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40_噂の内容
しおりを挟む「丹朧さん」
丹朧さんは、客人に声をかけられたと思ったのだろう、振り返りながら、笑顔を振りまいた。
でも私と気づくやいなや、無表情に戻ってしまう。
「聞きたいことがあるんです。少し、時間をもらえますか?」
「申し訳ありませんが、今、忙しくて――――」
「小鈴さんが趙徳妃様の怒りを買った噂というのは、もしかして正廷殿下と克誠殿下が、似ていないという内容だったのではありませんか?」
丹朧さんは瞠目して、凍り付いてしまった。
「ど、どうしてその噂を・・・・」
「正解なんですね?」
丹朧さんの表情から、正解を言い当てたのだとわかった。表情で気づかれたと悟って、丹朧さんは顔を伏せてしまう。
「あなたから聞いたとは、絶対言いません。だから噂の内容を、くわしく教えてほしいんです」
丹朧さんは迷いを見せたものの、しばらくするとおずおずと話しだしてくれた。
「兄弟でもお顔が似ていないことは、よくあることです。ですが、その・・・・」
丹朧さんはまた少し、言い淀む。
「・・・・趙徳妃様には入宮前、親しくしていた貴人がいたそうです。それが、あらぬ噂の原因となってしまったのでしょう」
兄弟といえども顔が似ていないことは、よくあることだ。
だけどこの場所では、あらぬ噂の原因になってしまう。小さな出来事すら、大事のように騒ぎ立てるのは、その裏に悪意があるからだ。
趙徳妃様は陛下の寵妃、彼女から陛下の気持ちを引き離したいという狙いもあるのだろう。
「・・・・恋人ですか、なるほど。――――だから疑惑が曹貴妃様ではなく、趙徳妃様に向かってしまったんですね」
「え?」
「いえ。教えてくださり、ありがとうございます」
今の呟きの意味を探られる前に、私は身を翻して、歩き出した。
「仲弓さん、もう出てきていいですよ」
演舞場に戻る道すがら、背後に気配を感じたので、私は声をかける。
「・・・・気づいていたのか」
「もっと早くに、声をかけてくれたらよかったのに。あれじゃ、盗み聞きですよ。盗み聞きなんてはしたないと、いつもおっしゃっていたじゃありませんか」
「お前がおかしなことをせぬかと気になって、追いかけてきただけだ。しかもあの雰囲気では、声をかけられるはずもなかろう。・・・・しかし、さきほどの話は・・・・」
仲弓さんは、考え込んだ。
「趙徳妃が怪しく思えてきたな」
「仲弓さんには、そう思えましたか?」
「お前の考えは違うのか?」
問われたので、微笑を返す。仲弓さんは、顔を顰めた。
「笑ってないで、答えを言え」
「まだ推測の段階なので、確信が持てたら、お話します」
「・・・・まったく、お前という奴は・・・・」
仲弓さんは呆れている様子だったものの、追及はしないでくれた。
「さて――――俊煕殿下に頼みごとをしなければなりませんね」
私は一人呟いて、頭の中で計画を立てていった。
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