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ヴィアンド (4/5)
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……
やがて空が暗くなる頃、唸りだした風と無数の雨音が屋敷に響いた。
突然の通り雨のせいで、見えるはずの満月は雨雲に隠れてしまっている。
その時、玄関扉が音もなく開いてそこからロンドが侵入した。
「すげえ雨だ。邪魔するぜ」
言いながら扉を閉めた後、ゴツゴツと重たいブーツの足音をエントランスに響かせながら、薄暗い屋敷を灯りもつけず進んでいく。
「……レブ君いるか?」
闇の中へ呟くが返事は返ってこない。
辺りを見回しながら寝室に向かうと、少し開いたドアの向こうでロウソクの灯が薄っすらと揺れた。
それを確認したロンドがニタリと笑った瞬間、近くに雷が落ちる。
同時に風が吹き抜け、廊下の明かりがいっせいに消えた瞬間、ロンドは壁へ突き飛ばされた。
「ぐっ?!」
「これで何度目でしょうね」
「飲まなかったのか」
ロンドの背後には二つの赤い瞳が暗闇に浮かび光っていた。
「……化け物め」
ロンドの喉にあてられた鋭いナイフは、首の太い動脈の上をなぞった。凍り付いたように息を止めた彼の後ろで、低い声が囁く。
「数年は顔を見せるな」
……
通り雨が降る数時間前のこと、レブはフューネを呼び止めていた。
フューネの手にはワインボトルがあり、机にグラスが2つ並んでいる。
「どうしました?」
「あ、あの……」
言い終える前に、レブの瞳がじわりと濡れる。
「……怖いのですか?」
フューネはワインを置いてレブの方へしゃがむ。静かに背中をさすっているうちに、レブは小さな声を出した。
「……そのワインを飲んだらだめ」
「何か、ありました?」
「ロンドが渡してきたんだ。銀が入ってるって言ってた」
それを聞いて眉をしかめたフューネが、机に置いていたワインボトルを睨んだ。
ゆっくりと立ち上がり、暖炉の火を反射する真新しい瓶を再び手に取るとコルクを抜いて鼻を近づける。
「……ロンドめ、小細工を」
「昼間に彼が来てた。黙っててごめん」
レブは謝って小さく背中を丸める。
「レブ」
フューネは普段通りの穏やか声で語りかける。
近づいて再びしゃがむと、レブの顔を覗き込んだ。
「ああ、そんなに目を擦らないで。傷がつきますよ」
「う……」
レブの細い手首を撫でると、濡れた頬からゆっくり離していく。
「レブ、謝るのは私の方です」
顔を伏せたフューネが呟く。
「今の私は……魔法で見た目を変えているんです」
「……?」
「あなたを騙していたのは私の方なのです」
濡れたレブの瞳が揺れている。
フューネは立ち上がって窓へ視線を向けた。
「レブが明かしてくれたように、私も魔法を解きましょう」
フューネは少しすると、ミシリと音を立てた。徐々に形の変わる耳は尖っていき、大きな身体は青白い血管が浮き出ていく。
爪は鋭く、荒い息をするフューネがレブに振り返ると、その目はより深紅に輝いていた。
「……!!」
その姿を前にしたレブは言葉に詰まった。
血管の浮き出た顔は美しいとは言えず、更に口の両端から覗く鋭い牙は獣のようだ。
いつも青白く滑らかな肌も、今は冷たい陶器の色をしている。
「これが私です」
泣き止んだレブが震えているのを見て、フューネは真っ赤な瞳を閉じる。
「逃げなさい」
「……え?」
「追いかけませんから」
フューネはレブに背を向けたままじっと動かなくなった。
涙を拭いたレブはゆっくりと足を進めて、フューネへと近づいた。
「……フューネ」
とん、とレブの手がフューネの広い背中に触れる。
「ちょっとびっくりしたけど、大丈夫だよ」
「レブ、まだわかりませんか? この醜い姿が本当の私なのですよ」
「確かに見た目はちょっと怖いけど、同じ香りがするし」
「……」
「それに、ずっとずっと。フューネは俺を気づつけないようにしてくれてる」
レブは小さな手を動かし、そのままフューネに抱きついた。
「レ、レブ……?」
身体をびくりと震わせ、戸惑うフューネの声がする。それでもレブは背中に頭を当てて、ぎゅっと力を込めた。
「だから、俺。ここに居たい。もっと色んなフューネが見たい」
「けど……」
「フューネのこと、好きだよ」
静かな寝室で二人は互いに身を寄せた。
外では少し風がでてきたのか、ガタガタと窓ガラスが音を立て始めている。
じっとレブをみていたフューネは、ためらいながらも手のひらでレブの身体を触った。
「……ありがとう」
フューネの言葉に、レブは自分の腰に当てられたフューネの手の甲を握る。
驚きつつもその手を嬉しそうに見るフューネは、赤い瞳を細めた。
「レブは暖かいです」
言いながら目を閉じて、ぎゅっとレブを抱きしめ返した。
「もうじき日が沈む……早速、レブが欲しいところですが、その前に一言ロンドに伝えるとしましょう」
「ん。会うの?」
「ええ、少しだけ」
首を傾げるレブに優しい笑みを浮かべたフューネは、レブの頭をぽんぽんと撫でる。
やがて空が暗くなる頃、唸りだした風と無数の雨音が屋敷に響いた。
突然の通り雨のせいで、見えるはずの満月は雨雲に隠れてしまっている。
その時、玄関扉が音もなく開いてそこからロンドが侵入した。
「すげえ雨だ。邪魔するぜ」
言いながら扉を閉めた後、ゴツゴツと重たいブーツの足音をエントランスに響かせながら、薄暗い屋敷を灯りもつけず進んでいく。
「……レブ君いるか?」
闇の中へ呟くが返事は返ってこない。
辺りを見回しながら寝室に向かうと、少し開いたドアの向こうでロウソクの灯が薄っすらと揺れた。
それを確認したロンドがニタリと笑った瞬間、近くに雷が落ちる。
同時に風が吹き抜け、廊下の明かりがいっせいに消えた瞬間、ロンドは壁へ突き飛ばされた。
「ぐっ?!」
「これで何度目でしょうね」
「飲まなかったのか」
ロンドの背後には二つの赤い瞳が暗闇に浮かび光っていた。
「……化け物め」
ロンドの喉にあてられた鋭いナイフは、首の太い動脈の上をなぞった。凍り付いたように息を止めた彼の後ろで、低い声が囁く。
「数年は顔を見せるな」
……
通り雨が降る数時間前のこと、レブはフューネを呼び止めていた。
フューネの手にはワインボトルがあり、机にグラスが2つ並んでいる。
「どうしました?」
「あ、あの……」
言い終える前に、レブの瞳がじわりと濡れる。
「……怖いのですか?」
フューネはワインを置いてレブの方へしゃがむ。静かに背中をさすっているうちに、レブは小さな声を出した。
「……そのワインを飲んだらだめ」
「何か、ありました?」
「ロンドが渡してきたんだ。銀が入ってるって言ってた」
それを聞いて眉をしかめたフューネが、机に置いていたワインボトルを睨んだ。
ゆっくりと立ち上がり、暖炉の火を反射する真新しい瓶を再び手に取るとコルクを抜いて鼻を近づける。
「……ロンドめ、小細工を」
「昼間に彼が来てた。黙っててごめん」
レブは謝って小さく背中を丸める。
「レブ」
フューネは普段通りの穏やか声で語りかける。
近づいて再びしゃがむと、レブの顔を覗き込んだ。
「ああ、そんなに目を擦らないで。傷がつきますよ」
「う……」
レブの細い手首を撫でると、濡れた頬からゆっくり離していく。
「レブ、謝るのは私の方です」
顔を伏せたフューネが呟く。
「今の私は……魔法で見た目を変えているんです」
「……?」
「あなたを騙していたのは私の方なのです」
濡れたレブの瞳が揺れている。
フューネは立ち上がって窓へ視線を向けた。
「レブが明かしてくれたように、私も魔法を解きましょう」
フューネは少しすると、ミシリと音を立てた。徐々に形の変わる耳は尖っていき、大きな身体は青白い血管が浮き出ていく。
爪は鋭く、荒い息をするフューネがレブに振り返ると、その目はより深紅に輝いていた。
「……!!」
その姿を前にしたレブは言葉に詰まった。
血管の浮き出た顔は美しいとは言えず、更に口の両端から覗く鋭い牙は獣のようだ。
いつも青白く滑らかな肌も、今は冷たい陶器の色をしている。
「これが私です」
泣き止んだレブが震えているのを見て、フューネは真っ赤な瞳を閉じる。
「逃げなさい」
「……え?」
「追いかけませんから」
フューネはレブに背を向けたままじっと動かなくなった。
涙を拭いたレブはゆっくりと足を進めて、フューネへと近づいた。
「……フューネ」
とん、とレブの手がフューネの広い背中に触れる。
「ちょっとびっくりしたけど、大丈夫だよ」
「レブ、まだわかりませんか? この醜い姿が本当の私なのですよ」
「確かに見た目はちょっと怖いけど、同じ香りがするし」
「……」
「それに、ずっとずっと。フューネは俺を気づつけないようにしてくれてる」
レブは小さな手を動かし、そのままフューネに抱きついた。
「レ、レブ……?」
身体をびくりと震わせ、戸惑うフューネの声がする。それでもレブは背中に頭を当てて、ぎゅっと力を込めた。
「だから、俺。ここに居たい。もっと色んなフューネが見たい」
「けど……」
「フューネのこと、好きだよ」
静かな寝室で二人は互いに身を寄せた。
外では少し風がでてきたのか、ガタガタと窓ガラスが音を立て始めている。
じっとレブをみていたフューネは、ためらいながらも手のひらでレブの身体を触った。
「……ありがとう」
フューネの言葉に、レブは自分の腰に当てられたフューネの手の甲を握る。
驚きつつもその手を嬉しそうに見るフューネは、赤い瞳を細めた。
「レブは暖かいです」
言いながら目を閉じて、ぎゅっとレブを抱きしめ返した。
「もうじき日が沈む……早速、レブが欲しいところですが、その前に一言ロンドに伝えるとしましょう」
「ん。会うの?」
「ええ、少しだけ」
首を傾げるレブに優しい笑みを浮かべたフューネは、レブの頭をぽんぽんと撫でる。
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