木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

閑話 最悪のお茶会(後編)

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 ※大人な描写が入ります。ご注意ください。




 (一体、何の話をしているの?)

 はしたなく声を上げる令嬢に、眉を上げたカトレアが一際大きなテーブル席の方に目を向ける。
 すると、テーブル席の上座に座っていたダリアが両手を叩いて、声を上げた令嬢に向かって嬉しそうに笑った。


「あら、もう行かれたの!」
「えぇ、この前の仮面舞踏会の時にお会いしたので、その時に……」


 会話の内容を聞いていない者から見れば、恥ずかしそうに頬を染める貴族令嬢に、他の貴族令嬢が盛り上がるのは、とても微笑ましい光景に映るだろう。

 (でもまさか、上位貴族の令嬢達が集まるお茶会で『仮面舞踏会』という言葉を聞くなんて)

 会話の内容を聞いていたカトレアは、『聞かなければ良かった』と酷く後悔しつつ、運ばれてきた紅茶に口を付ける。
 その時、令嬢の話を聞いて深く頷いたダリアが得意げな顔で口を開いた。


「良いわよね、あの殿方! 顔も良いし、身長も高いし、騎士団に所属していらっしゃるからその辺の殿方より逞しいの!」
「ですが、騎士特有のむさ苦しい感じはなく、むしろその辺の貴族令息より紳士的なので、そこが令嬢達の心を掴んで離さないのですよね!」
「そうそう! 女性を誘うところからのリードも完璧だし、そのくせ、2人きりになればこちらに合わせて主導権を握らせてもらえるし……何より、体の相性が最高!!」
「っ!?」


 (体!? 今、体と言ったわよね!?)

 貴族のお茶会では絶対に聞かない単語が飛び出し、カトレアは思わずむせた。
 だが、そんな彼女の様子など知る由もない令嬢達は、仮面舞踏会で知り合った令息の話で更に盛り上がる。


「そうなのです! 最初の方は様子を伺うように優しくしたかと思えば、こちらが慣れてきたらと分かった途端、突然激しくされて……そのタイミングもバッチリで最高でした!」
「でしょ~! 私も、彼とはもう数えきれないほど肌を合わせたけど、毎回攻め方を変えてくるから飽きないのよね~」
「さすが、ダリア様ですわ!」


 令息と一夜を共にした時の話に、いつの間にか他の令嬢達も集まり、一緒になって黄色い声を上げる。
 その様子を遠目で見ていたカトレアは、思わず溜息をつく。

 (何が『さすがです』よ! そもそも、婚約者以外と体を合わせるなんてダメに決まっているじゃない!)

 ダリアやカトレアを始め、今回のお茶会に集まっている令嬢達は全員婚約者がいる。
 もちろん、令息と一夜を共にした令嬢にも。
 だが、普通なら決して表に出したくない浮気話を堂々と話し、それを聞いて他の令嬢達が冷たい目を向けて罵るどころか、一緒に頬を染めて盛り上がる。

 (つまり、あのテーブル席で盛り上がっている令嬢達は、ダリアと似たような趣味を持っている人達ってことね)

 婚約者とは違う殿方と肌を重ねる楽しさを見出す彼女に、カトレアが吐き気を覚えていると、一夜を共にした令嬢が突然ダリアに向かって申し訳なさそうな顔をする。


「私、あの方なら今すぐ婚約者と別れても良いと思ったのですが……でも、あの殿方、ダリア様のお気に入りなのですよね?」


 すると、ダリアがあっけらかんとした顔で答えた。


「えぇ、でもあなたになら譲ってあげても良いわ」
「まぁ、ありがとうございます!」


 心底嬉しそうに笑う令嬢と、それを見て拍手を送る他の令嬢達に、いよいよ我慢の限界を迎えたカトレアは、静かに席を立つと、近くにいた執事らしき男性に『帰る』ことを伝えて、ダリアに黙って公爵邸を後にした。

 (本当は、主催者であるダリアに声をかけないといけないんだけど、話の腰を折るのも何だし……何より、あの空間に入りたくない!)


『きっと、気分転換になると思うわ!』


「えぇ、気分転換になったわ……最悪な気分にね!」


 小さく悪態をついたカトレアの後ろで、ダリアが集まっている令嬢達に向かって高らかに声をかける。


「それでは皆様、殿方を迎えるためにお色直しをしますわよ~」
「「「「は~い!!!!」」」」


 その後、貴族令嬢らしい慎みのあるドレスから、膝丈で露出が多いドレスに着替えたダリア達は、色気を漂わせながら屋敷を訪れた令息達との交わりを楽しんだ。
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