【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

文字の大きさ
117 / 687
第四章 モントルビアの王宮

発見

しおりを挟む
暁斗が外に出た、という報告に立ち上がったのは、アレクたちも一緒だった。

「何をやっているんだ……!」
アレクが小さく毒づいて集中する。
暁斗の気配はすぐに見つかった。
何かに向かって、一直線に走っている。
それは……。

「「――リィカ!?」」
考えるよりも先に呼んだ名前は、バルと見事に声がそろった。

アレクが駆け出す。
状況が読めずに困惑している泰基とユーリに、バルが指示を出した。

「タイキさんは、アレクに付いて行ってくれ! リィカがいる! アキトもそこに向かってる! ユーリはおれと一緒に来い!」
「――分かった」

泰基は短く返事をして、走り出した。
詳しい事はいい。リィカがいるのなら、そこに行くだけだ。


※ ※ ※


ベネット公爵は、混乱していた。

勇者がなかなか厄介だった。
酒を飲まない、と言っていた事はもちろん知っていた。
しかし、出した。

どうせ分からない、と思ったのもある。
そして、酔った所に女を送り込めば、簡単に既成事実を作れるだろうとも考えた。

勇者が手を出してしまえば、後はそれをネタに旅に連れて行くように言うだけだ。勇者一行に自らの手の内の者がいれば、いくらでも勇者一行を操ることができるだろう。
そう考えていたのに、簡単に崩れ去った。

そしてさらに、勇者一行がこの場からいなくなった。
リィカとは、例の小娘の名前のはず。
アレがいるのは敷地の外れだ。何がどうして、いることがばれたのかが分からない。

あの小娘は、今夜、王太子殿下が犯して遊ぶ予定の娘なのだ。
ここにきて、なくすわけにはいかない。

「勇者様方をお止めしろ! 屋敷に連れ戻すのだ!」
ヒステリックに、ベネット公爵は叫んだ。


※ ※ ※


小屋の中、リィカは壁に寄りかかりながら、今後の対策を考えていた。
どうやって、王太子から逃げ切るか。
みんなと合流するか。

しかし、考えようとしても、思考がまとまらない。
気が付けば、ボーッとしている。意識が飛んでしまう。
眠れていないことが原因か。食事が取れていないことが原因か。
焦りがあるだけで、その先へ思考が進んでいかなかった。

ドンドン

強く扉が叩かれて、リィカはビクッとする。
(王太子たちが、来たの?)
しかし、聞こえた声は懐かしく、そして意外だった。

「リィカ! ここにいるの!?」
「……暁斗?」

ポツリとつぶやく。
カタン、と閂の外れる音がする。扉が開いた。
「見つけた! リィカ……!」
そこにいたのは、泣き出しそうな顔をした暁斗だった。


※ ※ ※


「バル、僕たちは行かないんですか!?」
「行くさ。でも、リィカを見つけられたんだ。ここに留まる理由もねぇだろ。全員の荷物を持って、リィカと一緒に出てこうぜ」
「……僕も、荷物持ちなんですね」
ユーリはがっくり肩を落とした。

バルが、アレクと暁斗の。ユーリが泰基の荷物を持ったが、外へ向かう通路はこの屋敷の兵士が塞いでしまった。
「窓から行こうぜ」
簡単にバルが言うが、ユーリは目をむいた。

「待って下さい! ここ、三階ですよ!?」
「大丈夫だろ」
「僕をあなたと一緒にしないで下さいよ!」
「じゃあどうすんだよ。あの兵士ども、吹っ飛ばすか?」

別にそれならそれでもいい、とあっさり言われて、ユーリは首を横に振る。
暴力的なことは、しないほうがいい。

「――ああ、あの手がありますね」
ユーリは窓を開けて、魔法を唱えた。

「《結界バリア》」
すると、窓の下に透明の階段が現れて、それが地面にまで続いている。

「これでよし、と。行きましょう」
ユーリが、窓から《結界《バリア》》で作った階段に乗る。
それに続きながら、バルがぼやいた。

「おい、何だこれ」
「何と言われましても、《結界バリア》ですけど」
「こんな形の《結界バリア》があるか!?」
「そんなの、イメージでどうにでもなります」
バルがため息をついた。

「最近、薄々感じちゃいたが……、お前の魔法、リィカの非常識に近づいてるよな」
「失礼ですよ、それは! 僕のは至って常識の範囲内じゃないですか!」
バルは、どこが常識だよ、と心の中だけで反論した。


地面に降りて上を見れば、異変に気付いたらしい兵士が窓から出ようとしていた。
それを見たユーリが、少し笑って《結界バリア》を消し去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...