【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

文字の大きさ
46 / 58
大魔王

043・ゴリアテ

しおりを挟む
【ゴリアテ VS バビロン】


激しく殴り合うゴリアテとバビロン。
お互いに殴り合い傷を負うのだが、すぐにその傷が癒えていく。

血を分けた姉弟だったからだろうか、奇しくも同じ能力があるようだ。


「お前も 超回復能力を持っているみたいね。
 だけど、お前の能力程度では、わたくしの敵ではないようね。」

「だから何だ!
 貴様だけには負けない!」

バビロンの言葉どおり、徐々に回復が間に合わなくなり、傷が増え始めるゴリアテ。
しかし、ゴリアテは 頭に血が昇っているのか、攻撃を止めようとしない、それどころか回復に充てる魔力を攻撃に回し始めた。


「やはり お前は、おろかなる愚弟ですわね。」


バビロンは ゴリアテの渾身の攻撃を真正面から受けても、その傷を瞬時に回復していく。
それに加え、回復能力が弱くなったゴリアテに対し、着実にダメージを与えている。


「やはり、愚弟は愚弟。
 わたくしの敵ではないようですわね。
 消滅する前に教えてくださいませんか?
 ・
 ・
 ・
 その手で子を絞め殺した感覚はどうだったかしら?
 その手で妻を刺し殺した感覚はどうだったかしら?
 愛した市民に裏切られ、毒で苦しみ最期を迎えたとき、どんな気持ちだったのかしら?
 お前が 苦悶する姿は とても滑稽でした。
 是非、その時の心情を聞いておきたいものですわ。」


「そんなに知りたいか。
 なら、貴様に教えてやろう。
 ・
 ・
 ・
 俺が何を考え、何を望み、何を願って死んでいったのかを。」


ゴリアテは 攻撃の手を止める。
バビロンも、その美しい顔に残虐な笑みを浮かべながら、攻撃を止める。


「俺は・・・。
 最愛の子を絞め殺した時、この手に伝わる命の鼓動が終わりを告げる瞬間、俺の感覚が無くなるのを感じた。
 最愛の妻を刺し殺した時、俺の腕の中、笑顔で逝った妻が冷たくなるとき、俺の感情が無くなるのを感じた。
 俺の最期、毒を盛られていたことも知っていた。
 しかし、俺の仕打ちを考えれば当然と受け入れ、死を覚悟することができた。
 ・
 ・
 ・
 俺は、俺を陥れた貴様のことを考えていた。
 俺は、貴様を討ち滅ぼす力を望んでいた。
 俺は・・・。」


ゴリアテの言葉を遮り、バビロンが笑いながら話し出す。

「うふふっ、
 わたくしのことを考えていてくれたなんて、愚弟なりに正しい行いですわね。
 だけど、わたくしを討ち滅ぼす力・・・残念だけど、お前にそれは ありませんわ。」



「そうだな。
 いまの俺に、お前を討ち滅ぼす力はないだろう。」

「よく理解しているじゃない。」


「あくまで、いまの俺では力不足だというだけだ。
 ・
 ・
 ・
 俺は 死の直前に願ったことがある。
 もし叶うのであれば、俺が殺した子や妻の魂を救ってほしい。
 俺が命じ、迫害にあい死んでいった ローマ市民を救ってほしい。
 それが叶うのであれば、俺は、神に仇名す悪魔。
 原初の竜の血を引くバビロンを滅ぼすために、俺の魂も差し出すと。」


「神に仇名す悪魔・・・。
 この天使バビロンに向かって言っていいセリフではないですわよ。
 まさに愚弟。もっとも憎らしい存在ですわね。
 残念ですが、お前の最期の望みも願いも叶わなかったようですわね。」




天使バビロンは、拳を強く握ると その拳に力を集約しはじめた。

「おろかなる愚弟、ネロ。
 これで最期になるでしょう。」

「ああ、コレが最期になる。」


ゴリアテも、拳を握ると、その拳に力を集約し始める。


「お前如きが、わたくしに本気で勝てるとでも?」









ゴリアテは ニヤリと笑みを浮かべると、その拳を自身の胸に打ち付け、自身の心臓を取り出した。


「な!
 何を!!?」


「言っただろ、これで最期だって。
 ・
 ・
 ・
 俺の身を消滅の節から救い出してくれた主、ラースよ。
 いまが盟約の時、俺の魂と引き換えに 共に古代種の血を引く、我が姉、バビロンを討ち滅ぼしたまえ!」


ゴリアテが自身の心臓を握りつぶすと同時に、空に巨大な門が現れた。

「ら、ラース!!!
 ま、待ってくださいネロ、まだ、わたくしは・・・!」

「・・・もう、
 ・・・遅い。」


巨大な門は、その扉をゆっくりと開け始める。
すると、中から無数の手が伸びてくる。
その手は、動かなくなったゴリアテと 逃げ惑うバビロンに襲い掛かる。

「い、いや、離しなさい!
 わたくしは、まだ死んでいない!
 命を保持したまま天使へと昇華したのです!
 ・
 ・
 ・
 ラース様、お願いします。
 まだ、まだなのです。
 この世界を支配する目的を忘れたわけではありません、何か手違いがあっただけです。
 決して、姉弟で邪魔をしあっていた訳では、お願いします。
 お願いします。
 お願いします。
 お願いします。
 わたくしを、赦して下さいませ!
 わ、わたくしをゆ・・・。」


巨大な門から伸びてきた無数の手がバビロンを捕らえ、ゴリアテと共に門の内側へと引きずり込んでいく。
無数の手は 2人を取り込むと、その巨大な門を閉め、徐々に消えていった。

空に突如現れた 恐ろしい門に、天使兵も悪魔たちも、全てが争いをやめ、動きを止めていた。
周囲は、恐ろしいまでの静寂に包まれていた。




→45へ


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...