愛想笑いの吸血鬼

いち

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ヴィアンド (5/5)

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 ……

 そして、通り雨が降ってきた。
 未だ雨雲に隠れた月は見えないが、ロンドを追い返したフューネが寝室へ戻ってきた。

「お待たせしました」

 言いながらベッドへ入ると、既に横になっていたレブが心配そうに顔を上げる。

「どうだった?」
「暫らく会うのを控えようと言っただけです」

 ふとほほ笑み、寝ていたレブの身体を抱えると、フューネはレブを抱きかかえるように座った。

「匂いが濃いですね」
「っ、うるさい」

 レブの胴体に腕を回し、フューネが囁く。

 フューネがゆっくりと腰から足へ、手のひらを伝わせると、レブはびくりと震えた。

「さて、もう一度魔法で姿を戻しましょうか」
「い、いいよ。このままで」

 レブは下を向きつつ、フューネの胸に寄りかかる。

「レブ」
「あ……」

 フューネは軽い口付けをレブの頭に落とした。

 腕のなかにいるレブは火照った顔を上に向け、困ったように眉を寄せる。

「っふ。ん……」

「さあ、レブ。媚薬を」
「ん」

 フューネが瓶の栓を抜いてレブに差し出すと、レブは瓶を傾けた。

 小さな口にどろりとした液体が流れていく。

「冷た……」
「すぐ暖かくなります」

「あ、フューネ、あの、媚薬が利く前に言いたいんだけど」
「なんでしょうか?」

「その……首を、嚙んで欲しくて」

 固まったフューネの腕の中で、レブは向かい合わせになるように動いた。

「俺を、フューネの番にして」

 まっすぐな瞳でレブはフューネをみる。

「……レブを番に」

 赤々とした瞳は見開かれている。

 静かにレブの首元に顔を寄せると、うなじに口付けを落とした。

「まずは……」
「んう。フューネ?」

 フューネはいくつものクッションを枕元に寄せて、レブの背中をそっと後ろに倒す。

 もたれかかったレブは少し息を荒げながら足を開いた。

「先にこっち……?」

 下を向いたレブが呟く。

 ふ、と息を吐いたフューネは足の間に手を伸ばしていく。



 ……

 やがて熱い空気の中で二人の唇が触れ合った。
 荒い息遣いのフューネは両手でレブの頬を包んで、何度もついばむようにキスする。

「……愛しています」
「フューネ……っ」

 レブは手をフューネの背中に伸ばして自ら引き寄せた。

「う、んっ、いい……早く、飲んで……」
「っ……!!」

 レブは首を傾け、細い首筋をフューネの前に晒した。

 赤々とした瞳を輝かせるフューネは長い舌をだらりと垂らし、牙をなぞる。

 徐々にフューネの顔がそこに近づいて、深く口づけるように埋まった。



「──!!」

 レブは全身を震わせ、大きく見開いた瞳で天井を映す。

 果実を啜るような、聞き覚えのある水音が響いた。


「──うっ、あ……」

 喘ぐレブの身体をしっかり抱きしめたまま、フューネは暫らく動かずに首筋に牙を突き立てていた。



 ……

「……ごちそうさま」

 フューネはゆっくりとレブから顔を離した。その首筋には綺麗な嚙み跡が残っている。

「っ……あ」

 フューネを視界に置いたまま、レブはまつ毛を伏せた。

 脱力していくレブの身体を包むようにフューネが抱きとめる。


「すみません、浮かれ過ぎました」

 声もなくびくりと震えたレブの身体を、フューネの長い舌が舐めはじめた。


「出したもの全て、頂きます」
「も……」

 身体に夢中になっているフューネの頭を撫でながらレブは力なく笑っていた。

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