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クリフは、王都に戻りしだい早急に調べてくれるらしい。
彼は、この問題の「結婚契約更新書」なるものについて心当たりがあるらしい。
かくいうわたしも、まったく心当たりがないわけではない。
それでも、これまでの十年間夫を信じようと努めた。
クリフに夫への手紙を託すことにした。手紙というよりか、追及状だ。
急使や郵便では、これまでどおりポイの上なかったことにされるに違いないからだ。
クリフは、手伝いを切り上げ早々に王都に戻って行った。
一方、わたしはわたしで「結婚契約更新書」のことが気になりつつも、そればかりを気にするわけにもいかない。執事のローレンスやメイドのブレンダにも手伝ってもらい、多忙な時期を奮闘した。
クリフがやって来たのは、小麦の収穫が終わって収穫祭が始まったばかりの頃だ。
このときになってやっとわたしも一息つける時期。とはいえ、小麦だけでなく鉱物資源や畜産物やその他もろもろの産物に対応しなければならない。それがまた大変なのだ。
だけどまぁ、せめて収穫祭の時期だけは、すべてを忘れてリフレッシュしたいというのも本音だ。
「こんにちは、クリフ」
「やあ、義姉さん」
「だから、その義姉さんというのはやめてちょうだい。厳密には、あなたの方が半年近くはやく生まれているのよ。それなのに、すごく歳が上みたいに聞こえるわ」
「気苦労や物理的な苦労のことを考えると、きみはすでに不老不死の大魔女といってもいい。あるいは、人生三度目くらいとか?」
「失礼ね。このわたしのどこが大魔女なのよ。それに、前世と前々世では悪いことしまくっていたみたいなことを言わないで」
これは、クリフとのいつものやりとりだ。
おもわず、ふたりで大笑いしてしまった。
「クリフ、せっかくですもの。あなたも収穫祭を愉しんで。いつも収穫の時期は手伝ってくれるけれど、収穫祭は参加できないでしょう?」
町はおおにぎわいだ。
この時期は、隣国であり祖国でもあるオグバーン国からも行商人だけでなく遊びに来る人も多い。
「そうだね。王都に行って以降、収穫祭の頃には王都に戻らねばならないから。だけど、今年は特別さ」
ふたりで町の大広場を歩いていると、通行人や屋台や露店の人たちが声をかけてくれる。
とりあえずはフレッシュジュースと揚げたてのドーナツを購入し、大広場にあるベンチに座った。
「それで、夫のことは? 例の『契約結婚更新書』なるものはどういうことかしら?」
クリフはバツが悪そうな、それでいて憤っているような、そんな雰囲気だ。
歳が十歳以上離れている夫は下膨れのおおらかな顔立ちだけど、クリフは野性的な美貌だ。
「きみからの追及状は、王都に戻ってすぐに兄に渡したよ」
彼は、ドーナツをひと口かじった。すると、口のまわりに粉砂糖がいっぱいついた。
それを見ながらわたしもかじった。同様に、口のまわりに粉砂糖がいっぱいついただろう。
彼もわたしもスイーツには目がない。というか、素朴な食べ物が大好きなのだ。
ふたりでドーナツと揚げパンをいっきに食べた。
その間、無言だった。わたし同様、彼も空腹だったのだろう。
人心地ついた後、搾りたてのフレッシュジュースを飲んだ。
ドーナツも揚げパンも甘かったので、いつもよりかは酸っぱく感じた。とはいえ、中和されて口の中がさっぱりした。
その間にも、通りがかりの人が手を振って挨拶してくれる。ふたりして口のまわりを粉砂糖だらけにして手を振り返すの図は、滑稽でしかない。
「それで? 彼はなんて?」
笑顔で挨拶してくれた子どもたちに手を振ってから、クリフに尋ねた。
わたし自身、子どもはいない。作ろうにも、夫が側にいないからだ。とはいえ、領地経営に忙しく、昨年までは義理の両親たちの介護もあったので、そんなことを考える余裕はなかった。
彼は、この問題の「結婚契約更新書」なるものについて心当たりがあるらしい。
かくいうわたしも、まったく心当たりがないわけではない。
それでも、これまでの十年間夫を信じようと努めた。
クリフに夫への手紙を託すことにした。手紙というよりか、追及状だ。
急使や郵便では、これまでどおりポイの上なかったことにされるに違いないからだ。
クリフは、手伝いを切り上げ早々に王都に戻って行った。
一方、わたしはわたしで「結婚契約更新書」のことが気になりつつも、そればかりを気にするわけにもいかない。執事のローレンスやメイドのブレンダにも手伝ってもらい、多忙な時期を奮闘した。
クリフがやって来たのは、小麦の収穫が終わって収穫祭が始まったばかりの頃だ。
このときになってやっとわたしも一息つける時期。とはいえ、小麦だけでなく鉱物資源や畜産物やその他もろもろの産物に対応しなければならない。それがまた大変なのだ。
だけどまぁ、せめて収穫祭の時期だけは、すべてを忘れてリフレッシュしたいというのも本音だ。
「こんにちは、クリフ」
「やあ、義姉さん」
「だから、その義姉さんというのはやめてちょうだい。厳密には、あなたの方が半年近くはやく生まれているのよ。それなのに、すごく歳が上みたいに聞こえるわ」
「気苦労や物理的な苦労のことを考えると、きみはすでに不老不死の大魔女といってもいい。あるいは、人生三度目くらいとか?」
「失礼ね。このわたしのどこが大魔女なのよ。それに、前世と前々世では悪いことしまくっていたみたいなことを言わないで」
これは、クリフとのいつものやりとりだ。
おもわず、ふたりで大笑いしてしまった。
「クリフ、せっかくですもの。あなたも収穫祭を愉しんで。いつも収穫の時期は手伝ってくれるけれど、収穫祭は参加できないでしょう?」
町はおおにぎわいだ。
この時期は、隣国であり祖国でもあるオグバーン国からも行商人だけでなく遊びに来る人も多い。
「そうだね。王都に行って以降、収穫祭の頃には王都に戻らねばならないから。だけど、今年は特別さ」
ふたりで町の大広場を歩いていると、通行人や屋台や露店の人たちが声をかけてくれる。
とりあえずはフレッシュジュースと揚げたてのドーナツを購入し、大広場にあるベンチに座った。
「それで、夫のことは? 例の『契約結婚更新書』なるものはどういうことかしら?」
クリフはバツが悪そうな、それでいて憤っているような、そんな雰囲気だ。
歳が十歳以上離れている夫は下膨れのおおらかな顔立ちだけど、クリフは野性的な美貌だ。
「きみからの追及状は、王都に戻ってすぐに兄に渡したよ」
彼は、ドーナツをひと口かじった。すると、口のまわりに粉砂糖がいっぱいついた。
それを見ながらわたしもかじった。同様に、口のまわりに粉砂糖がいっぱいついただろう。
彼もわたしもスイーツには目がない。というか、素朴な食べ物が大好きなのだ。
ふたりでドーナツと揚げパンをいっきに食べた。
その間、無言だった。わたし同様、彼も空腹だったのだろう。
人心地ついた後、搾りたてのフレッシュジュースを飲んだ。
ドーナツも揚げパンも甘かったので、いつもよりかは酸っぱく感じた。とはいえ、中和されて口の中がさっぱりした。
その間にも、通りがかりの人が手を振って挨拶してくれる。ふたりして口のまわりを粉砂糖だらけにして手を振り返すの図は、滑稽でしかない。
「それで? 彼はなんて?」
笑顔で挨拶してくれた子どもたちに手を振ってから、クリフに尋ねた。
わたし自身、子どもはいない。作ろうにも、夫が側にいないからだ。とはいえ、領地経営に忙しく、昨年までは義理の両親たちの介護もあったので、そんなことを考える余裕はなかった。
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