【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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大魔王

042・イヌ、サル

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【イヌ VS 天使兵】
【サル VS オニニギノミコト】


門の前に仁王立ちで構えるイヌに、天使兵たちが群がって襲ってくる。
イヌは、両手の爪をこすり合わせた。

キーンキーン!

甲高い金属音が響き渡ると、群れて襲いくる天使兵と戦闘を開始した。


天使兵は、槍や弓を主武器として戦う兵士で、個々の戦闘力は悪魔と比べ低いのだが、集団戦に特化しており、連携攻撃を得意としている。
天使兵たちは、弓で先制攻撃を行うが 戦闘力が違いすぎるためだろうか、放たれた矢は イヌの両手の爪で全て切り落とされる。
それどころか、イヌは飛来する矢を見切り、合間を縫って 飛来する矢を打ち返し反撃までしていた。


「くそ!
 弓部隊、後方に引き半数は 槍に持ち替えろ!
 これより 悪魔に波状攻撃を喰らわせる。
 総員、構え!
 突撃!!!」

このまま弓矢による攻撃を続ければ、一方的に天使兵が負傷してしまうと考えたのか、天使兵の兵長は 作戦を変更する。
この柔軟な対応力も練度の高い天使兵の強みだろう。


「やれやれ、もっと矢を放ってきてくれれば楽だったのにな。」


そういうと、イヌは 再び両手の爪をこすり合わせた。


キーンキーン!


「さあ、死にたいやつから かかって来い!」



イヌは自分を奮い立たせるために声をあげた。
背後には門がある為、場所を変えながら戦うわけにはいかない。
しかし、その門があるからこそ、四方を囲まれることはないのだが・・・。

結果的に、イヌは 前面と左右からの同時攻撃に苦戦することとなる。
1度や2度の攻撃であれば、なんとか捌くことも難しくないのだが、天使の連携のとれた波状攻撃が厄介だった。
第1波が攻撃を終えると同時に、その隙間から 第2波の攻撃が始まる。
第2波の攻撃を捌き終える前に、空を飛び後方に退いた第1波の後方から、第3波の攻撃が来る。
第4波、第5波、第6波、第7波・・・。天使兵は前後を入れ替えながら、連続で休むことなく攻撃を続ける。


「ちまちまちまちまと!
 一気にかかって来てくれれば。」


連続した攻撃に、徐々にイヌは 傷を負っていく。
イヌは反撃しようにも波状攻撃に反撃もできないようだ。
いくら硬い毛皮で覆われていて 致命傷にならないにしても、傷の痛みや疲労から、徐々に攻撃を捌くのに粗が目立ち始める。


「天使兵!手を休めるな!
 このまま押し込め!」

徐々に後方に引きながら攻撃を捌くイヌだが、ついに門の直前まで追い込まれる。
後方に引けなくなったイヌは、傷を負う頻度が高くなり、徐々に体力も奪われていく。


(ヤバイな・・・俺、戦うの苦手なのに・・・。
 サル、早く決着をつけてきてくれよ・・・。)




そのころ、サルは オニニギノミコトを翻弄するように縦横無尽に飛び回り攻撃を繰り出していた。

「お、おのれ!
 ふん、ふん、ふんん!」

オニニギノミコトの一撃は、空振りになったとしても、その風圧で周囲に衝撃を与える程の威力があった。
以前、遭遇した時よりも強力になっているようだ。
しかし、攻撃が当たらなければ意味がない。
サルは歴戦の勇者だったのだろうか、それとも 人間だったころ、忍びとして死地を潜り抜けてきた結果だろうか、オニニギノミコトの攻撃を紙一重で回避する。

あと少しで当たるかもしれないという気持ちから、オニニギノミコトは攻撃の手を緩めない。
しかし、その攻撃がサルに当たることはなさそうだ、なぜなら サルの表情には余裕があり、攻撃を回避する瞬間に笑顔を見せるほどだ。


「なぜ、なぜ当たらんのだ!」

「力任せに ぶん回したって当たんねーよ。
 お前、桃彦みてーな戦い方だから楽だぜ。」


そういうとサルは、渾身の一撃をオニニギノミコトの腹部に当てる。

「ぐふぅ・・・。」


悶絶するオニニギノミコトだが、すぐに攻撃を再開する。
そんな オニニギノミコトに、再びサルが反撃の一撃を入れる。


「ぐ、ぐふぅ・・・。」

「おいおい、無駄に頑丈だな。
 まだ 殺りあうのか?」

「言わせておけば・・・。
 わしは 大天使様に お使えすることだけを夢見て体を鍛えてきたのだ。
 悪魔如きの攻撃で この体に土をつけることはないわ。」

「なら、試してみるか?」


サルは、攻撃を回避してオニニギノミコトに反撃を繰り出す。
その攻撃は、オニニギノミコトの腹部を執拗に攻め、オニニギノミコトの体力を奪う。
しかし、何度も何度も 攻撃を受けてもオニニギノミコトは倒れることがない。


「まだまだ!
 これしきの攻撃で・・・。」

(ゴリアテ以上にタフだな。
 だが・・・コレで最期だ!)


サルの力を込めた渾身の一撃が、オニニギノミコトの腹部に突き刺さる。
腹部を執拗に攻め、体力を奪われていたオニニギノミコトは、吐血し膝をつく。







「これで終わりだ。」






(・・・しまった。)

オニニギノミコトは、サルの腕を掴んでいた。
そのまま、オニニギノミコトはサルに 頭突きをくらわせ、ひるんだサルに強烈な殴打を喰らわせる。
一撃で形勢逆転するほどの威力で、サルの意識を奪う。


意識を失ったサルは、その姿を使い魔へと変えた。

そんなサルを見ていたイヌは、門から離れ天使兵をかき分けながらエンマ(サル)の元に駆けつけようとするが、天使兵の包囲を突破することなく その刃に倒れる。
使い魔の姿に変わり、倒れこむポチ(イヌ)は、這いつくばるようにエンマの元に近づく。

「エンマ、大丈夫かニャン?」


ポチの声に目を覚ましたエンマが、ポチの声に答えた。



「・・・ポチ、すまないニャン。」
 
「気にすることないニャン。
 エンマ、また来世で会おうニャン。」

「ああ・・・。」


オニニギノミコトは、2匹の使い魔を見下ろしている。
そんなオニニギノミコトは、エンマとポチに声をかけた。


「最期に言い残すことはないか?」



「何もないニャン。
 ジャスさんが必ずマリー様を助け出してくれるニャン。」

「そうだニャン。
 マリー様や桃彦が 俺らの仇をとってくれるニャン。
 ポチ・・・来世でまた会おうニャン。」



オニニギノミコトは 高く右手を上げ、天使兵に合図を送り 2匹の使い魔を包囲させた。
天使兵たちは 槍を構え、オニニギノミコトの号令を待つ。



オニニギノミコトが 高く上げた その手を下ろそうとしたとき、背後から声が聞こえた。


「待ってください!」


オニニギノミコトは右手を上げたまま背後に視線を送ると、
そこには、折れた足を引きずりながら 持っている槍を杖のように突きながら近づいてくる下級天使兵テルミナの姿があった。
オニニギノミコトは、下級天使兵テルミナから使い魔に視線を戻す。


「待ってください!
 彼らは魔界の使い魔ですが、悪の存在ではありません。
 もしかすると、魔界に住む悪魔たちだって、悪の存在ではないかもしれません。
 そんな彼らを 我々は裁くことができるのでしょうか。
 聖書によれば、神々は 天使たちに 真なる悪と戦う為に武器を持つことを許されました。
 真なる悪とは、本当に悪魔たちのことでしょうか。
 彼らは この戦いにおいても、我々 天使兵の命を奪うことはしていません。
 本当に真なる悪であるならば、天使兵の命を躊躇なく奪うでしょう。
 しかし、彼らは それを行っていません。」



テルミナの言葉に、オニニギノミコトは 再び振り向くとテルミナも包囲させる。

「お前が 悪魔に魂を売った裏切者か。
 よくも神々の意思を歪曲して語ったな!
 その罪、死して償うがよい!」


テルミナは、エンマとポチを見て涙を流す。


「いまさら泣いて命乞いかよ。」
「我々を裏切った堕天使のくせに。」


オニニギノミコトの号令を待つ天使兵が口々に文句を言う。
もちろん、テルミナの耳にも届いているだろう。
テルミナは、2人の使い魔から目を離すことなく、口を開く。



「みなさん、救えなくて ごめんなさい。」



「余計なことをするからだニャン。
 ・
 ・
 ・
 でも、
 ・
 ・
 ・
 ジャスさん以外にも天使らしい天使がいて安心したニャン。」

「エンマ、もっと優しい言葉をかけてやるニャン。
 本当は嬉しいくせに、いつもカッコつけてるニャン。
 テルミナ、俺らみたいな使い魔に手を差し伸べてくれて、ありがとうニャン。」


「・・・俺らは消滅しても、テルミナのことも忘れないでいてやるニャン。
 もし来世であえるなら、また会おうニャン。
 ・
 ・
 ・
 さあ、オニニギノミコト。俺らを殺せニャン!」

「俺らは殺されても文句は言わないニャン。
 だけど、もし、マリー様やジャスさんを悲しませれば、必ず化けて出てきてやるニャン!」





オニニギノミコトが高く上げた右手を振り下ろそうとしたとき、どこからともなく声が響き渡る。




「我、魂に命じる。
 この場における生命体に、深い眠りを与えよ。」




君の声が響き渡ると同時に、テルミナを含む天使兵たちは、バタバタと倒れるように眠りについていく。
最後まで抵抗しようと試みていたオニニギノミコトも、眠気に負けてしまったようで、暫くフラフラと頭を振った後、その場に倒れこむように深い眠りについた。

ポチとエンマは 生命体ではないのだろうか、それとも眠らずともいい体だからだろうか、意識がはっきりとしたままであった。


「何が起きたんだニャン?」

「さ、さあ?
 でも、今のうちにテルミナを連れて逃げ出すニャン!
 エンマ、指標玉を起動させるニャン!」

「任せろニャン!」


(ジャスさん、あとは任せたニャン。)

エンマとポチは、深く傷ついているテルミナを担ぐと、そのまま指標玉を起動して魔王城へと帰還していった。
その場に残った オニニギノミコトや天使兵は、深い眠りについたまま目を覚ます気配がない。
そんな彼らの間を ゆっくりと歩く使い魔がいた。


「エイルシッド、この世界は 君たちの望んだ世界に変わりつつあるようだよ。」



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