【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十四章 魔国

魔王の城へ

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 全員が、誰も何も言わないまま、魔王が消えた空間をただ見つめている。流れる無言の時間を止めたのは、暁斗の一言だった。

「みんな、魔王がいる城はあっちだって。行こう」

 躊躇わず、歩き出す。
 驚いて、慌てて後を追いながら、リィカが暁斗の横顔をのぞき見ると、真剣な表情をしていた。

「誓約だって、そう言ってたんだ」
「え?」
「魔王との、誓約。魔王と何かを約束する代わりに、オレたちは魔族の情報を広めない。どんな力を持っているのかとか、魔国で見た事とか、そう言った事を何も言わないっていう約束を、代々の勇者と魔王は交わしてたって」
「……………!」

 リィカは驚いて足を止めそうになる。他のメンバーの視線も集中しているが、暁斗は気にせずに歩き続けた。

「行かなきゃ分からないなら、行く。何を約束するのか。約束しなきゃいけないのか、しなくてもいいのか。何で代々の勇者はそんな約束することを選んだのか」

 そこまで言って、暁斗は一瞬口を噤んだが、すぐに言葉を続けた。

「何で約束を交わすことができるのに、人間と魔族の戦いは続いているのか。そもそも、何で戦ってるのか、勇者が召喚されてるのか。――行かなきゃ、本当のことは分からないから」

 暁斗は真っ直ぐ前を見て、足を進めていった。


※ ※ ※


(なぜ、戦っているのか、か……)

 暁斗の後ろ姿を見ながら、アレクは心の中で反芻する。
 そんな事を考えたことなどなかった。

 魔王はおよそ二百年に一度誕生する。
 勇者が召喚されて、聖剣グラムと共に魔族を倒し、魔王を倒す。その事実に、なぜ、という疑問を挟むことはなかったのだ。

 アレクは、正直に言えば打ちのめされていた。
 魔国の、食うことすらままならない現状に、このまま戦うのが良いことなのかどうか、分からなくなっていた。

 自らの父と兄を思い出す。民たちの生活を守るために、いつも忙しくしている。自分はそれを手伝うこともできなかった。

 魔王のしていることも、同じじゃないんだろうか。この地に暮らす魔族たちの命を守るために、戦っているんだろうか。

(――しっかりしろ、俺)

 ここで魔族に同情して、足を止めるわけにはいかない。
 暁斗の言うとおりだ。本当のことを、知らなければならない。


※ ※ ※


 それから、誰の襲撃を受けることもなくたどり着いた城を、見上げる。立派ではあるが、それでも人間の地にある城に比べれば、ずいぶんと貧相に見える。

 眼前にある門は、入れと言わんばかりに大きく開かれていた。

「行こう」

 暁斗が一言言って、迷うことなく中に入っていく。
 聖剣の柄に、手をかけた。

「来たぞ! 放て!」

 その号令と共に、多数の魔法が放たれた。暁斗が剣を抜こうとして……それを押さえたのは、リィカだった。

「《炎の竜巻ファイヤートルネード》!」

 リィカの放った混成魔法は放たれた魔法を打ち消し、さらに奥にいた魔族たちを巻き込み、倒していく。

「ひぇ……」

 一発で大半の魔族を倒し、残った魔族たちも戦意を喪失して座り込む中、リィカは静かに告げた。

「わたしは、魔族にどんな事情があったとしても、暁斗と泰基の力になるって決めてるから。抱えている事情に同情することはあっても、それで戦うのをやめたりしない」

 その宣言を聞いて、暁斗は目をパチパチさせる。
 嬉しそうに頷いた。

「うん、リィカ、ありがとう」

 暁斗が駆け出し、リィカも続く。
 その後を、他の四人も追いかけたのだった。


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