王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アニエス、拐われる 3

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竜の結婚詐欺疑惑。

絶対にオズワルドは、モニカと連れ添う
つもりはないでしょう!

黒竜は、番が死ぬと竜は長く生きられないと
言っていた。それは、竜同士の話?
人の寿命は短い。人の番の寿命に合わせて
いたら竜はすぐに死ぬ事になる。

そうか。だから人と竜が連れ添うためには、
金の鱗が必要なんだ。
寿命が長い方の番が、短い方の相手に
金の鱗を渡して互いの寿命を共有する。
寿命を半分こ。
真実の番ってそういう意味だよね。
寿命を縮めてでも添い遂げたい相手
でなければ無理な話だわ。

寿命に大きな差があり過ぎる人と竜。
本当に番になるためには、本来は婚姻鱗と
金の鱗の両方が必要なのでは?

婚姻鱗だけの婚姻は、連れ添うためでなく
繁殖のためなのかも。
種族の違いを越えて繁殖するために
婚姻鱗を渡すのかな?どうなんだろう。
う~ん。
全部推測だな。やっばり、黒竜に聞こう。
竜の生態なんて人には分からないわ。

でも、モニカが騙されているのは確実だと
思う。オズワルドは姫様を諦めていない。
あいつが好きなのは姫様だ。
モニカじゃない。
なのにモニカに婚姻鱗を渡している。
絶対に詐欺でしょう。

それにしても姫様、男運が悪過ぎません?
ロイシュタール様といい、オズワルドといい
ヤバい男に好かれて執着される。

……駄目だ!アルトリアに早く戻ってお守り
しなければ!!

さて、どうしようかな。
無駄だと思うけれど一応、幼馴染みだ。
忠告はしておこう。
モニカが死なないとオズワルドの
婚姻鱗は復活しない。
あなた、たぶん殺される。

「モニカ、早く逃げた方がいいわよ。
あなたオズワルドに殺される可能性がある」

「は?何言ってるの。殺される可能性が
高いのはあんたの方でしょ」

……まあ、それは確かにそうかも。
すでにさっき殺されかけたわ。
でも私はとっとと逃げるのでご心配なく。
それより、あなたの命の方が心配だわ。

モニカって馬鹿だよね。
あんなクズに騙されて国を裏切った。
そのせいで父親は死んだのでは?
辺境人は騙されやすい。
マックス義兄様が嘆く気持ちが分かる。
ま、そのモニカに騙されて、拐われた私は
もっと馬鹿だけど。

「オズワルドは第二王女様に執着している。
あなたは利用されているだけだと思うよ」

「そんな事ないわ。だって私達、番だもの。
それに、金竜の末裔である私がいなければ
魔物を操る事はできないのよ。
オズワルド様は私を大事にしてくれるわ。
アイザック様とは違うわよ!」


……お館様は、アイザック様はモニカの事、
大切にしていたと思うけど?
幼い頃からの婚約。あんなに仲睦まじく
見えたのに。
王命によって二人の婚約が解消されたのは
二年前。
でも、三年前からモニカはオズワルドと
不義の関係。番となっている。複雑だなぁ。
選択権は雌にあるか……。
これ、竜だけの話でなく人もそうなのかも。
実はモニカ、まだアイザック様に心を残して
いるのでは?
完全に雌が雄を受け入れないと
駄目な気がする。

だから、仮の番になったオズワルドの
子供を授からないのかも。
ま、これも推測だ。

男女の仲は他人には分からない。

魔物を操るのに金竜の末裔が必要。
だから、オズワルドは色々使い道が私には
あると言ったのね。
私も金竜の末裔だから。

私って、モニカのスペアだったのかも。
辺境にいた金竜の末裔の娘が二人。
一人を仮の番に。
一人を保険のためにドルツ侯爵に囲わせる。
仮の番はモニカで保険は私。
また、私の預かり知らないところで人生を
狂わされている。何を勝手に人をスペア
扱いしてくれているのよ。

そして仮の番であるモニカとの繁殖に失敗
した。だから、今さら私を欲しがる。

私にはグレン様がいるのに。

オズワルドは相手の男は殺せばいいと
言っていたけれど。

グレン様が死んだら私にはまた婚姻鱗が
生えてくるの?いや、それはないな。
大体、グレン様と私は金の鱗で寿命を
半分こに分けている。
グレン様が死んだら、私も死ぬ?

………オズワルドの馬鹿、私達が
金の鱗で寿命を共有している事に
気がついていないんだ。

グレン様を殺せば婚姻を無効にできると
思っている。
それどころか私達が婚姻鱗を交換している
竜同士の番だという事にも気がついてない
のかも。

私が竜だと分からないんだ。
金竜の末裔の人間の女が、別の竜の雄に
婚姻鱗を貰っただけだと思っている。

オズワルドも完全な竜じゃないのかも。
やる事も知識も中途半端だ。

グレン様が死んだら、私も死ぬのに。
残念でした。

私はあなたの子供は産めません!
産みたくもないけどね!

モニカも私も姫様の、スペアだ。
ただ、子供だけ産ませれば良いだけの存在。
隷属の腕輪で心と意思を封じ、
繁殖相手を誤認識させて、婚姻鱗を与え
そのうえで私を犯して子供を産ませる。

クズが考える筋書きはこんなところかな。

きっと、すぐに子供が必要な訳が
あるのだろう。

アルフォンス様から聞かされた
帝国の隷属の腕輪の話を思い出す。

以前、私に嵌められていた隷属の腕輪には、
心からの隷属。意思の放棄。魔力の封印。
そして、繁殖相手の認識阻害と
特定の相手を繁殖相手とする刷り込み。
それらの魔術式が刻み込まれていた。

聞いた時は、何それ?と思ったけれど。

操り人形にしたうえで、私に別の番が
出来ないようにするためだったのかも。
さらにオズワルドを番だと誤認識させる
ためのもの。うえ。吐きそう。

でも、私には何故か、腕輪の効果があまり
なかった。
魔力の封印は成功したけれど。
繁殖相手の認識阻害は微妙。
私の心と意思は完全に保たれ、操り人形
にはならなかった。

私が以前の隷属の腕輪をしている時に
グレン様が怖くて仕方がなかったのは
私がグレン様を無意識に繁殖相手として
見ていたからなのかも。
腕輪の認識阻害の効果?嫌な圧力を
感じていた。やたらゾクゾクしていたもの。
だから、グレン様が苦手だった。

それにしても、今回嵌められた腕輪も
全然、私には効いてませんけど?
魔力が前より強くなったから、壊せそう
だもの。

それにしても番って、人にはよく分からない
システムだよね。

番その1    竜同士が互いの婚姻鱗を交換。

番その2    竜同士が互いの婚姻鱗を交換し
                  さらに金の鱗で寿命を共有する
                  真実の番。

番その3    人に竜が婚姻鱗を渡すだけの        
                  仮の番。

番その4    人に竜が婚姻鱗を渡す。さらに  
                  寿命の短い人に竜が金の鱗を
                  渡し、自分の寿命を分け与える
                  事で共有する
                  真実の番その2

竜の雄の婚姻鱗は、
竜同士では雌に気に入られるための
ただの魔力のプレゼント。
決定権は雌にある。雌が気に入った雄に
自分の婚姻鱗を渡すと婚姻成立。
番その1となる。

失恋した雄は再び婚姻鱗が生えてくる。

番その4は繁殖目的。
人が竜の子供を産んだ後、仮の番が死ねば
竜にはまた婚姻鱗が生えてくる。
婚姻鱗が復活したら、別の人に渡し
また子供を作れる。エンドレス。
オズワルドの狙いはこれ。

今、私とグレン様は番らしい。

番ってなんだろうね?
よく分からないわ。

私は黒竜からすると、ほとんど竜らしい。
でも、気持ちは……心は人なのよね。

グレン様も人だよね。
鱗は生えてきたけれど。
あの人の心は痛いほど人だ。

『お前が何者であっても俺が何者であっても
二人で寄り添って生きていきたい』

グレン様のプロポーズの言葉。
うん。本当、もう人とか魔物とか竜とか
どうでもいい。
私達は私達。
気持ちが人なら、私達は人だ。
番とかどうでもいい。

でも、今さら気がついた。
寿命を半分こ。
私が死んだらグレン様も死ぬ。

それ、駄目。絶対に駄目!
私は絶対に死ねない。
私の命はグレン様の命でもあるんだ。

はあ、ため息が出る。

まずは私の使い道の一つを
潰さないといけない。
今の私は人質としての価値がある。
国やグレン様の重荷になる訳にはいかない。

それに私が逃げれば、モニカにはまだ
利用価値が残る。
魔物を操るために金竜の末裔が必要。
同じ金竜の末裔である私がここにいたら、
モニカは不用。間違いなく殺される。

逃げなければ。
──よし。
パキンパキンと音をたてて腕輪が壊れた。
さよならモニカ。
一応、忠告はしたからね。
もう、話す事はないわ。

とりあえず、外に脱出だ。
私は転移魔法を使った。

月明かりの夜の庭園。
ここはどこのお城なの?
大きな白亜の建物。今ままでこの中に私は
いたのよね?

すぐにまた転移しないと。モニカも
転移魔法が使えるから追い付かれる。
ここは、帝国?
アルトリアの王都に比べたら転移しやすい
けれど、ここも転移魔法が使い難い。
赤竜がいるから?

短い距離しか飛べない。
私はオズワルドの暴力で立っているのが
やっとの状態。
どこまで逃げれるかな。

私が逃げた事が伝わったらしい。
庭園の外灯が一気にパッと明るくなり、
人が大勢出て来た。衛兵や、近衛騎士隊だ。
まずい。逃げないと。

ポタポタと血が流れる。
腫れているからか、目が見え難い。

ふらつきながら転移魔法を使おうとすると
何かに呼ばれる。

──何だろう。

あ、また。呼ばれた。

悪いものではない。むしろ……優しい存在。

あれ?何か言っている。

何だろう、誘われる。

私はふらふらと呼ばれた方に転移した。






















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