【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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大魔王

041・決戦 異形なる天使

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ジャスたち 世界樹奪取部隊が地下道を駆けていると、目の前に大きな門が見えてきた。
その門は不用心にも半開きになっており、いかにも通ってくれといわんばかりだった。


「ジャスさん、あの半開きの門は罠だと思うニャン。」
「エンマの言う通りだニャン。一度止まって作戦を考えるニャン。」
「ポチ、虎穴にいらずんば虎児を得ずというニャン。」


「「「行くニャン。」」」


エンマ、ポチ、ケーンが走りながら闇を纏い、それぞれに魔界の6鬼神に姿を変える。
姿を変え終わったイヌ(ポチ)がジャスたちに声をかける。

「ジャスさん、俺とサルで後方支援をします。
 キジ、ジャスさんたちを頼みます。」


イヌの言葉に仕方がないと言った表情でサル(エンマ)が頷く。
キジ(ケーン)は、ジャスたちを先導するように最前線を飛び門へと向かう。

「ジャスさん、僕に着いてきて下さい。
 もし罠だとしても一気に駆け抜けます。」

「はい!」


一行は、キジを先頭に半開きの門を目指し速度をあげる。
すると、前方の門がゆっくりと閉まり始めた。

「やはり罠でしたね。
 どこかで情報が漏れたんでしょう。」

キジは そういうと更に速度をあげ、閉まる前の門に体をねじ込ませ、門が閉まり切るのを防ぐ。

「ジャスさん、僕にかまわず 一気に駆け抜けて下さい。
 皆さんが通過したら、僕もついていきます!」


門の側面からは、門が閉まらなかったことからだろう。
慌てた様子で天使兵たちが一斉に飛び出してきた。しかし、天使兵たちが飛び出してくるのが遅く、ジャスたちは すでに門の近くを通過していた。

後を追うように天使兵が門に駆け寄ってくる。
このままでは、門を通過した先で戦闘に巻き込まれてしまい足止めを食らってしまうだろう。
なぜなら、天使兵の数は ざっと数えても150~200ほどであり、その天使兵の中には オニニギノミコトの姿もある。
追いつかれれば応援を呼ばれてしまい作戦の失敗もあり得るだろう。

周囲の状況をとっさに判断したサルは、最善の策をロスなく実行に移すようだ。


「俺が群れのボスを殺る。
 お前は他の雑魚を頼む。」

「あっ!」


サルはイヌの返事を聞かず、隊列を離れオニニギノミコトに飛びかかっていった。

「まったく・・・。
 あいつは昔から変わらないな。」

イヌは ブツブツと文句を言いながらも門の手前、隊列の最後尾で振り返り、後を追ってくる天使兵と対峙する。
キジは ジャスたちが門を通過したのを確認し、そのまま門の中へと入っていった。




門の外に取り残された イヌとサル。
エンマは、すでにオニニギノミコトと戦闘に突入していた。

「エンマ・・・。
 人間だった頃もこういう最期だったな。」


イヌの呟きが聞こえたのか、サルは一瞬、イヌに視線を送りニヤリとした表情を見せる。
イヌは周囲を取り囲む天使兵に向かって見得を切った。


「やあやあやあ!
 我こそは 日の本一の兵法者!
 向かうところに敵はなし、怪力無双の犬山 泰道イヌヤマ タイドウとは俺のことよ!
 ・
 ・
 ・
 きまったかな?
 いざ参る!」


イヌは、群がるように襲ってくる天使兵たちと戦闘に入った。
それを横目に見ていたオニニギノミコトは、サルに声をかける。


「お主も立派な武人であろう。
 最期を迎える前に名前だけでも聞いてやろう。」

「俺の名・・・。
 俺は人間として生まれ落ちたときから、忍びとしての道具。
 名などない。
 あえて俺を呼ぶのであれば、腐りきった人に死の制裁を加える冥府の番人・・・閻魔エンマ
 いや、いまはサルと呼んでくれればいい。」

「あいわかった。
 サル、その名を覚えておく。」

「どうぞ、ご勝手に。」

サルとオニニギノミコトも、サルの先制攻撃を合図に、死闘を再開した。





一方そのころ、地上で戦闘を行っていた大魔王ロロノアたちも天使長ベルゼブイの居城へと迫っていた。
特に大魔王ロロノアと、魔王マダム・オカミは強力で、対峙した天使兵も怯えてしまうほどであった。

「そろそろ天使長ベルゼブイの居城ニャン。
 俺が変身して外の敵を引き付けるニャン。」

「俺も残るッス。」

「いや、ハンは中に進んでほしいニャン。
 なんだか嫌な予感がするニャン。」

「嫌な予感ッスか?」


使い魔のネロは ハンの言葉に軽く頷く。


「・
 ・
 ・
 おそらく マダム・オカミとロロノアだけだと喧嘩を初めてしまうニャン。
 そうなれば、ベッチだけでは止められないニャン。」

「・
 ・
 ・
 最悪のシナリオッスね。
 分かったッス。中のことは任せるッス。」

「それと世界樹を見つけたときは、マリー様を頼むニャン。」

「もちろんッス。」



ハンはネロに外を任せ、大魔王ロロノア、魔戦長ベッチ、魔王マダム・オカミの後を追って場内に突入していった。
ネロは、4人が中に入ったのを確認し、城の入り口の前で闇を纏い黒き巨人ゴリアテに姿を変え、何もない空を見上げて言い放つ。


「いいかげん、直接戦ったらどうだ。
 貴様が指揮を執っている天使なんだろ?」



ゴリアテ(ネロ)の言葉に、反応するように 何もない空が歪み、美しい天使が舞い降りてきた。

「・
 ・
 ・
 よく分かりましたね。
 わたくしは 天使長官ベルゼブイ様から寵愛を受ける副天使長官バビロン。
 わたくしを見つけることができた お前に敬意を表し、苦しませずに殺して差し上げましょう。」

「悪魔バビロン・・・。
 こんな形で再開するとはな。」

「お前のような下賤なモノに知り合いはいませんわ。」


ゴリアテは、ニヤリと笑みを浮かべると副天使長バビロンに掴み掛った。

「貴様が覚えていなくとも、我を罠にはめ 我が国の民を迫害した憎しみ、我が妻や子を奪われた恨み、決して忘れることがないわ!
 我は、ローマ帝国 第5代皇帝、ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスである。」

「ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス・・・。
 思い出しましたわ。
 わたくしの魅了の魔法にかかり、妻子に手をかけ、暴君と呼ばれた我が愚弟。
 同じ父を有しながら、わたくしとは違い皇帝になった男・・・。
 わたくしも お前のことを忘れたことはなかったわ。
 ・
 ・
 ・
 もっとも憎らしい存在。
 進化の秘宝を使った程度の使い魔が、天使として昇格した わたくしに勝てるとでも思っているのかしら。」

「さあな。
 貴様を殴り殺してから考えるとするさ。」


鬼神ゴリアテと 副天使長バビロンは、その場で憎しみを全てぶつけるように激しく殴り合いを始めた。






~天使長官ベルゼブイの居城・地下~


イヌ(ポチ)とサル(エンマ)を残し、先に進む一行であったが、ふとノーサが立ち止まる。
その様子に気付いたジャスが ノーサに声をかける。

「ノーサさん、大丈夫ですか?」


「・・・。
 ノーサ 少し疲れちゃったみたいなの。
 ジャス、みんなと一緒に先に行っててほしいの。」

いま駆けて来た道を振り返るようにして見つめるノーサの表情から、ジャスは何かを察した。


「ノーサさん、必ず追いついて下さいね。」

「ふふふっ、余計な心配なの。
 ノーサは これでも混血のノーサとして、魔王クラスの魔力を持っている。そこらへんの魔王よりも強力な悪魔なの。
 ちょっと疲れたから休んでいくだけなの。」


ジャスは深く頷くと、世界樹を探す為、再び奥へと走り始めた。
ノーサはジャスの姿が見えなくなると、大きく背伸びをした。


「あーあ、この姿のままで戦えればよかったんだけど・・・。
 今日ばかりは仕方がないわね。
 どこで拾っちゃったんだろう?」


そう呟くノーサが自分の影を見つめていると、その影はノーサから離れたあと、形を変え天使の影の形へと変貌し実体を得て ノーサの前に立ちふさがる。

「ノーサ 思うんだけど。影に隠れる悪魔とか、趣味が悪いと思うの。」

「ワレハ、影ヲ司ル天使。バルログ。
 天使長ベルゼブイ様ヲ 守ル為、正義ノ鉄槌ヲ貴様ニ喰ラワス。」

「どうして片言なの?
 それに、その姿・・・。
 どう見たって悪魔でしかないわよ!
 激圧の泡アクア プレッシャー!!!」

反魔法の儀アンチ マジック!」


ノーサは話し終えるタイミングで、水の魔法で敵を押しつぶす。
しかし、ノーサの唱えた魔法は、敵に当たる直前に相殺されてしまう。


「貴様ハ、ワレニ勝ツコトガデキナイ。
 ワレニ半端ナ魔法ハ効果ガナイゾ。」

そういうと 影を司る天使 バルログは、巨大な爪をもつ獣の影に姿を変える。

「半端な魔法で悪かったわね。
 ・
 ・
 ・
 だって、ノーサ。
 本当は 肉弾戦が得意なんだから・・・。」


そう言い終わると、ノーサの体から血の気が引いていく。




亜麻色の美しい髪は、完全な白髪に代わり、
血色の良かった肌は 青白く。
薄紅色の唇は真っ青に変わる。
ノーサの両手からは鋭い爪が伸び、
口元からは、鋭い牙が生えてくる。


「キサマ、吸血鬼ナノカ・・・。」

「ふふふっ、吸血鬼?
 吸血鬼って何なの。
 ノーサはノーサ。何者でもないわ。
 マリー以外の悪魔は、混血のノーサなんて呼んでるけど、その名前、気に入ってないの。」

ノーサは無詠唱で黒い霧に姿を変え、バルログにその鋭い爪と牙で襲い掛かる。




→イヌ、サル  ・・・42へ
→ゴリアテ   ・・・43へ
→混血のノーサ ・・・44へ

→戦いを任せる ・・・45へ


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