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第十四章 魔国
魔王ホルクス
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突然現れた魔王に、勇者一行の緊張は高まるばかりだ。だが、当の魔王は平然としている。
「さて、我が国内をコソコソ動いていたようだったが、感想はどうだ?」
「……………!」
一行が驚く中、いち早く驚きから立ち直ったアレクが低い声で問いかけた。
「なぜ、それを気付いていながら、放置した? 俺たちが魔族たちに危害を加えるとは思わなかったのか?」
「思わぬな。人の地で出会った、戦闘力を持たぬ魔族たちに何もしなかったのであろう? 少なくとも、魔族だからという理由一つで害すことはないと、そう判断した」
アレクはギリッと歯ぎしりする。
確かにその通りだろう。だが、それでも万が一と言うこともあるだろうに、放置したことに腹が立つ。
「それに、我が国の現状を知りたかったのだろう? それを邪魔するつもりはないからな」
アレクが何かを言う前に言った魔王の言葉に、息を呑んだ。
「見ての通りだ。この魔国は貧しい。まともに食べるものさえ取る事はできぬ。だがそれでも、時間が経てば人数は増える。食う物がないのに、住まう数は増える。食うために、人数を減らさねばならぬ」
人間の地で死ぬために行った、という言葉を思い出す。
「我が城へ来い。ここで暴れるわけにはいかぬからな。すべてを知りたくば、我を倒して見せろ」
「まてっ……!」
アレクが叫ぶ。
だが、その時には魔王の姿は、なかった。
※ ※ ※
「魔王様、ご無事で何よりです」
「単に、勇者どもに挨拶に行っただけだ」
「ですから、ご無事で何より、と申し上げました」
目の前で頭を下げている男は。ジャダーカの腹心であるクナムだ。正直に言えば、この男が自分の側にいることが意外だ、というのが魔王の本音だ。
「てっきり、ジャダーカの後を追うのかと思っていたが」
「悩みましたが、やめました。あの方にとって、私が側にいたところで足手まといにしかなりませんから。――人間とか魔族とか関係なく、ただ魔法の可能性を追求するために動けるのが、羨ましいです」
「そうだな」
ジャダーカに、魔国を変える力も、そのつもりもないだろう。
ただもしかしたら。人間の女性に恋をしたジャダーカは、人間と魔族の精神的な垣根を、簡単に越えてみせるのかもしれない。
「誰が残った?」
魔王の簡潔な問いに、クナムは顔を歪めた。
少し責めるような口調で答える。
「魔王様が自由にしろ、などと仰るから、ずいぶん人数が少ないですよ。カストル様に付いていった者の方が多いです」
幹部クラスで残ったのは、クナムに加えてハルバードを持つポタルゴスだけだ。
その下の階層になると残っている者の方が多いのだが、そんなに人数がいるわけでもなく、今となっては勇者一行の敵になれるほどではない。
オルフはカストルについていった。
バトルアックスを持つラムポーン、モーニングスターを持つディーノスも同様だ。当然ながら、ダランもカストルと一緒にいる。
「ポタルゴスが残ったか。意外だったな。あいつは兄者と共に行くと思っていた」
「再び勇者と戦いたかったのです、魔王様」
割り込んできた声に視線を向ければ、そこにいたのはポタルゴスだった。魔王がフッと笑う。
「そうか。好きにしろ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるのを、魔王は黙って見る。
魔王は知っていた。
ポタルゴスが親友と呼べる男と結界内で戦い、そして相手を殺したことを。だからこそ結界を憎み、そして死に場所を求めている。
「……この国は、狂っている」
魔王は、独りごちる。
狂っていると知りながらも、代々の魔王は同じ事を繰り返してきた。
下手なことをしなくても、同じ事を繰り返せば、少なくとも魔族が滅びることはないからだ。
そして今、自分も代々の魔王に習い、同じ事をしようとしている。たった一つ、兄を殺さなかったことを除いて。
だから、魔王にとって、兄の存在だけが希望なのだ。
「さて、我が国内をコソコソ動いていたようだったが、感想はどうだ?」
「……………!」
一行が驚く中、いち早く驚きから立ち直ったアレクが低い声で問いかけた。
「なぜ、それを気付いていながら、放置した? 俺たちが魔族たちに危害を加えるとは思わなかったのか?」
「思わぬな。人の地で出会った、戦闘力を持たぬ魔族たちに何もしなかったのであろう? 少なくとも、魔族だからという理由一つで害すことはないと、そう判断した」
アレクはギリッと歯ぎしりする。
確かにその通りだろう。だが、それでも万が一と言うこともあるだろうに、放置したことに腹が立つ。
「それに、我が国の現状を知りたかったのだろう? それを邪魔するつもりはないからな」
アレクが何かを言う前に言った魔王の言葉に、息を呑んだ。
「見ての通りだ。この魔国は貧しい。まともに食べるものさえ取る事はできぬ。だがそれでも、時間が経てば人数は増える。食う物がないのに、住まう数は増える。食うために、人数を減らさねばならぬ」
人間の地で死ぬために行った、という言葉を思い出す。
「我が城へ来い。ここで暴れるわけにはいかぬからな。すべてを知りたくば、我を倒して見せろ」
「まてっ……!」
アレクが叫ぶ。
だが、その時には魔王の姿は、なかった。
※ ※ ※
「魔王様、ご無事で何よりです」
「単に、勇者どもに挨拶に行っただけだ」
「ですから、ご無事で何より、と申し上げました」
目の前で頭を下げている男は。ジャダーカの腹心であるクナムだ。正直に言えば、この男が自分の側にいることが意外だ、というのが魔王の本音だ。
「てっきり、ジャダーカの後を追うのかと思っていたが」
「悩みましたが、やめました。あの方にとって、私が側にいたところで足手まといにしかなりませんから。――人間とか魔族とか関係なく、ただ魔法の可能性を追求するために動けるのが、羨ましいです」
「そうだな」
ジャダーカに、魔国を変える力も、そのつもりもないだろう。
ただもしかしたら。人間の女性に恋をしたジャダーカは、人間と魔族の精神的な垣根を、簡単に越えてみせるのかもしれない。
「誰が残った?」
魔王の簡潔な問いに、クナムは顔を歪めた。
少し責めるような口調で答える。
「魔王様が自由にしろ、などと仰るから、ずいぶん人数が少ないですよ。カストル様に付いていった者の方が多いです」
幹部クラスで残ったのは、クナムに加えてハルバードを持つポタルゴスだけだ。
その下の階層になると残っている者の方が多いのだが、そんなに人数がいるわけでもなく、今となっては勇者一行の敵になれるほどではない。
オルフはカストルについていった。
バトルアックスを持つラムポーン、モーニングスターを持つディーノスも同様だ。当然ながら、ダランもカストルと一緒にいる。
「ポタルゴスが残ったか。意外だったな。あいつは兄者と共に行くと思っていた」
「再び勇者と戦いたかったのです、魔王様」
割り込んできた声に視線を向ければ、そこにいたのはポタルゴスだった。魔王がフッと笑う。
「そうか。好きにしろ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるのを、魔王は黙って見る。
魔王は知っていた。
ポタルゴスが親友と呼べる男と結界内で戦い、そして相手を殺したことを。だからこそ結界を憎み、そして死に場所を求めている。
「……この国は、狂っている」
魔王は、独りごちる。
狂っていると知りながらも、代々の魔王は同じ事を繰り返してきた。
下手なことをしなくても、同じ事を繰り返せば、少なくとも魔族が滅びることはないからだ。
そして今、自分も代々の魔王に習い、同じ事をしようとしている。たった一つ、兄を殺さなかったことを除いて。
だから、魔王にとって、兄の存在だけが希望なのだ。
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