【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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大魔王

043・ゴリアテ

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【ゴリアテ VS バビロン】


激しく殴り合うゴリアテとバビロン。
お互いに殴り合い傷を負うのだが、すぐにその傷が癒えていく。

血を分けた姉弟だったからだろうか、奇しくも同じ能力があるようだ。


「お前も 超回復能力を持っているみたいね。
 だけど、お前の能力程度では、わたくしの敵ではないようね。」

「だから何だ!
 貴様だけには負けない!」

バビロンの言葉どおり、徐々に回復が間に合わなくなり、傷が増え始めるゴリアテ。
しかし、ゴリアテは 頭に血が昇っているのか、攻撃を止めようとしない、それどころか回復に充てる魔力を攻撃に回し始めた。


「やはり お前は、おろかなる愚弟ですわね。」


バビロンは ゴリアテの渾身の攻撃を真正面から受けても、その傷を瞬時に回復していく。
それに加え、回復能力が弱くなったゴリアテに対し、着実にダメージを与えている。


「やはり、愚弟は愚弟。
 わたくしの敵ではないようですわね。
 消滅する前に教えてくださいませんか?
 ・
 ・
 ・
 その手で子を絞め殺した感覚はどうだったかしら?
 その手で妻を刺し殺した感覚はどうだったかしら?
 愛した市民に裏切られ、毒で苦しみ最期を迎えたとき、どんな気持ちだったのかしら?
 お前が 苦悶する姿は とても滑稽でした。
 是非、その時の心情を聞いておきたいものですわ。」


「そんなに知りたいか。
 なら、貴様に教えてやろう。
 ・
 ・
 ・
 俺が何を考え、何を望み、何を願って死んでいったのかを。」


ゴリアテは 攻撃の手を止める。
バビロンも、その美しい顔に残虐な笑みを浮かべながら、攻撃を止める。


「俺は・・・。
 最愛の子を絞め殺した時、この手に伝わる命の鼓動が終わりを告げる瞬間、俺の感覚が無くなるのを感じた。
 最愛の妻を刺し殺した時、俺の腕の中、笑顔で逝った妻が冷たくなるとき、俺の感情が無くなるのを感じた。
 俺の最期、毒を盛られていたことも知っていた。
 しかし、俺の仕打ちを考えれば当然と受け入れ、死を覚悟することができた。
 ・
 ・
 ・
 俺は、俺を陥れた貴様のことを考えていた。
 俺は、貴様を討ち滅ぼす力を望んでいた。
 俺は・・・。」


ゴリアテの言葉を遮り、バビロンが笑いながら話し出す。

「うふふっ、
 わたくしのことを考えていてくれたなんて、愚弟なりに正しい行いですわね。
 だけど、わたくしを討ち滅ぼす力・・・残念だけど、お前にそれは ありませんわ。」



「そうだな。
 いまの俺に、お前を討ち滅ぼす力はないだろう。」

「よく理解しているじゃない。」


「あくまで、いまの俺では力不足だというだけだ。
 ・
 ・
 ・
 俺は 死の直前に願ったことがある。
 もし叶うのであれば、俺が殺した子や妻の魂を救ってほしい。
 俺が命じ、迫害にあい死んでいった ローマ市民を救ってほしい。
 それが叶うのであれば、俺は、神に仇名す悪魔。
 原初の竜の血を引くバビロンを滅ぼすために、俺の魂も差し出すと。」


「神に仇名す悪魔・・・。
 この天使バビロンに向かって言っていいセリフではないですわよ。
 まさに愚弟。もっとも憎らしい存在ですわね。
 残念ですが、お前の最期の望みも願いも叶わなかったようですわね。」




天使バビロンは、拳を強く握ると その拳に力を集約しはじめた。

「おろかなる愚弟、ネロ。
 これで最期になるでしょう。」

「ああ、コレが最期になる。」


ゴリアテも、拳を握ると、その拳に力を集約し始める。


「お前如きが、わたくしに本気で勝てるとでも?」









ゴリアテは ニヤリと笑みを浮かべると、その拳を自身の胸に打ち付け、自身の心臓を取り出した。


「な!
 何を!!?」


「言っただろ、これで最期だって。
 ・
 ・
 ・
 俺の身を消滅の節から救い出してくれた主、ラースよ。
 いまが盟約の時、俺の魂と引き換えに 共に古代種の血を引く、我が姉、バビロンを討ち滅ぼしたまえ!」


ゴリアテが自身の心臓を握りつぶすと同時に、空に巨大な門が現れた。

「ら、ラース!!!
 ま、待ってくださいネロ、まだ、わたくしは・・・!」

「・・・もう、
 ・・・遅い。」


巨大な門は、その扉をゆっくりと開け始める。
すると、中から無数の手が伸びてくる。
その手は、動かなくなったゴリアテと 逃げ惑うバビロンに襲い掛かる。

「い、いや、離しなさい!
 わたくしは、まだ死んでいない!
 命を保持したまま天使へと昇華したのです!
 ・
 ・
 ・
 ラース様、お願いします。
 まだ、まだなのです。
 この世界を支配する目的を忘れたわけではありません、何か手違いがあっただけです。
 決して、姉弟で邪魔をしあっていた訳では、お願いします。
 お願いします。
 お願いします。
 お願いします。
 わたくしを、赦して下さいませ!
 わ、わたくしをゆ・・・。」


巨大な門から伸びてきた無数の手がバビロンを捕らえ、ゴリアテと共に門の内側へと引きずり込んでいく。
無数の手は 2人を取り込むと、その巨大な門を閉め、徐々に消えていった。

空に突如現れた 恐ろしい門に、天使兵も悪魔たちも、全てが争いをやめ、動きを止めていた。
周囲は、恐ろしいまでの静寂に包まれていた。




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