真実の愛のおつりたち

毒島醜女

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お茶会にて

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朗らかな陽気に照らされるテラス席が、皆様の溜め息で重くなる。
煌びやかな木漏れ日の光も、愛らしい小鳥の囀りすら、私の心を晴らさない。
口にするお茶もお菓子も、まるで砂を噛んでいるようだわ。

「はぁ……明日のお見合いに行くのが、憂鬱だわ。あれでは未来の婿探しというより、動物園にいくようなものよ」
「まあ、それは動物園に失礼よ。ゲストへの礼儀もなく吠えるばかりの獣なんてあちらにはいないじゃありませんか。野良犬、とでも呼んで差し上げなさい」
「今度の子犬はどんな声で鳴くかしら? 『君を愛するつもりはない』? 『自分の生まれを鼻にかけただけの女に礼など言わん』? はたまた『民の血税で着飾るだけの悪女』?」

秀逸なジョークを言うお友達に、思わず笑みがこぼれてしまいそうになり慌てて扇子で隠す。
やめてちょうだいな。これで口に何か入ってる状態だったら悲惨よ?

「しかし……本当に落ちましたね、殿方の質が」

溜め息交じりにサラが言う。
私も、ここにいる全員だってそう思っている。

理由は明確だ。
公子殿下によるブリジット様への婚約破棄。
公の場で破棄する、などと言う恥は晒さなかった。が、大公陛下の御名御璽付きの文書を代理人を通してジブリール公爵家に送りつけたらしい。
それで一家纏めて出ていくのだから、余程ひどい事が書かれていたのでしょうね。
ともあれその時から、同年代の様子がおかしくなったのです。

獣のように本能的になったのです。
それはそうだろう。若者たちの模範である公子様が公爵令嬢である自分の婚約者を手酷く袖にし、平民の娘を公子妃に選んだのです。
若い殿方がそれに右倣えするのは自明の理でしょう。
公子は大公陛下の後ろ盾があるからこそあそこまで強硬な手段に出れたというのに、それがわからないようだわ。

「俺たちには、身分を問わずに気に入った女を選ぶ権利がある!」
「爵位や外聞に気を遣うことはなかったんだ。男に捨てられる女が悪いんだ」
「平民の女は愛想がいい。安物でも喜んでくれるしな。それに引き換え令嬢連中の面白味の無さはなんだ?」

と、こんな感じのことを思っているのでしょうか。
なのでお見合いに来た「いけ好かない貴族女」に対して礼儀のない振る舞いを見せるのだ。
悲惨なのはそんな『事故物件』と行き遅れになる事を恐れるあまりに結婚してしまった女性たちだ。先述したような男性と結婚して幸せになれるでしょうか? そもそも夫としての務めなど果たさないでしょうね。お労しい……
殿方ほどではないですが女性たちも次第に悪化しつつあります。
ある者は「顔さえよければ尊き身分の男を手に入れられる」と淫らで恥知らずな行いを是とし、婚約者がいる方にも絡み付きます。

お父さま。お母さま。
この国は終わりです。

空になった紅茶を置くと、私は友人たちに告げました。

「私、次に会う殿方が“人間未満”でしたら、王国からのお見合いを受けてみようと思うの」
「まあ! あなたも? 実は私にも王国の貴族からお手紙を頂いたの」
「ふふ、野良犬では書けないものね。私も……お父様は渋い顔をしていらっしゃるけど、受けてみようかしら?」

どうやら全員には王国の殿方からそういったお誘いが来ているようです。
そうでしょう。いい子たちですもの。野良犬に噛まれたりしたら困ります。
元々我が家は王国派ではありません。
ですが我が家に入ろうとする犬の素行を知り、お父さまもお母さまもお見合いの打診をしてくれたの。

肖像画に描かれたのは端正な顔をした美少年で、彼からのお手紙はとても素晴らしいものでしたわ。
文字も綺麗で、私の好きな作家の詩を引用していました。
久しぶりに殿方の教養と品性を感じましたわ。彼と会うのが楽しみです。

——愛国心? 結構ですわ。大事なのは我が家。種を得るなら、良い品種を選ばないとね。

友人たちの行く末に幸多からんことを願い、私は再び注がれた紅茶を飲み込んだ。
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