後宮の死体は語りかける

炭田おと

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19_西京のごろつき_中編

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「・・・・なんだ、てめえは」

 手下の男が、すぐさま私を睨みつけてきた。

嶺依りょうい・・・・」

 目立つことはするなという、仲弓ちゅうきゅうさんの視線を、背中に感じる。

 だけど、引き下がるつもりはなかった。

「文句でもあるのか?」


 男の睨みに対して、私は笑顔を返す。


「こんばんは」


「・・・・・・・・は?」

「見たところ、何か揉めているようですが、よければ事情を教えてもらえないでしょうか?」

 一通り見ていたから、ある程度事情は把握している。

 だけど男達を苛立たせるために、あえてそう聞いた。


 こちらから攻撃を仕掛けてもいいけれど、今後刑部けいぶの役人が出てくる可能性もあるため、相手から仕掛けてきた、という状況を作っておきたい。


「関係ねえだろ。引っ込んでろ」

「確かに関係ありません。ですが、あなた方が食事代も払えぬほど困窮しているのなら、わずかながら施しを、と思いまして。私も決して裕福ではありませんが、このままではあの方が気の毒です」

 狙い通り、男達の顔は怒りで、果実のように真っ赤になった。

「馬鹿にしてんのか? 女だからって、容赦しねえぞ」

「ええ、わかってます。一人を、三人がかりで脅すぐらいですから」


「このくそ女が!」


 男の一人が、殴りかかってきた。


 彼の腕を払い落として、短剣を鞘から抜かないまま、横に振り抜く。


 鞘が彼のうなじに命中し、首がぐらぐらと揺れた。


「がっ・・・・!」


 前のめりになりながら、彼は膝から崩れていく。


「ううっ・・・・」

 そして地面に額を押し付けるような格好で、うずくまってしまった。

「驚きました。突然殴りかかってくるなんて」

「この野郎!」

 今度はもう一人の手下が、殴りかかってくる。

 横に飛びのいて、彼の攻撃をかわし、腰を落として懐に鞘を打ち込む。

「うっ」

 私の攻撃は、ちょうど鳩尾を突いたようで、彼の口から太鼓のような音が吐き出された。

 この隙を逃すまいと、私はさらに、鞘をばちのように振って、彼の膝裏と足首を叩いた。

 彼は体勢を崩し、片膝をつく。

「まだ続けますか? ・・・・あまり騒ぎが大きくなると、刑部けいぶの武官がやってくると思いますよ。それはあなた方も望まないはず」

「うるせえ、黙れ!」

 彼は立ち上がろうとしたけれど、膝は曲がったままだった。


 ――――さっき、彼の懐ががら空きになった隙に、痺れ薬の針を彼の足に差しておいた。今はうまく手足が動かなくなっているはずだ。


「な、何だ!? 足が動かない!」

 足がうまく動かないことに気づいて、彼は慌てふためいた。

 そして、私を睨む。

「俺に何をした! 何をしたんだ!」

「大丈夫ですよ。明日まで安静にしていれば、足は動くように――――」


 背後から近づいてくる影を見て、私は最後まで言うことができなかった。


 最初に私に殴りかかってきた男が、もう一度私に襲いかかってきた。


「っ・・・・!」

 少し反応が遅れてしまい、完全には避けることができなかった。


 仕方なく腕を前に出すと、こぶしが当たり、痛みと痺れが腕全体を駆け巡る。


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