君を幸せにする、そんな言葉を信じた私が馬鹿だった

白羽天使

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男女の仲

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 卒業まで一か月と迫り、沈んだ私を見かねた両親がサーカスに連れていってくれた。
 サーカスは移動式のテントのようなものでやるのだと想像していたが、見に行ったのは、サーカスというより大道芸といった感じで、噴水の前の開けた道の上で、パフォーマンスが行われた。

 見た事もないような華麗なマジックに、思わず引いてしまうほどに軟体な人間。
 挙句の果てには動物まで操り始めて、私はすっかりその世界観に引き込まれていた。
 隣を見ると、両親も手を打って喜んでいるようで、私の視線に気づかないくらい熱中していた。
 
 と、両親の先にフロイドとペティの姿を発見した。
 見間違いかと思ってよく見てみると、確かにその二人だった。
 嬉しそうに顔を見合わせた二人は、何かを話した後、どこかに行ってしまう。

 サーカスも終盤の大一番だというのに、二人はどこへ行くのだろう?
 しかもなんで二人が一緒にいるのだろう?
 疑問に思った私は、両親に気づかれないようにそっとその場から離れると、二人の後を追った。

 ……二人は手を繋ぎ街を歩いていた。
 それを見ているだけで心がズキズキと痛んだが、フロイドとペティが男女の仲である確証には至らないと思った。
 
 そのまま二人の後を追っていくと、程なくして二人は路地裏に入った。
 私も慎重に路地裏に入り、見つからないようにそっと歩く。

「ペティ……ダメだ。もう我慢できないよ」

「ふふっ、全く困った人ね……」

 全く人気がなくなった所まで来ると、二人は立ち止まり、見つめ合った。
 私は壊れた看板の後ろに身を隠し、そっと二人の様子を伺う。

「フロイド。でもあなたはアリスの婚約者でしょう? 彼女を裏切ってしまっていいの?」

「何を今更言っているんだいペティ。最初に僕は誘ってきたのは君の方だろう。それにアリスの筋骨隆々とした肉体なんて興味ないよ。僕は君の女性らしい身体が好きなんだ……」

 フロイドはそう言うと、ペティにキスをした。
 
 ……は?
 何をしているの?
 
 二人が男女の仲になっているかもしれないとは予測はついていた。
 しかし頭の中で考えるのと実際に見るのとでは、何倍も違う。
 私はその場から飛び出しそうになる気持ちを必死で押さえ、二人の逢瀬を見届ける。

「もうフロイドったら、いつも突然なんだから……そんなに私のことが好きなの?」

「当たり前だろ。君の方がアリスなんかよりも数倍……いや、数百倍好きだよ。だからもっと僕に癒しをくれ」

「ふふ、いいわよ。アリスなんかじゃ満足できない身体にしてあげる」

 そこからの二人の逢瀬は思わず目を逸らしたくなるものだった。
 獣のように絡み合い、愛し合う二人を見て、私は熱い涙を流す。

 どうしてこんな人達を信じてしまったのだろう。
 二人はとっくに男女の仲だったのだ。
 気づかない私を他所に愛し合っていたのだ。

 二人は行為を終えると、来た道とは反対の道を歩いていった。
 もちろんぎゅっと手を繋いで。
 私は隠れていた看板から出ると、路地裏を出るために、来た道を戻る。

「お、お姉ちゃん。俺と遊ばない? ねえねえいいでしょ?」

「……は?」

 酔っぱらった男が近づいてくるが、私は凍てつくような眼光を飛ばす。
 男は幽霊でも見た様に全身を震わすと「ご、ごめんなさい!」と走り去っていく。
 私は路地裏を出ると、サーカスが行われていた場所へ向かって歩く。
 痛いほどに拳を握りしめながら……
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