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大魔王
040・正しい道理
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~天界~
ジャスたちが天界に到着するころには、すでに戦闘が開始されていた。
魔界軍は 倍以上もの兵力を誇る天使兵相手に奮戦し、徐々に領域を進めていく。
ジャスは 少し離れた位置にいた傷ついた天使兵を見つけると、その天使兵に駆け寄り、世界樹の保管場所を聞き出すことにした。
「テルミナお兄ちゃん、世界樹の保管場所を教えて下さい。」
「まさか、ジャス・・・?
本当に君なのか?
君は魔界で死んだはずじゃ・・・。」
テルミナと呼ばれた天使兵は、ジャスを見て驚きを隠せないようすだった。
ジャスは、テルミナの質問に軽く頷き答える。
「確かに私は命を落としました。
でも、魔界に住む女神様・・・魔王マリーさんの涙で復活をしたんです。」
テルミナは、不思議そうな顔をする。
「ちょっと待ってよ。
魔界に住む女神?
魔王マリー?
涙で復活?
ごめん、話が見えてこない。
確かに神様や大天使様の涙で、僕たち天使が蘇るって話は聞いたことがあるけど、魔王の涙でだなんて・・・。」
「別に不思議なことではないですよ。
だって、マリーさんは古の女神、ディーテさんの一人娘なんですから。」
「古の女神ディーテ?
もしかして、最後まで天界に残ったと言われている真実の女神様のこと?」
「はい。」
ジャスが大きく頷くと、後ろにいたノーサが納得したような表情を見せ、隣にいたドン・キホーテたちに話しかける。
「ノーサ、やっとわかったの。
なんでマリーが使い魔を見分けることができるのか。
きっとマリーは女神様の血を多く引き継いでるの。
だから、何か特別な力で使い魔を見分けていると思うの。
それに、マリーの放つ防御魔法は次元が違いすぎるの。
これもきっと女神様の力か何かだと思うの。」
「確かに、わしもマリー様を初めて見たときに、神々しく感じましたゾイ。
まさに女神様と見間違えたほどですゾイ。」
「俺らは知ってたニャン。
だって、天界にディーテ様とマリー様を迎えに来たのはネロなんだニャン。」
後ろで話すノーサたちの会話を聞き、テルミナは目を瞑り何か考えているようだった。
テルミナは考えがまとまったのか、目を開け、ジャスに伝える。
「いまの僕には何が正義なのか分からない。
だから、ジャスの味方にはなれない。
世界樹の保管場所も教えることはできない。
だけど・・・。」
テルミナは、ジャスやノーサ、ドン・キホーテたちの顔を見る。
ジャスたちの表情には何の曇りもなく感じられた。
そして、テルミナは ジャスの真っすぐな瞳を見つめ返し答える。
「だけど、悪魔たちの狙いが世界樹だというのなら、世界樹の警備に向かわなければならないね。」
「テルミナお兄ちゃん、ありがとうございます。」
「同じ孤児院で育った仲じゃないか。
困った妹を助けるのは、兄の使命だからね。」
テルミナの翼は折れていて飛ぶことができないようだ。
彼の足も折れているのか、明らかに不自然な方向に曲がっている。
それでも、持っていた槍を杖替わりに足を引きずりながら、最前線とは違う方向へと進んでいく。
「地下道を通り抜けよう。
その方が、他の天使兵にも気づかれなくて済む。」
「テルミナお兄ちゃん・・・。」
手を貸そうとするジャスの手を払い、テルミナは先に進む。
「ジャス、敵に手を貸していたら他の悪魔たちから不穏に思われるんじゃないのか?
僕は大丈夫だから・・・。」
「・・・。」
ジャスは、悲しげな表情でテルミナを後ろから見つめていた。
すると、
「ほら、そんなにノロノロ歩いてたら日が暮れちゃうと思うの。
ノーサが肩を貸してあげるから、さっさと歩いてほしいの。」
「そうですな。
こんなところで時間を使ってもしょうがないのですゾイ。」
「し、しかし・・・。」
テルミナを両脇からかかえるように、ノーサとドン・キホーテが肩を貸す。
動揺するテルミナに、使い魔たちが声をかける。
「気にすることないニャン。まったく大丈夫だニャン。」
「そうだニャン。悪魔は、そんなこと気にしないニャン。」
「別に助けたかったら助ければいいニャン。」
「そうなの。悪魔はバカバカしく生きてるの。
それに、大好きなジャスの兄なら助けておくべきと思っただけなの。
別に見返りとか気にしてないし、お礼とかも必要ないの。」
テルミナは、ノーサの横顔を見て顔を赤くする。
ノーサもテルミナに見られていることに気付いたようで、テルミナを見つめる。
「別に恥ずかしいことじゃない。仕方がないことなの。
怪我をしているんだし、男とか女とか関係ないと思うの。」
「あ、あの、ありがとうございます。」
テルミナは、前を向き直し地下道への道を案内し始めた。
地下道への入り口にたどり着くと、テルミナはジャスに伝えた。
「ここからなら地下道に入って、何も考えずに直進で保管場所の建物につくよ。
世界樹の保管場所は、ちょうど地下になる。
地上へは上がらずに探した方がいい。
地上に上がってしまうと、天使長官の居城になってるから、警備が厳重だからね。」
「テルミナお兄ちゃん。ありがとうございます。」
「ジャス、気をつけてね。
それと、ノーサさん、ドン・キホーテさん、肩を貸していただいてありがとうございました。」
「なになに、困ったときはお互いさまですゾイ。」
「お礼は必要ないって言ったと思うの。
ほら、ジャス。早く世界樹を探しに行きましょう。」
「あ、ノーサさん、待ってくださいよ。
テルミナお兄ちゃん、いってきます。」
ノーサは、ジャスの手を握ると、その手を引きながら地下道へと入っていった。
他の悪魔や使い魔たちも、テルミナに礼を言い、ノーサの後を追いかけていった。
一人残されたテルミナは、空を見上げながら呟いていた。
「世界樹を略奪してきた冷徹な天使たちと、それを取り戻しに来た心穏やかな悪魔たち・・・。
これじゃ、何が正義なのか分からないよ。」
→041へ
ジャスたちが天界に到着するころには、すでに戦闘が開始されていた。
魔界軍は 倍以上もの兵力を誇る天使兵相手に奮戦し、徐々に領域を進めていく。
ジャスは 少し離れた位置にいた傷ついた天使兵を見つけると、その天使兵に駆け寄り、世界樹の保管場所を聞き出すことにした。
「テルミナお兄ちゃん、世界樹の保管場所を教えて下さい。」
「まさか、ジャス・・・?
本当に君なのか?
君は魔界で死んだはずじゃ・・・。」
テルミナと呼ばれた天使兵は、ジャスを見て驚きを隠せないようすだった。
ジャスは、テルミナの質問に軽く頷き答える。
「確かに私は命を落としました。
でも、魔界に住む女神様・・・魔王マリーさんの涙で復活をしたんです。」
テルミナは、不思議そうな顔をする。
「ちょっと待ってよ。
魔界に住む女神?
魔王マリー?
涙で復活?
ごめん、話が見えてこない。
確かに神様や大天使様の涙で、僕たち天使が蘇るって話は聞いたことがあるけど、魔王の涙でだなんて・・・。」
「別に不思議なことではないですよ。
だって、マリーさんは古の女神、ディーテさんの一人娘なんですから。」
「古の女神ディーテ?
もしかして、最後まで天界に残ったと言われている真実の女神様のこと?」
「はい。」
ジャスが大きく頷くと、後ろにいたノーサが納得したような表情を見せ、隣にいたドン・キホーテたちに話しかける。
「ノーサ、やっとわかったの。
なんでマリーが使い魔を見分けることができるのか。
きっとマリーは女神様の血を多く引き継いでるの。
だから、何か特別な力で使い魔を見分けていると思うの。
それに、マリーの放つ防御魔法は次元が違いすぎるの。
これもきっと女神様の力か何かだと思うの。」
「確かに、わしもマリー様を初めて見たときに、神々しく感じましたゾイ。
まさに女神様と見間違えたほどですゾイ。」
「俺らは知ってたニャン。
だって、天界にディーテ様とマリー様を迎えに来たのはネロなんだニャン。」
後ろで話すノーサたちの会話を聞き、テルミナは目を瞑り何か考えているようだった。
テルミナは考えがまとまったのか、目を開け、ジャスに伝える。
「いまの僕には何が正義なのか分からない。
だから、ジャスの味方にはなれない。
世界樹の保管場所も教えることはできない。
だけど・・・。」
テルミナは、ジャスやノーサ、ドン・キホーテたちの顔を見る。
ジャスたちの表情には何の曇りもなく感じられた。
そして、テルミナは ジャスの真っすぐな瞳を見つめ返し答える。
「だけど、悪魔たちの狙いが世界樹だというのなら、世界樹の警備に向かわなければならないね。」
「テルミナお兄ちゃん、ありがとうございます。」
「同じ孤児院で育った仲じゃないか。
困った妹を助けるのは、兄の使命だからね。」
テルミナの翼は折れていて飛ぶことができないようだ。
彼の足も折れているのか、明らかに不自然な方向に曲がっている。
それでも、持っていた槍を杖替わりに足を引きずりながら、最前線とは違う方向へと進んでいく。
「地下道を通り抜けよう。
その方が、他の天使兵にも気づかれなくて済む。」
「テルミナお兄ちゃん・・・。」
手を貸そうとするジャスの手を払い、テルミナは先に進む。
「ジャス、敵に手を貸していたら他の悪魔たちから不穏に思われるんじゃないのか?
僕は大丈夫だから・・・。」
「・・・。」
ジャスは、悲しげな表情でテルミナを後ろから見つめていた。
すると、
「ほら、そんなにノロノロ歩いてたら日が暮れちゃうと思うの。
ノーサが肩を貸してあげるから、さっさと歩いてほしいの。」
「そうですな。
こんなところで時間を使ってもしょうがないのですゾイ。」
「し、しかし・・・。」
テルミナを両脇からかかえるように、ノーサとドン・キホーテが肩を貸す。
動揺するテルミナに、使い魔たちが声をかける。
「気にすることないニャン。まったく大丈夫だニャン。」
「そうだニャン。悪魔は、そんなこと気にしないニャン。」
「別に助けたかったら助ければいいニャン。」
「そうなの。悪魔はバカバカしく生きてるの。
それに、大好きなジャスの兄なら助けておくべきと思っただけなの。
別に見返りとか気にしてないし、お礼とかも必要ないの。」
テルミナは、ノーサの横顔を見て顔を赤くする。
ノーサもテルミナに見られていることに気付いたようで、テルミナを見つめる。
「別に恥ずかしいことじゃない。仕方がないことなの。
怪我をしているんだし、男とか女とか関係ないと思うの。」
「あ、あの、ありがとうございます。」
テルミナは、前を向き直し地下道への道を案内し始めた。
地下道への入り口にたどり着くと、テルミナはジャスに伝えた。
「ここからなら地下道に入って、何も考えずに直進で保管場所の建物につくよ。
世界樹の保管場所は、ちょうど地下になる。
地上へは上がらずに探した方がいい。
地上に上がってしまうと、天使長官の居城になってるから、警備が厳重だからね。」
「テルミナお兄ちゃん。ありがとうございます。」
「ジャス、気をつけてね。
それと、ノーサさん、ドン・キホーテさん、肩を貸していただいてありがとうございました。」
「なになに、困ったときはお互いさまですゾイ。」
「お礼は必要ないって言ったと思うの。
ほら、ジャス。早く世界樹を探しに行きましょう。」
「あ、ノーサさん、待ってくださいよ。
テルミナお兄ちゃん、いってきます。」
ノーサは、ジャスの手を握ると、その手を引きながら地下道へと入っていった。
他の悪魔や使い魔たちも、テルミナに礼を言い、ノーサの後を追いかけていった。
一人残されたテルミナは、空を見上げながら呟いていた。
「世界樹を略奪してきた冷徹な天使たちと、それを取り戻しに来た心穏やかな悪魔たち・・・。
これじゃ、何が正義なのか分からないよ。」
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