187 / 251
187
しおりを挟む暖かい……温かい……?
なんだろう……心地よい温かさ……また小鳥やリスが集まって来たのかな?
フフフッ、これじゃぁまだ動けないなぁ……もう少しこのままでいよう……
フワァー……とあくびをする。木の枝って意外と寝心地がいいみたい。枝といってもこれだけの大木になるとかなり太いものになるからか、背中もお尻も痛くない。
むしろ心地よくて……木というよりまるで人の膝の上に……いる……よう……な……
いるっ!! だ、誰かいるっ!
眠気も覚めて頭もハッキリしてきたけれど、どうしよう……目を開けるのが怖いっ……
寝ぼけているふりをして離れようか……
そんな私の緊張を感じとったのか
「トウカ? 起きたのか?」
この声は……ノバルト?
「ノバルト……?」
目を開けると日の光とノバルトの整った顔が目に入り眩しいっ!
よし、一旦目を閉じて落ち着こう。
ゆっくりと目を開けるとやっぱりノバルトが微笑んでいる。
「こんなところで寝ていたら危ないよ」
大きな木の上で結構な高さだ……確かに危ない。
いつの間にか座ったまま横抱きにされてノバルトの胸にもたれて寝ていたのか……どのくらい寝ていた……?
「ご、ごめん、ノバルト。重いよね、足とか背中痛いんじゃ……」
ヨダレの確認をするために口元を拭いながら慌てる私を見てクスクスと笑うノバルト。
「気持ちよく眠れたか?」
それはもう……心地いいし安心する。なんて恥ずかしくて言えないからコクリ、と頷く。
「それは良かった」
優しく頭を撫でられる。
それにしてもノバルトはどうして……
「どうしてここに……?」
どうしてだろうね? と微笑むノバルト……
「トウカがここにいるからかな」
そう言って優しく抱き締められると……私の胸も締めつけられる。この気持ち……
いろいろな事を考えずにこの気持ちをノバルトに伝えてしまいたい衝動に駆られる。
口を開きかけるとノバルトが先に耳元で囁く。
「トウカ、あそこを見て」
……何? ノバルトの指差す方を見る。
日が陰り湿った空気が流れてくる。さっきまで天気がよかったのに……
遠くに黒いものが見える。
「……魔獣……」
魔獣化してしまったらしい動物が……一体。
「……ノシュカトを連れてきた方がいい?」
研究は進んでいるはずだけれど……
「まだその段階ではないよ」
無駄に苦しませてしまうだけだ、と。
それなら……
「私、行ってくる」
そう言って立ち上がろうとすると手をとられ抱き上げられて
「一緒に行く」
と、ついさっきまでこの胸を借りて寝ていたけれど……鼓動が早くなる……
熱くなった私の頬に雨が当たる。雨が降りだしてきた……
「ノバルト……あの……」
下ろしてもらおうと声を掛けたけれど優しく見つめられて……と、とりあえず、
「あ、雨に濡れないように結界を張るね」
ありがとう、と微笑んでから私を横抱きにしたままフワリと浮かび魔獣の元へ向かうノバルト。
魔獣化してしまったコは長い間彷徨っていたのかボロボロだ……元はキツネだったのか。
私の知っているキツネよりも大きいけれど片耳がなく尻尾も途中で千切れている。
皮膚も所々剥がれていて……他にも……痛々しい……
ノバルトにお礼を言い地面に下ろしてもらう。
山の家に遊びに来るキツネさん親子を思い出す。
子キツネさんがかかった罠は古いもので密猟者に連れて行かれることはなかったかもしれないけれどノシュカトが助けなければ死んでしまっていたかもしれない。
このコには……何があったのだろう……
「何があったのだろうね」
ノバルトも同じことを……
私の気配を感じてここまで来てくれたのだろうか。足が小刻みに震えている。きっともうすぐ歩けなくなる……
グルグルと喉を鳴らしながらじっとこちらを見つめている。
手を伸ばして……そっと触れる。
ノバルトが後ろから私を抱きしめてこのコの悲しみと悔しさと怒りを一緒に受け止めてくれる……
キラキラと光に包まれたキツネは一瞬元の可愛い姿に戻り……消えていく。
このコにも大切に思う存在がいて大切に思われてもいたのだろう……
いつまでも癒されない気持ちと共にどれくらい彷徨っていたのか……胸が苦しくなる。
ポロポロと涙が溢れる。泣きたくはないけれど溢れてくる。
ノバルトに気づかれないように……見られないように気をつけていたのにノバルトは後ろから抱きしめていた腕をほどいて私の前に来て再び抱きしめる。
厚い胸板に広い肩幅……背も高くてすっぽりと私を包んでくれる感覚に安心する…………
温かい胸からノバルトの心臓の音を聞いていると強ばった身体の力が抜けて落ち着いてくる……
「少し……雨に濡れてしまったね」
私の髪に触れながら静かに呟くノバルト……
「ノバルトの服は……私の涙で濡れている」
お互い眉を下げて微笑みあい……
「城へ戻ろうか」
ノバルトがそう言いまた私を抱き上げる。
飛んで帰るのだから抱き上げなくても……と思ったけれど安心するこの温かさに身を預けることにした。
雨が強くなってきた……フワリと浮かびお城へ向かう間、ノバルトの温かい腕の中私は再び目を閉じた…………
目を覚ますと……ベッドに寝ていた。私が起きた気配に気が付いた三毛猫さんが近づいてくる。
三毛猫さんがいるということは私の部屋……ノバルトが運んでくれたのか……
着替えもしている……これはメイドさんがしてくれたんだよね……
雨が降り続いているみたい。広い部屋に雨音が響いている……雨の音って不思議と落ち着く。
お茶をする約束をしていたけれどもう夕食時かな……?
一度クリーンをかけてさっぱりしてから
「三毛猫さん」
三毛猫さんが膝の上に乗る。
天気がよくなったら一緒にフロラの木を見に行こうね、と撫でているとノックの音が聞こえた。
どうぞ、と返事をするとメイドさんが
「お目覚めですか? もうすぐお食事の用意が整います」
今夜は皆さん揃っての食事らしい……国王様と王妃様も一緒……ちょっと緊張するな。
用意してくれたドレスの着替えをメイドさんが手伝ってくれてメイクと髪のセットもしてくれた。
ノックがしてメイドさんがドアを開けると
「クロエ、準備はできたかしら」
一緒に行きましょう、とローズ様。
廊下を歩きながらローズ様と別れた後は何をしていたか聞かれたから歩き回っていたら皆さんに会ってご挨拶をしたことを話した。
最初は誰も私だと気が付かなかったのよ、とメイドさんに聞こえないようにこっそり言うとクスクスと笑うローズ様。
そういえば……ノバルトはどうだったのだろう? 起きた時はすでに……ダメだ……思い出すと顔が熱くなる……
食堂へ入りローズ様が隣の席を勧めてくれたので着席する。
ロイク殿下とセルジュ殿下、リアザイアとザイダイバの王族とリュカ様はすでに席に着いている。
国王と王妃様が席に着き全員揃うと食事が始まる。
「クロエさんはどちらのお国からの留学生だったかしら」
不意に王妃様から聞かれて細かい設定を聞いていなかったことに気が付く……私……どこから来たのだろう……
「リアザイアからですよ」
ニコリと微笑みノバルトが答えてくれる。
本当のことだ。
「まぁ、そうでしたの? 留学生は優秀な方ばかりだからローズとも仲良くしてくれて嬉しいわ」
本当は留学生ではないから優秀かどうかはさておき、こちらこそ仲良くしてくれて感謝です。
「そうなの! お母様、クロエは私が思いつかないような事を教えてくれるからお話をしていてとても楽しいわ」
私が思いついたことではないのだけれど……絵を描いただけというか……そこからいろいろと考えているのはローズ様だし……
周りを見るとレクラスの王族はそうかそうかと感心していて、ノバルトはリアザイアでもいろいろと貢献してくれています、とうちのコ自慢みたいな感じになっているし……
私の複雑な表情を見てセオドアは肩を震わせているし……
ノシュカトはなんか私以上に複雑な表情……どういうこと?
リュカ様は興味無し、という感じで食事を続けている……ブレないな。それはそれで安心する。
ノバルトが上手に話をそらしていってくれたお陰でその後は楽しく食事をすることができた。
13
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる