木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

閑話 最悪のお茶会(中編)

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 唐突にダリアからお茶会に誘われた翌日。
 朝から身支度に追われ、久しぶりに貴族令嬢らしく着飾ったカトレアは、公爵家の執事の案内で、王都で一番の広さを誇る公爵家の庭を訪れた。
 真っ赤なバラが美しく咲き誇る公爵家の庭は、隅々まで手入れが行き届いていることが伺え、それに合わせて設えたであろうお茶会の会場は、とても華やかで完璧に整えられていた。

 (さすが宰相家。この国の政を纏める立場とあって、おもてなしの仕方が他の貴族のお茶会とは明らかに段違いね)

 細やかなところまで行き届いたセッティングと、ガーデンパーティーと勘違いしてしまうような招待客の多さに、カトレアはダリアの『気軽なお茶会』という言葉を鵜吞みしてしまった自分を悔やんだ。
 すると、上位貴族の令嬢達と談笑をしていたダリアがカトレアに気づいた。


「いらっしゃい! 来てくれたのね」


 令嬢達との談笑を止め、満面の笑みで近づいてきたダリアに、淑女の笑みを浮かべたカトレアが綺麗にカーテシーをした。


「本日は、お招きいただき誠にありがとうございます。ノルベルト公爵令嬢」


 (ダリアとは友人関係とはいえ、一応私は子爵令嬢だから、爵位が上である公爵令嬢にはそれ相応の挨拶をしなくちゃ……)


「カトレア! 昨日も言ったけど、今日のお茶会は堅苦しくない気軽なお茶会だからいつものような感じで良いのよ!」
「そ、そう?」
「そうよ! それじゃあ、今日は仕事のことなんて忘れて、思い切り楽しんでね!」


 楽しそうな笑みを浮かべてカトレアの肩をバシバシ叩いたダリアは、言いたいことだけ言うと別の貴族令嬢の集団のところへ行った。
 そんな彼女の背中を見送ったカトレアが困ったような顔で固まっていると、近くにいた令嬢達の会話が聞こえてきた。


「ねぇ、あれって……」
「えぇ、下位貴族の令嬢よ」
「あら、よくこんなところに来られたわね」


 悪意のある言葉が耳に届き、僅かに眉を顰めたカトレアは、ゆっくりと扇子を開き、周り様子を伺う振りをして聞き耳を立てる。
 一介の子爵令嬢がそんなことをしているとは全く気づかない令嬢達は、カトレアへの罵倒が止まらない。


「本当、自分の立場が分かっているのかしら?」
「そうよ、ここには私たちのような高貴な上位貴族しかいないなんて、来たらすぐに分かるのに」
「そんなの下位貴族の令嬢が分かるわけが無いじゃない」
「アハハハッ、そうね! 下位貴族は、私たち上位貴族のような頭を持ってないものね!」
「きっと、ダリア様の慈悲深い言葉を鵜呑みにして来たのでしょう。『天才魔法師』様か何か知らないけど、たかが子爵令嬢がこの場に来るなんて、さすが落ちぶれた『王国の主砲』ね。恥知らずも良いところよ」
「っ!」


 (やっぱり、あるわよね。こういうの)

 会場に来た直後、この場に上位貴族の令嬢しかいないことは、社交からしばらく離れていたカトレアでも分かっていた。
 そして、会場に入った直後、貴族令嬢達からの冷たい視線にも気づいていた。

 だが、ダリアに誘われた手前、そのまま踵を返すわけにはいかなかった。

 (はぁ、やっぱり来ない方が良かったわ)

 令嬢達の止まらない嫌味を聞いて、再び来たことを後悔したカトレアは小さく溜息をつくと後ろを振り返った。
 自分に嫌味を言っている令嬢達に向かって小さく微笑むと、何事も無かったかのようにその場から離れ、会場の目立たない場所に置かれている誰もいない四人掛けのテーブル席に座った。


「はぁぁ……とりあえず、しばらくここで時間を過ごして帰ろうかしら」


 扇子の奥で深く溜息をついたカトレアは、近くにいたメイドに紅茶を持ってくるように頼んだ。
 すると、会場の中央にセッティングされていた一際大きなテーブル席から、貴族令嬢の一際大きな声が聞こえた。


「ダリア様! このまま紹介していただいた殿方、最高に良かったですわ!」
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