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アニエス、亡霊と遭遇す
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何かに呼ばれた。
何だか温かい。懐かしいような切ない気配。
私は何に呼ばれたの?
何かに呼ばれた私は呼ばれた方に転移した。
ここはどこ?
神殿のような場所だけれど、とにかく広い。
祭壇がある。
竜神の石像が祀られている。
石像の真下には石の椅子。
その前にはとても大きな『穴』が二つ。
何ここ。怪しい。
優しい気配に呼ばれたのに変な所に出た。
竜神の石像。
帝国で竜が神として崇められているのが
不思議だ。
あれだけ竜に酷い事をしているのに……。
黒竜は追いかけ回され、剣を二本刺された。
赤竜は三本の剣を刺されて、操られている。
この国の前の皇帝は、竜の血の契約者を
作ろうと、沢山の人に竜の血を飲ませて
殺したと言う。
どこに竜を崇める要素があるのだろう。
じっと竜神の石像を見ていたら、石像の
目が金色に光った。
あ、私、これに呼ばれたんだ。
そんな気がした。
石像の真下までふらふらと歩く。
誘われるように石の椅子に腰掛けた。
石の椅子のはずなのに温かくて柔らかい。
ぐにゃんと沈み込む。
そのまま、落ちた。え?
椅子のどこに落ちる要素がどこにあるの~
どこまでも落ちる。
明かりが見える。
明かりに近くなるにつれて落下が
緩やかになる。
ふわふわと地面に着地した。
なんだろうここ。洞窟みたいだけれど
物凄く広い。それにキラキラと金色に
光っている。
光っているのは巨大な氷の塊。
目の前にある氷の塊の中に
光る竜がいた。
金色の鱗。
これって金竜?
呆然と見上げる。
これって私のご先祖様なのかしら。
とても綺麗な竜だけど……。
この金竜は──死んでいる。
半ば白骨化しているもの。
それに人為的に所々切り取られたり、
削られたりして、損壊している。
切り取るための道具と切り取られた
まま、放置された骨が無造作に
置かれている。
こんな所に一人で眠るのは寂しいね。
しかも、亡骸を冒涜されて。
可哀想に。
黙祷する。
目を開くと目の前にふわふわと宙を漂う
人影があった。半透明の亡霊みたい。
長く流れる金の巻き髪。金の瞳。
とても綺麗な美しい男性。
黒いローブ姿だ。
金竜?金竜なの?
目が合うとニッコリ笑う。
金竜の幽霊?
ニコニコと滅茶苦茶愛想の良い幽霊。
しかも、美形。
私の周りをふわふわと飛びながら
手を伸ばし、指差す。
切り取りだされた骨。
私の顔を見ると悲しそうに首を振る。
ああ、亡骸を弄られるのが嫌なのか。
そりゃそうだよね。
帝国は、なんのために金竜の骨を切り
取っているのだろう。
何とかしてあげたいけれど。
どうしたらいいのだろう。
う、期待に満ちた目でこちらを見る幽霊。
プレッシャーをかけないで欲しい。
う~ん。これ……収納できないかな?
このままここに置いたままだと
また骨を切り取られそう。
ちょっと、いや、かなり大きいけれど。
やってみるか。
よし。お持ち帰りしよう。
私は金竜の亡骸を空間収納する。
あれ?すごく簡単だった。
あ、一本残っているわ。
落ちていた骨を拾い、それもしまう。
ん~何で?全然収納に余裕がある。
謎だわ。質量はどうなっているのだろう?
ま、いっか。
うまくいったのだから良しとしよう。
金竜の幽霊はニコニコして、
手を叩いて喜んでいる。良かった。
どうやら喜んで貰えたようだ。
でも、ここからどうやって出たらいい
のだろう?
「ねえ、金竜。ここから出たいの。
どうすればいい?」
幽霊に尋ねてみる。
ふわふわと、飛びながら手招きされる。
付いて行くと沢山の別れ道がある。
これ、絶対に迷うわ。
迷路みたい。
金竜に付いて歩く。
もう少し、ゆっくりお願いします。
私は怪我人です。
ふらふらと歩く私。
ポタポタと血をたらしながら、殴られて
腫れた顔で歩く私と、半透明の亡霊金竜の
ホラーコンビが洞窟を行く。
かなり歩かされた。
──金竜、私。疲れました。少し休ませて。
水の音が聞こえる。
滝のように大量の水が流れる音。
しばらく歩くと、洞窟が終わる。
外に出ると滝が見える。
月が出ているので薄暗いが少しは辺りの
景色が見える。
うっそうとした森。
迷いなく進む金竜を何とか追いかける。
もう、駄目。もう、歩けないわ。
その場で私は座り込んだ。
先を進んでた金竜がふわふわと戻ってくる。
ニッコリ笑って指差す。
金竜の指差す方を見ると小さな泉が見える。
ふわふわとまた先を行く金竜。
ため息が出る。
分かった。分かりました。頑張りますよ。
這うようにして泉まで辿り着いた。
泉の側には、大きな『穴』がある。
金竜はニコニコと『穴』を指差す。
え?まさか、これに落ちろと言っている?
冗談でしょ?
「この『穴』どこに繋がっているの?」
金竜に尋ねると、とてもいい笑顔で私に
近寄ってくる。
私の頭撫でる仕草をするとフッと
突然煙のように消えた。
え?ここで消える?嘘でしょ!
嫌だ金竜~!一人にしないでよぉ!!
……しばらく佇んでいたけれど、金竜は
もう、姿を見せない。
幽霊でも、亡霊でも一緒にいてくれた金竜が
いなくなって、急に心細くなる。
目の前には怪しい『穴』
「はあ、仕方ない。金竜を信じて『穴』に
落ちるか……」
自分から『穴』に落ちるのは二度目だ。
私は覚悟を決めて『穴』へと飛び込んだ。
暗転する。
私の意識はそこで途絶えた。
何だか温かい。懐かしいような切ない気配。
私は何に呼ばれたの?
何かに呼ばれた私は呼ばれた方に転移した。
ここはどこ?
神殿のような場所だけれど、とにかく広い。
祭壇がある。
竜神の石像が祀られている。
石像の真下には石の椅子。
その前にはとても大きな『穴』が二つ。
何ここ。怪しい。
優しい気配に呼ばれたのに変な所に出た。
竜神の石像。
帝国で竜が神として崇められているのが
不思議だ。
あれだけ竜に酷い事をしているのに……。
黒竜は追いかけ回され、剣を二本刺された。
赤竜は三本の剣を刺されて、操られている。
この国の前の皇帝は、竜の血の契約者を
作ろうと、沢山の人に竜の血を飲ませて
殺したと言う。
どこに竜を崇める要素があるのだろう。
じっと竜神の石像を見ていたら、石像の
目が金色に光った。
あ、私、これに呼ばれたんだ。
そんな気がした。
石像の真下までふらふらと歩く。
誘われるように石の椅子に腰掛けた。
石の椅子のはずなのに温かくて柔らかい。
ぐにゃんと沈み込む。
そのまま、落ちた。え?
椅子のどこに落ちる要素がどこにあるの~
どこまでも落ちる。
明かりが見える。
明かりに近くなるにつれて落下が
緩やかになる。
ふわふわと地面に着地した。
なんだろうここ。洞窟みたいだけれど
物凄く広い。それにキラキラと金色に
光っている。
光っているのは巨大な氷の塊。
目の前にある氷の塊の中に
光る竜がいた。
金色の鱗。
これって金竜?
呆然と見上げる。
これって私のご先祖様なのかしら。
とても綺麗な竜だけど……。
この金竜は──死んでいる。
半ば白骨化しているもの。
それに人為的に所々切り取られたり、
削られたりして、損壊している。
切り取るための道具と切り取られた
まま、放置された骨が無造作に
置かれている。
こんな所に一人で眠るのは寂しいね。
しかも、亡骸を冒涜されて。
可哀想に。
黙祷する。
目を開くと目の前にふわふわと宙を漂う
人影があった。半透明の亡霊みたい。
長く流れる金の巻き髪。金の瞳。
とても綺麗な美しい男性。
黒いローブ姿だ。
金竜?金竜なの?
目が合うとニッコリ笑う。
金竜の幽霊?
ニコニコと滅茶苦茶愛想の良い幽霊。
しかも、美形。
私の周りをふわふわと飛びながら
手を伸ばし、指差す。
切り取りだされた骨。
私の顔を見ると悲しそうに首を振る。
ああ、亡骸を弄られるのが嫌なのか。
そりゃそうだよね。
帝国は、なんのために金竜の骨を切り
取っているのだろう。
何とかしてあげたいけれど。
どうしたらいいのだろう。
う、期待に満ちた目でこちらを見る幽霊。
プレッシャーをかけないで欲しい。
う~ん。これ……収納できないかな?
このままここに置いたままだと
また骨を切り取られそう。
ちょっと、いや、かなり大きいけれど。
やってみるか。
よし。お持ち帰りしよう。
私は金竜の亡骸を空間収納する。
あれ?すごく簡単だった。
あ、一本残っているわ。
落ちていた骨を拾い、それもしまう。
ん~何で?全然収納に余裕がある。
謎だわ。質量はどうなっているのだろう?
ま、いっか。
うまくいったのだから良しとしよう。
金竜の幽霊はニコニコして、
手を叩いて喜んでいる。良かった。
どうやら喜んで貰えたようだ。
でも、ここからどうやって出たらいい
のだろう?
「ねえ、金竜。ここから出たいの。
どうすればいい?」
幽霊に尋ねてみる。
ふわふわと、飛びながら手招きされる。
付いて行くと沢山の別れ道がある。
これ、絶対に迷うわ。
迷路みたい。
金竜に付いて歩く。
もう少し、ゆっくりお願いします。
私は怪我人です。
ふらふらと歩く私。
ポタポタと血をたらしながら、殴られて
腫れた顔で歩く私と、半透明の亡霊金竜の
ホラーコンビが洞窟を行く。
かなり歩かされた。
──金竜、私。疲れました。少し休ませて。
水の音が聞こえる。
滝のように大量の水が流れる音。
しばらく歩くと、洞窟が終わる。
外に出ると滝が見える。
月が出ているので薄暗いが少しは辺りの
景色が見える。
うっそうとした森。
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もう、駄目。もう、歩けないわ。
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ニッコリ笑って指差す。
金竜の指差す方を見ると小さな泉が見える。
ふわふわとまた先を行く金竜。
ため息が出る。
分かった。分かりました。頑張りますよ。
這うようにして泉まで辿り着いた。
泉の側には、大きな『穴』がある。
金竜はニコニコと『穴』を指差す。
え?まさか、これに落ちろと言っている?
冗談でしょ?
「この『穴』どこに繋がっているの?」
金竜に尋ねると、とてもいい笑顔で私に
近寄ってくる。
私の頭撫でる仕草をするとフッと
突然煙のように消えた。
え?ここで消える?嘘でしょ!
嫌だ金竜~!一人にしないでよぉ!!
……しばらく佇んでいたけれど、金竜は
もう、姿を見せない。
幽霊でも、亡霊でも一緒にいてくれた金竜が
いなくなって、急に心細くなる。
目の前には怪しい『穴』
「はあ、仕方ない。金竜を信じて『穴』に
落ちるか……」
自分から『穴』に落ちるのは二度目だ。
私は覚悟を決めて『穴』へと飛び込んだ。
暗転する。
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