフェビルが改めて礼を伝えられた。
ちなみに、まだ出勤していないラピスとシトリンには、第4部隊の執務室で待機しているよう指示している。
「いえ、あの場所には私の友人やラピスがいましたから、その手伝いをしたにすぎません。むしろ、友人とラピスの足を引っ張りました」
「ダリア嬢の魔法か?」
「……はい」
悔しそうに下唇を噛むメストに、フェビルは小さく溜息をつく。
「俺も話は聞いたが……あれは仕方ない。何せ、精神干渉系の闇魔法だ。どうやっても防ぎようがない」
「そう、ですね……」
(まぁ、あの場にいたフリージア嬢の無効化魔法ですら防げなかったということは、ダリア嬢は魅了魔法に関しては相当な使い手だということだな)
実は、ダリアとメストから少し離れていたばかりに、カミルがダリアの魅了魔法が防げなかったとこの時のフェビルは知る由もない。
フェビルの言葉を聞いて、メストが眉間に皺を深くすると、フェビルがカミルの話題に触れた。
「それよりも、メストがいう『あの場にいた友人』というのは……もしかして、例の平民のことか?」
「はい、彼は私の師匠であり友人ですから」
「そう言えば、そうだったな」
(ラピスから聞いた話だと、メストは1年前からフリージア嬢のところに定期的に通っているって言っていたな。本当、因果というかなんというか)
「団長、どうされました?」
「いや、何でもない。ともかく、昨日はすまなかったな。グレアにメストに代休を付与させるよう伝えておくから、昨日の埋め合わせだと思って使ってくれ」
「分かりました。ありがたく使わせていただきます」
(とは言っても、昨日の件でダリアとは更に疎遠になりそうだから、結局はカミルのところに行くしかないのだが)
フェビルから代休を与えられ、頭を下げたメストは内心苦笑した。
すると、フェビルが突然、不安げな目でメストを向ける。
「それと、ラピスから聞いた話なのだが……」
ゆっくりと頭を上げたメストに、組んでいた手を強く握ったフェビルが小さく息を吐いた。
「あの時、お前ダリア嬢が対峙したと聞いたのだが……その、本当なのか? 聞いた限りでは、『2年もまともにダリア嬢と会っていない』と」
「それは……」
『侯爵令息如きが、宰相家令嬢に対して口答えしないで!』
『あんな地味なドレス、着ていくのに恥ずかしかったです』
『あなた、いくら私の婚約者だからって調子乗り過ぎです』
王都で再会した後、婚約者から浴びせられた罵倒の数々が蘇り、口を閉ざすメスト。
そんな部下の顔を見て、フェビルは大きく溜息をついた。
「すまない。上司とはいえ、貴族同士の婚約に口を出すのはご法度だ。だが昨日、ラピスから聞いて、どうしてもお前の口から真相を聞きたかったんだ。気を悪くしたなら許して欲しい」
「いえ、ラピスから話を聞いたのでしたら、心配されるのも仕方ないかと」
「ということは、お前、本当にダリア嬢と対峙したのか?」
「えぇ、彼女は私のことに気づいていませんでしたが」
「ということは、宰相閣下に呼び出されることは……」
「恐らく無いかと」
メストがダリアの機嫌を損ねる度に、ノルベルトがメストを呼び出していたことは、第二騎士団から彼のことも見ていたフェビルは知っていた。
(王都に来てからそういう話を聞いていないが……まぁ、呼び出されないならそれでいい)
内心安堵していたフェビルに、小さく息を吐いたメストがフェビルに向かって深く頭を下げる。
「ご心配おかけして申し訳ありません。ですが、騎士団には迷惑をかけませんので」
「……あぁ、分かっている」
自分の婚約者のせいで迷惑をかけたと謝罪するメストに、フェビルは机に乗った拳を小さく握った。
(こいつに真実を言えたら、どれだけ良いのだろうか? 『本当の婚約者は、お前が『友人』と呼んでいるその人だ』と)
フェビルが僅かに下唇を噛むと、頭を上げたメストがふと何かを思い出した。
「ところで団長、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「あっ、あぁ、構わないぞ」
悔しさを誤魔化すようにぎこちない笑みを浮かべたフェビルに、メストが不思議そうに小首を傾げた。
「ラピスから聞いた話なのですが、あの場の後始末を他の騎士達に任せた後、団長はカミルを追いかけて行ったようですね?」
「あぁ、あれは、礼を言いたくて。ダリア嬢を止めてくれた礼を」
「そうでしたか。ですが、確かカミルは騎士のことを……」
コンコンコン
「フェビル団長、グレアです。そろそろ団長会議が始まります」
「おぉ、そうか。分かった、今すぐ行く」
「かしこまりました」
(危なかった。これ以上フリージア嬢のことを突っ込まれても困る!)
グレアからの呼び出しに、内心安堵したフェビルは、小さく咳払いをするとメストの方を見た。
「ということだ。メスト、朝から呼び出してすまなかったな。職務に戻ってくれ」
「ハッ!」
敬礼をして執務室を去ったメストの背中を見送り、深く溜息をついたフェビルは静かに両手で顔を覆った。
「すまんな、メスト」
(今はまだ、言えないんだ)
ダリアの横暴から翌日。
出勤早々、団長専用の執務室に呼び出されたメストはフェビルが改めて礼を伝えられた。
ちなみに、まだ出勤していないラピスとシトリンには、第4部隊の執務室で待機しているよう指示している。
「いえ、あの場所には私の友人やラピスがいましたから、その手伝いをしたにすぎません。むしろ、友人とラピスの足を引っ張りました」
「ダリア嬢の魔法か?」
「……はい」
悔しそうに下唇を噛むメストに、フェビルは小さく溜息をつく。
「俺も話は聞いたが……あれは仕方ない。何せ、精神干渉系の闇魔法だ。どうやっても防ぎようがない」
「そう、ですね……」
(まぁ、あの場にいたフリージア嬢の無効化魔法ですら防げなかったということは、ダリア嬢は魅了魔法に関しては相当な使い手だということだな)
実は、ダリアとメストから少し離れていたばかりに、カミルがダリアの魅了魔法が防げなかったとこの時のフェビルは知る由もない。
フェビルの言葉を聞いて、メストが眉間に皺を深くすると、フェビルがカミルの話題に触れた。
「それよりも、メストがいう『あの場にいた友人』というのは……もしかして、例の平民のことか?」
「はい、彼は私の師匠であり友人ですから」
「そう言えば、そうだったな」
(ラピスから聞いた話だと、メストは1年前からフリージア嬢のところに定期的に通っているって言っていたな。本当、因果というかなんというか)
「団長、どうされました?」
「いや、何でもない。ともかく、昨日はすまなかったな。グレアにメストに代休を付与させるよう伝えておくから、昨日の埋め合わせだと思って使ってくれ」
「分かりました。ありがたく使わせていただきます」
(とは言っても、昨日の件でダリアとは更に疎遠になりそうだから、結局はカミルのところに行くしかないのだが)
フェビルから代休を与えられ、頭を下げたメストは内心苦笑した。
すると、フェビルが突然、不安げな目でメストを向ける。
「それと、ラピスから聞いた話なのだが……」
ゆっくりと頭を上げたメストに、組んでいた手を強く握ったフェビルが小さく息を吐いた。
「あの時、お前ダリア嬢が対峙したと聞いたのだが……その、本当なのか? 聞いた限りでは、『2年もまともにダリア嬢と会っていない』と」
「それは……」
『侯爵令息如きが、宰相家令嬢に対して口答えしないで!』
『あんな地味なドレス、着ていくのに恥ずかしかったです』
『あなた、いくら私の婚約者だからって調子乗り過ぎです』
王都で再会した後、婚約者から浴びせられた罵倒の数々が蘇り、口を閉ざすメスト。
そんな部下の顔を見て、フェビルは大きく溜息をついた。
「すまない。上司とはいえ、貴族同士の婚約に口を出すのはご法度だ。だが昨日、ラピスから聞いて、どうしてもお前の口から真相を聞きたかったんだ。気を悪くしたなら許して欲しい」
「いえ、ラピスから話を聞いたのでしたら、心配されるのも仕方ないかと」
「ということは、お前、本当にダリア嬢と対峙したのか?」
「えぇ、彼女は私のことに気づいていませんでしたが」
「ということは、宰相閣下に呼び出されることは……」
「恐らく無いかと」
メストがダリアの機嫌を損ねる度に、ノルベルトがメストを呼び出していたことは、第二騎士団から彼のことも見ていたフェビルは知っていた。
(王都に来てからそういう話を聞いていないが……まぁ、呼び出されないならそれでいい)
内心安堵していたフェビルに、小さく息を吐いたメストがフェビルに向かって深く頭を下げる。
「ご心配おかけして申し訳ありません。ですが、騎士団には迷惑をかけませんので」
「……あぁ、分かっている」
自分の婚約者のせいで迷惑をかけたと謝罪するメストに、フェビルは机に乗った拳を小さく握った。
(こいつに真実を言えたら、どれだけ良いのだろうか? 『本当の婚約者は、お前が『友人』と呼んでいるその人だ』と)
フェビルが僅かに下唇を噛むと、頭を上げたメストがふと何かを思い出した。
「ところで団長、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「あっ、あぁ、構わないぞ」
悔しさを誤魔化すようにぎこちない笑みを浮かべたフェビルに、メストが不思議そうに小首を傾げた。
「ラピスから聞いた話なのですが、あの場の後始末を他の騎士達に任せた後、団長はカミルを追いかけて行ったようですね?」
「あぁ、あれは、礼を言いたくて。ダリア嬢を止めてくれた礼を」
「そうでしたか。ですが、確かカミルは騎士のことを……」
コンコンコン
「フェビル団長、グレアです。そろそろ団長会議が始まります」
「おぉ、そうか。分かった、今すぐ行く」
「かしこまりました」
(危なかった。これ以上フリージア嬢のことを突っ込まれても困る!)
グレアからの呼び出しに、内心安堵したフェビルは、小さく咳払いをするとメストの方を見た。
「ということだ。メスト、朝から呼び出してすまなかったな。職務に戻ってくれ」
「ハッ!」
敬礼をして執務室を去ったメストの背中を見送り、深く溜息をついたフェビルは静かに両手で顔を覆った。
「すまんな、メスト」
(今はまだ、言えないんだ)
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