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3. 執着の片鱗
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目を覚ますと、最初に飛び込んできたのはミングォさんの悲痛な眼差しだった。
「リンユゥ大丈夫かいっ!?あぁぁわっ、わたしのことが誰だかわかるかな、この指は何本に見えるっ?」
ミングォさんに支えられ、そろそろと身体を起こし辺りを見回す。私は…頭でも打ったのだろうか。
順に答えを返してからそう尋ねたものの違ったらしく、気を失った私をミングォさんが背負って家まで連れて帰ってきたのだという。そうだったと思い出し、私は恥ずかしいやら申し訳ないやらで目を合わせられなかった。
ところが、「リンユゥ、もう璃伴はやめなさい。あんな恐ろしい男がうろついているなんて知らなかった。あぁ、わたしのせいで君を可哀想な目に…本当にすまなかった」となにやら飛躍した解釈をしているミングォさんに、私はぎょっとすると同時にずきりと胸が締め付けられた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい、ミングォさんは何も悪くありません。それにあの人は普通の方のように見えましたよ」
と言いかけて思い出す。「…まぁ、私の信者のようでしたが」
「やっぱり!それだ、それが危険なんだ!だから君のことを嫌な目で見ていた!あれは君に悪戯してやろうと企んでいるヘンタイに違いないっ!あぁ、あぁ、わたしの可愛いリンユゥが…」
あぁぁぁぁ!ヒステリックに頭を掻きむしるミングォさんに、私はまた始まったかと目を細める。私が男性と何かしらあると決まってこう言う。流石にちょっと病的だろうと思うし、実際どこか病んでいるのかもしれない。
しかし、人当たりは良いし彼のことを悪く言う人などこの小さな村では誰もいない。働き詰めが原因だろうと目をつぶることにしていた。
「ミングォさん、だからって私から璃伴を取ったら何が残るというんです?私…他に何もできないと思うんです」
そう、私には璃伴以外何もないのだ。本当に…何も。
村に唯一ある学校のそばを通りかかった際、そこの生徒達がサッカーをしているのを見かけた時のことだ。周りにはその子達の親であろうか、ぽつぽつとではあるが立っており、皆楽しそうな様子であった。私にはそれが酷く羨ましく映った。
大抵の親は、子供のしたいことを支え応援し、見に来てくれる…ミングォさんはいつも忙しそうにしていた。そんなミングォさんがまさか対局を見に来てくれるとは夢にも思わなかったし、本当に嬉しかった。璃伴はそれほど好きなわけではないが、できれば良い所を見せたかった。
でも、ミングォさんは璃伴をする私のことがあまり好きではないようだ。てっきりもっと喜んでくれると思ったのに。私に…何を求めているのだろう。
「そんなことはない。君はここで炊事や洗濯、みんなの面倒をみてくれればそれでいい。ずっとわたしの元にいておくれ…わたしが君を養うから」
ミングォさんの言葉に、一瞬 けつまずいたと思った。いや、座っているのだからそんなはずがない。
「…他のみんなもずっとここに?」
「他のみんなは君くらいに大きくなったら好きなところへ行けばいい。でも君は身体がそれほど丈夫じゃないだろう。頼む、お願いだ。リンユゥのいない生活なんて耐えられないんだ…!」
じゃあ、貴方にぴったりの綺麗な奥さんを私が探してきましょうか。などという柄にもない軽口が一瞬頭をよぎったものの、あまりの迫力に「は、はい」と返すしかなかった。
…私の人生というのは、どうやらこの小さな家で終えていくらしい。ミングォさんと二人で、ずっと。
「ありがとう、リンユゥ…!わたしは君のような優しい息子をもつことができて本当に幸せ者だよ…!」
息子…そんな、私が思う親子像というのはもっと、そんなんじゃなくて…。
ミングォさんにはとても感謝している。道端で野垂れ死にかけていたらしい私を拾ってくれたのがミングォさんで、八人の孤児の中でも特別私を気にかけてくれているのは身をもって感じている。
…奥さんを迎える気はどうやらなさそうだ、なぜだろう。そのせいでかリンユゥリンユゥと名を呼ばれるのはたまったものではない。…いや、考えすぎか。そういう主義なのかもしれない。
しかしミングォさんと私の間には、なにやら超えられない隔たりがあるのは確かだった。
その日の夜、私はなかなか寝付くことができなかった。
「リンユゥ大丈夫かいっ!?あぁぁわっ、わたしのことが誰だかわかるかな、この指は何本に見えるっ?」
ミングォさんに支えられ、そろそろと身体を起こし辺りを見回す。私は…頭でも打ったのだろうか。
順に答えを返してからそう尋ねたものの違ったらしく、気を失った私をミングォさんが背負って家まで連れて帰ってきたのだという。そうだったと思い出し、私は恥ずかしいやら申し訳ないやらで目を合わせられなかった。
ところが、「リンユゥ、もう璃伴はやめなさい。あんな恐ろしい男がうろついているなんて知らなかった。あぁ、わたしのせいで君を可哀想な目に…本当にすまなかった」となにやら飛躍した解釈をしているミングォさんに、私はぎょっとすると同時にずきりと胸が締め付けられた。
「ちょっ、ちょっと待って下さい、ミングォさんは何も悪くありません。それにあの人は普通の方のように見えましたよ」
と言いかけて思い出す。「…まぁ、私の信者のようでしたが」
「やっぱり!それだ、それが危険なんだ!だから君のことを嫌な目で見ていた!あれは君に悪戯してやろうと企んでいるヘンタイに違いないっ!あぁ、あぁ、わたしの可愛いリンユゥが…」
あぁぁぁぁ!ヒステリックに頭を掻きむしるミングォさんに、私はまた始まったかと目を細める。私が男性と何かしらあると決まってこう言う。流石にちょっと病的だろうと思うし、実際どこか病んでいるのかもしれない。
しかし、人当たりは良いし彼のことを悪く言う人などこの小さな村では誰もいない。働き詰めが原因だろうと目をつぶることにしていた。
「ミングォさん、だからって私から璃伴を取ったら何が残るというんです?私…他に何もできないと思うんです」
そう、私には璃伴以外何もないのだ。本当に…何も。
村に唯一ある学校のそばを通りかかった際、そこの生徒達がサッカーをしているのを見かけた時のことだ。周りにはその子達の親であろうか、ぽつぽつとではあるが立っており、皆楽しそうな様子であった。私にはそれが酷く羨ましく映った。
大抵の親は、子供のしたいことを支え応援し、見に来てくれる…ミングォさんはいつも忙しそうにしていた。そんなミングォさんがまさか対局を見に来てくれるとは夢にも思わなかったし、本当に嬉しかった。璃伴はそれほど好きなわけではないが、できれば良い所を見せたかった。
でも、ミングォさんは璃伴をする私のことがあまり好きではないようだ。てっきりもっと喜んでくれると思ったのに。私に…何を求めているのだろう。
「そんなことはない。君はここで炊事や洗濯、みんなの面倒をみてくれればそれでいい。ずっとわたしの元にいておくれ…わたしが君を養うから」
ミングォさんの言葉に、一瞬 けつまずいたと思った。いや、座っているのだからそんなはずがない。
「…他のみんなもずっとここに?」
「他のみんなは君くらいに大きくなったら好きなところへ行けばいい。でも君は身体がそれほど丈夫じゃないだろう。頼む、お願いだ。リンユゥのいない生活なんて耐えられないんだ…!」
じゃあ、貴方にぴったりの綺麗な奥さんを私が探してきましょうか。などという柄にもない軽口が一瞬頭をよぎったものの、あまりの迫力に「は、はい」と返すしかなかった。
…私の人生というのは、どうやらこの小さな家で終えていくらしい。ミングォさんと二人で、ずっと。
「ありがとう、リンユゥ…!わたしは君のような優しい息子をもつことができて本当に幸せ者だよ…!」
息子…そんな、私が思う親子像というのはもっと、そんなんじゃなくて…。
ミングォさんにはとても感謝している。道端で野垂れ死にかけていたらしい私を拾ってくれたのがミングォさんで、八人の孤児の中でも特別私を気にかけてくれているのは身をもって感じている。
…奥さんを迎える気はどうやらなさそうだ、なぜだろう。そのせいでかリンユゥリンユゥと名を呼ばれるのはたまったものではない。…いや、考えすぎか。そういう主義なのかもしれない。
しかしミングォさんと私の間には、なにやら超えられない隔たりがあるのは確かだった。
その日の夜、私はなかなか寝付くことができなかった。
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