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本編
76話 王家と公爵家 その61
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タロウが食堂に入ると、
「ハナコー、ハナコ、返してー」
ダダッとミナがタロウに駆け寄り、タロウは花子?と首を傾げた、随分と古風な名前でさらには妙にどこかをくすぐられる懐かしくもむず痒い響きである、
「アレサでしょー」
ブーとジャネットが叫び、こらこらと呆れ顔で微笑む他の女性達、
「ちがうー、ハーナーコー、教えたでしょー」
「えーーーー、だってさー、アレサの方が可愛いでしょー」
「可愛くない、ハナコがいいのー」
「えー、絶対、アレサださー、ねー、ルルもそう思うでしょー」
ジャネットはすっかり舎弟扱いのルルに同意を求めるも、ルルはどうでもいいですよーとあっさりとしたもので、
「何だよそれー、アレサ、アレサが正しい」
ムーと不愉快そうに顔を顰めてムンと胸を張るジャネット、
「だめー、ハナコはハナコー、自分で選んだんだからハナコなのー」
「だからー、それが駄目だってー、ワンコに名前なんて分かんないよ絶対」
「わかるー、ハナコは賢いのー、ジャネットより賢いんだからー」
「あー、言ったなー」
ワーギャーと喚き散らすミナとジャネット、タロウはあっ、子犬の名前かと抱き抱える子犬を見下ろす、子犬はヘッヘッと鼻を鳴らして興味深そうに食堂内を見渡していた、
「そっかー、君はハナコになったのかー」
優しく問いかけるとオフッと嬉しそうにタロウを見上げるハナコ、
「そうなのー、ハナコになったー、ハナコがね自分で選んだのー」
ミナがジャネットはもういいとばかりにタロウの足に抱き着いた、ジャネットも漸く満足したのかムフーと楽しそうに鼻を鳴らして腰を下ろす、単にミナをからかって遊んでいただけのようである、
「自分で選んだの?」
「うん、レインがねー、選ばせればいいのじゃーって言って、ミナがね、オリガミに名前を書いて、そしたらハナコが選んだの」
「あー、そういう事か・・・ホントに君は賢いなー」
「そうなの、ハナコは賢いのー」
「ん、じゃ、ハナコ宜しくな」
タロウはハナコに笑いかけ、ハナコはワフッと返事をしたような気がする、タロウは理解しているんだろうなと微笑みつつハナコをミナに預けると、ミナはウフフーと嬉しそうに受け取り胸に抱いた、ハナコも大人しくされるがままである、
「でもなー、アルテミスもいいよなー」
しかしブーブーと不満気げなのはジャネットのようで、
「そんなに拘ってたんですか?」
ルルがまったくと眉を顰める、
「拘ってたって程じゃないけどさー、ハナコかー・・・なんていうか上品さがないなー」
「そんな事言ってー、アレサだって・・・それほどじゃないですか?」
「それほどだよー良い名前じゃないさー」
「そうですけど、ハナコも良いと思いますよ、聞き慣れない名前だし、なんかお洒落です」
うんうんと大きく頷いて同意を示す、同じ炬燵を囲むサレバにコミンにレスタにケイス、
「ならだって、アルテミスー」
「いい加減になさい」
ジロリとジャネットを睨んだのはエレインである、
「えー、だってー」
「だってじゃないですよ、ミナちゃんの飼い犬なんだからあなたが口を出すのは違うでしょ」
「そうだけどー・・・欲しいなー、ワンコ、ミナっちいいなー」
炬燵のテーブルに顎を乗せ、羨まし気にハナコを抱くミナを見つめるジャネットである、ミナはミナで良いでしょーとばかりに微笑むものだから、ムーと睨んでしまうジャネット、ハナコはハナコでその細い腕の座り心地が悪いのかもぞもぞと座り直して落ち着いたようで、
「あっ、そうだ、明日ってさ、偉い人達来るの?」
よっと炬燵に腰を下ろすタロウ、炬燵ももうすっかり馴染んでしまっており、二つ並んだそれは何気に生徒とそれ以外といった感じで住み分けまでされてしまった、となれば普段使いのテーブルと同じように定位置も決まりつつある、タロウとしては随分と大きな炬燵になってしまったと作った当初は少しばかり後悔したが、その大きさが功を奏した形となっていた、これはこれで良かったなと満足していたりする、
「はい、そのようですよ」
テラがサッと顔を上げ、ニコリーネは眩しそうにミナとハナコを見つめている、
「明日は恐らくですが、王妃様がいらっしゃいますウルジュラ様も」
テラがそう続けると、ユラ様ーとミナがピョンと反応する、
「はい、いらっしゃいますよ」
ニコリと返すテラ、
「そっかー、連絡あった?」
「はい、アフラさんがいらっしゃいました」
「あっ、なるほど・・・じゃ、そういう事でいいんじゃないの?」
とタロウが階段から下りて来たばかりのユーリを見上げた、
「何が?」
当然話の流れを把握していないユーリが問い返す、
「明日、王妃様とウルジュラ様が来るってさ」
「あっ、それの事」
「そっ、それの事」
「そっか・・・じゃ、御本人様達に確認してからでいいか」
「それがいいだろうね」
ユーリと所員達も炬燵に足を入れる、あー、あったかーいと微笑むカトカ、やっぱり三階にも欲しいなーと恨めし気にユーリを見つめるも、ユーリはまるで無視である、
「何かあるんですか?」
テラが問いかけ、エレインも振り返った様子であった、
「うん、ほら、こいつのあれのあの報告書が出来たからね、関係各所に届けたくてね」
ユーリがタロウを顎で指す、タロウはそうだねーと背中を丸めた、
「あっ、それ、読みたいです」
パッと振り返ったのはグルジアとレスタであった、
「ん、いいわよー、あれ?でも読んでなかった?」
「まだですよー、オリビアさんがすんごい勉強になったって言ってました、メイド科の先輩達も」
ねーとグルジアが同意を求めるとウンウンと大きく頷くレスタ、そうだったと顔を上げるコミンとケイス、そのオリビアの姿は無い、恐らく厨房でソフィア達を手伝っているのであろう、
「そっか、じゃ、余った分持って来るか」
ユーリがサビナに確認すると、
「ですね、二部くらいは食堂に置いておきましょう、あっ、エレインさんの方にも二部くらいでいい?もっと欲しい?」
サビナが首を伸ばすと、頂けるんですかとエレインが嬉しそうに微笑む、当然ですよーと微笑むサビナ、であれば文句はいいませんと返すエレインである、つまり二部で充分ということかなとサビナは解釈し、じゃそれでとなったようであった、そこへ、
「はーい、テーブル片付けてー」
とソフィアが盆を構えて食堂に入ってきた、ハーイと炬燵を片付ける生徒達、何やら木簡やら書類やらを広げていた様子で、
「どしたの?それ?」
ユーリが今更ながらにテラに問う、
「あっ、明日のお仕事ですよ、タカラクジの勉強ですね、段取りやら何やら、難しくはないんですが簡単でも無いんです、まぁ、うちの従業員はあくまでお手伝いなんですけどね」
「タカラクジ・・・あー、言ってたわねー、何だっけ?」
「領主様の金策です」
テラがあっさりと答え、身も蓋も無いなーとタロウは苦笑する、と同時に流石テラさんだなーとも感じる、その本質と意義を見透かしているらしい、もしくはフィロメナさんあたりが正直にそう言ってしまったんだろなと勘繰るタロウであった、
「へー、金策ねー・・・あっ、ギルドでもなんかやってたわねー、是非買って下さいって頼まれたわ、先生なら絶対当たりますーって・・・ホントかしら・・・」
「そうなんですか?」
「そうよー」
「じゃ、買って下さい」
ジャネットが勢いよく振り返る、
「んー、気が向いたらねー」
「そう言わないで下さいよー、ユーリ先生なら絶対当たりますからー」
「アンタもか・・・まったく、それホントだな?絶対当たるんだなぁ?」
ジロリとジャネットを睨むユーリ、ジャネットはエートっと薄ら笑いを浮かべ、
「ほら、先生の得意な魔法とかでなんとか?」
と疑問で返す始末、
「どんな魔法よ・・・」
「一等が当たる魔法です」
「・・・あんたねー、その辺の子供ならいいけど、まがりなりにも魔法学園の生徒がそんな事を言うな」
「えー、だってー、ねー、ルルっちとも話してたんだよー、ユーリ先生なら絶対当てるってー」
「えっ、私ですか?」
ルルが皿を並べながら問い返す、
「でしょー」
「そんな事言ってないですよ」
「言ってたー」
「嘘です」
「嘘じゃないでしょー」
「絶対ウソー」
ワーキャー始まるジャネットとルル、はいはいどっちでもいいわよとユーリがその場を治める、心の底からどうでもいいし、その当たる当たらないの仕組みも今一つ理解していない、もしかしたら魔法による介入が可能なのかもしれないが、そこまで詳しく把握していなかった、すると、
「あっ・・・」
とタロウが一言呟いて腰を上げ、
「悪い、ソフィア、小皿を少し貸してくれ」
丁度こちらの炬燵に盆を持って来たソフィアに囁く、
「なに?小皿でいいの?」
「うん、そんなに多くないからな、喧嘩するなよお前ら」
タロウは不愉快そうに生徒達を見下ろす、喧嘩?と生徒達はボケッとタロウを見上げ、しかしすぐに、
「トマトですか!!」
サレバが大声を上げて立ち上がる、あーと思い出す生徒達、
「ん、その通りだ、トマトそのものは数が少なくてな、漬物もあるけどそっちはいっぱいあるぞ」
ムフンと鼻を鳴らし踏ん反り返るタロウ、ヤッターと騒ぎ出す生徒達、
「あっ、じゃ、種、種、集めましょう、ね、出来ますよね」
サレバがワタワタと炬燵を回り込み、もうとコミンも腰を上げる、
「ん、それもいいね、そっか、今から採取しておいてもいいかもなー」
「ですよね、やります、やらせて下さい」
グワッとタロウに縋るサレバ、ソフィアはまったくと呆れ顔で、テラは結局優しいんだからタロウさんはと柔らかく微笑んでしまう、
「じゃ、どうしようかな、まずこれが、生のトマトな」
タロウが懐からトマトを一つ取り出すと、これですかとサレバが受け取る、ヘーとその真っ赤な果実に視線が集まった、
「ほれ、それは置いておいて、切り分けようか、もう少しあるから」
ハイッと元気よく答えるサレバ、しかしサレバは手にしたトマトを手放す事ができないようで、コミンがムーとサレバを睨みつける、
「まったく・・・じゃ、こっちをじっくり観察してな、ほら、ミナ、これがトマトだ、ハナコと全然違うだろ」
とタロウがトマトをもう一つ取り出し生徒達の炬燵に乗せた、ワッと集まる生徒達、
「確かに真っ赤だ・・・」
「うん、これがトマトかー」
「美味しいの?」
「美味しいですよ、酸味が気持ち良いのです、柔らかい酸味なんですよね」
エレインがニコニコと自慢げに微笑む、ホヘーと感心する生徒達、大人達とティルとミーン、オリビアもこれかーと覗き込む、
「・・・いい色ですね、可愛い・・・」
「うん、ちゃんと描きたいなー」
「もう、ニコさんはそれなんだからー」
「えー、リンゴの赤とも違いますしー、なんか鮮烈です・・・絵具の調合が難しそう」
「もう、またそんな事言い出してー」
「ハナコー、トマトだよー、分かるー」
ミナがトマトにハナコを近づけるもハナコはまるで感心が無いのかプイッとそっぽを向いてしまう、
「ありゃ、嫌いなのかな?」
「あっ、多分そうだねー」
タロウがのほほんと微笑んだ、そうなの?と視線がタロウに集まる、
「うん、まぁ無理に食べさせない方がいいね、犬も猫もさ、嫌いな食べ物も苦手な食べ物もあるからね、トマトはあまり好みじゃないんだろうね」
そっかーと残念そうにトマトを見つめるミナ、
「じゃ、やるか、あっ、悪い、すぐ終わるから」
タロウは少し待ってくれなと一同を見渡す、既に夕食の準備は終わっており、旨そうな匂いが食堂に満ち、二つの炬燵は皿でいっぱいになっている、
「そうね、冷めちゃうからね、ほら、何をどうしたいの?」
ソフィアがやれやれと厨房へ向かい、これは大事だとティルとミーンも続く、サレバが踊るような足取りでそれに続き、やれやれとコミンも厨房へ向かった、
「楽しみですねー」
グルジアがニコニコとその背を見つめ、
「そうねー・・・しっかし、こんな野菜があるなんてね・・・」
「これはこのまま食べれるの?」
「はい、昨日はこれの四つ切くらいのを頂きました」
「へー・・・しっかしどこから持って来るんだかあのヤローもまったく」
フンと鼻息を荒くするユーリ、まったくですよと呆れつつウフフと笑顔になってしまう一同であった。
「ハナコー、ハナコ、返してー」
ダダッとミナがタロウに駆け寄り、タロウは花子?と首を傾げた、随分と古風な名前でさらには妙にどこかをくすぐられる懐かしくもむず痒い響きである、
「アレサでしょー」
ブーとジャネットが叫び、こらこらと呆れ顔で微笑む他の女性達、
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「えーーーー、だってさー、アレサの方が可愛いでしょー」
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「えー、絶対、アレサださー、ねー、ルルもそう思うでしょー」
ジャネットはすっかり舎弟扱いのルルに同意を求めるも、ルルはどうでもいいですよーとあっさりとしたもので、
「何だよそれー、アレサ、アレサが正しい」
ムーと不愉快そうに顔を顰めてムンと胸を張るジャネット、
「だめー、ハナコはハナコー、自分で選んだんだからハナコなのー」
「だからー、それが駄目だってー、ワンコに名前なんて分かんないよ絶対」
「わかるー、ハナコは賢いのー、ジャネットより賢いんだからー」
「あー、言ったなー」
ワーギャーと喚き散らすミナとジャネット、タロウはあっ、子犬の名前かと抱き抱える子犬を見下ろす、子犬はヘッヘッと鼻を鳴らして興味深そうに食堂内を見渡していた、
「そっかー、君はハナコになったのかー」
優しく問いかけるとオフッと嬉しそうにタロウを見上げるハナコ、
「そうなのー、ハナコになったー、ハナコがね自分で選んだのー」
ミナがジャネットはもういいとばかりにタロウの足に抱き着いた、ジャネットも漸く満足したのかムフーと楽しそうに鼻を鳴らして腰を下ろす、単にミナをからかって遊んでいただけのようである、
「自分で選んだの?」
「うん、レインがねー、選ばせればいいのじゃーって言って、ミナがね、オリガミに名前を書いて、そしたらハナコが選んだの」
「あー、そういう事か・・・ホントに君は賢いなー」
「そうなの、ハナコは賢いのー」
「ん、じゃ、ハナコ宜しくな」
タロウはハナコに笑いかけ、ハナコはワフッと返事をしたような気がする、タロウは理解しているんだろうなと微笑みつつハナコをミナに預けると、ミナはウフフーと嬉しそうに受け取り胸に抱いた、ハナコも大人しくされるがままである、
「でもなー、アルテミスもいいよなー」
しかしブーブーと不満気げなのはジャネットのようで、
「そんなに拘ってたんですか?」
ルルがまったくと眉を顰める、
「拘ってたって程じゃないけどさー、ハナコかー・・・なんていうか上品さがないなー」
「そんな事言ってー、アレサだって・・・それほどじゃないですか?」
「それほどだよー良い名前じゃないさー」
「そうですけど、ハナコも良いと思いますよ、聞き慣れない名前だし、なんかお洒落です」
うんうんと大きく頷いて同意を示す、同じ炬燵を囲むサレバにコミンにレスタにケイス、
「ならだって、アルテミスー」
「いい加減になさい」
ジロリとジャネットを睨んだのはエレインである、
「えー、だってー」
「だってじゃないですよ、ミナちゃんの飼い犬なんだからあなたが口を出すのは違うでしょ」
「そうだけどー・・・欲しいなー、ワンコ、ミナっちいいなー」
炬燵のテーブルに顎を乗せ、羨まし気にハナコを抱くミナを見つめるジャネットである、ミナはミナで良いでしょーとばかりに微笑むものだから、ムーと睨んでしまうジャネット、ハナコはハナコでその細い腕の座り心地が悪いのかもぞもぞと座り直して落ち着いたようで、
「あっ、そうだ、明日ってさ、偉い人達来るの?」
よっと炬燵に腰を下ろすタロウ、炬燵ももうすっかり馴染んでしまっており、二つ並んだそれは何気に生徒とそれ以外といった感じで住み分けまでされてしまった、となれば普段使いのテーブルと同じように定位置も決まりつつある、タロウとしては随分と大きな炬燵になってしまったと作った当初は少しばかり後悔したが、その大きさが功を奏した形となっていた、これはこれで良かったなと満足していたりする、
「はい、そのようですよ」
テラがサッと顔を上げ、ニコリーネは眩しそうにミナとハナコを見つめている、
「明日は恐らくですが、王妃様がいらっしゃいますウルジュラ様も」
テラがそう続けると、ユラ様ーとミナがピョンと反応する、
「はい、いらっしゃいますよ」
ニコリと返すテラ、
「そっかー、連絡あった?」
「はい、アフラさんがいらっしゃいました」
「あっ、なるほど・・・じゃ、そういう事でいいんじゃないの?」
とタロウが階段から下りて来たばかりのユーリを見上げた、
「何が?」
当然話の流れを把握していないユーリが問い返す、
「明日、王妃様とウルジュラ様が来るってさ」
「あっ、それの事」
「そっ、それの事」
「そっか・・・じゃ、御本人様達に確認してからでいいか」
「それがいいだろうね」
ユーリと所員達も炬燵に足を入れる、あー、あったかーいと微笑むカトカ、やっぱり三階にも欲しいなーと恨めし気にユーリを見つめるも、ユーリはまるで無視である、
「何かあるんですか?」
テラが問いかけ、エレインも振り返った様子であった、
「うん、ほら、こいつのあれのあの報告書が出来たからね、関係各所に届けたくてね」
ユーリがタロウを顎で指す、タロウはそうだねーと背中を丸めた、
「あっ、それ、読みたいです」
パッと振り返ったのはグルジアとレスタであった、
「ん、いいわよー、あれ?でも読んでなかった?」
「まだですよー、オリビアさんがすんごい勉強になったって言ってました、メイド科の先輩達も」
ねーとグルジアが同意を求めるとウンウンと大きく頷くレスタ、そうだったと顔を上げるコミンとケイス、そのオリビアの姿は無い、恐らく厨房でソフィア達を手伝っているのであろう、
「そっか、じゃ、余った分持って来るか」
ユーリがサビナに確認すると、
「ですね、二部くらいは食堂に置いておきましょう、あっ、エレインさんの方にも二部くらいでいい?もっと欲しい?」
サビナが首を伸ばすと、頂けるんですかとエレインが嬉しそうに微笑む、当然ですよーと微笑むサビナ、であれば文句はいいませんと返すエレインである、つまり二部で充分ということかなとサビナは解釈し、じゃそれでとなったようであった、そこへ、
「はーい、テーブル片付けてー」
とソフィアが盆を構えて食堂に入ってきた、ハーイと炬燵を片付ける生徒達、何やら木簡やら書類やらを広げていた様子で、
「どしたの?それ?」
ユーリが今更ながらにテラに問う、
「あっ、明日のお仕事ですよ、タカラクジの勉強ですね、段取りやら何やら、難しくはないんですが簡単でも無いんです、まぁ、うちの従業員はあくまでお手伝いなんですけどね」
「タカラクジ・・・あー、言ってたわねー、何だっけ?」
「領主様の金策です」
テラがあっさりと答え、身も蓋も無いなーとタロウは苦笑する、と同時に流石テラさんだなーとも感じる、その本質と意義を見透かしているらしい、もしくはフィロメナさんあたりが正直にそう言ってしまったんだろなと勘繰るタロウであった、
「へー、金策ねー・・・あっ、ギルドでもなんかやってたわねー、是非買って下さいって頼まれたわ、先生なら絶対当たりますーって・・・ホントかしら・・・」
「そうなんですか?」
「そうよー」
「じゃ、買って下さい」
ジャネットが勢いよく振り返る、
「んー、気が向いたらねー」
「そう言わないで下さいよー、ユーリ先生なら絶対当たりますからー」
「アンタもか・・・まったく、それホントだな?絶対当たるんだなぁ?」
ジロリとジャネットを睨むユーリ、ジャネットはエートっと薄ら笑いを浮かべ、
「ほら、先生の得意な魔法とかでなんとか?」
と疑問で返す始末、
「どんな魔法よ・・・」
「一等が当たる魔法です」
「・・・あんたねー、その辺の子供ならいいけど、まがりなりにも魔法学園の生徒がそんな事を言うな」
「えー、だってー、ねー、ルルっちとも話してたんだよー、ユーリ先生なら絶対当てるってー」
「えっ、私ですか?」
ルルが皿を並べながら問い返す、
「でしょー」
「そんな事言ってないですよ」
「言ってたー」
「嘘です」
「嘘じゃないでしょー」
「絶対ウソー」
ワーキャー始まるジャネットとルル、はいはいどっちでもいいわよとユーリがその場を治める、心の底からどうでもいいし、その当たる当たらないの仕組みも今一つ理解していない、もしかしたら魔法による介入が可能なのかもしれないが、そこまで詳しく把握していなかった、すると、
「あっ・・・」
とタロウが一言呟いて腰を上げ、
「悪い、ソフィア、小皿を少し貸してくれ」
丁度こちらの炬燵に盆を持って来たソフィアに囁く、
「なに?小皿でいいの?」
「うん、そんなに多くないからな、喧嘩するなよお前ら」
タロウは不愉快そうに生徒達を見下ろす、喧嘩?と生徒達はボケッとタロウを見上げ、しかしすぐに、
「トマトですか!!」
サレバが大声を上げて立ち上がる、あーと思い出す生徒達、
「ん、その通りだ、トマトそのものは数が少なくてな、漬物もあるけどそっちはいっぱいあるぞ」
ムフンと鼻を鳴らし踏ん反り返るタロウ、ヤッターと騒ぎ出す生徒達、
「あっ、じゃ、種、種、集めましょう、ね、出来ますよね」
サレバがワタワタと炬燵を回り込み、もうとコミンも腰を上げる、
「ん、それもいいね、そっか、今から採取しておいてもいいかもなー」
「ですよね、やります、やらせて下さい」
グワッとタロウに縋るサレバ、ソフィアはまったくと呆れ顔で、テラは結局優しいんだからタロウさんはと柔らかく微笑んでしまう、
「じゃ、どうしようかな、まずこれが、生のトマトな」
タロウが懐からトマトを一つ取り出すと、これですかとサレバが受け取る、ヘーとその真っ赤な果実に視線が集まった、
「ほれ、それは置いておいて、切り分けようか、もう少しあるから」
ハイッと元気よく答えるサレバ、しかしサレバは手にしたトマトを手放す事ができないようで、コミンがムーとサレバを睨みつける、
「まったく・・・じゃ、こっちをじっくり観察してな、ほら、ミナ、これがトマトだ、ハナコと全然違うだろ」
とタロウがトマトをもう一つ取り出し生徒達の炬燵に乗せた、ワッと集まる生徒達、
「確かに真っ赤だ・・・」
「うん、これがトマトかー」
「美味しいの?」
「美味しいですよ、酸味が気持ち良いのです、柔らかい酸味なんですよね」
エレインがニコニコと自慢げに微笑む、ホヘーと感心する生徒達、大人達とティルとミーン、オリビアもこれかーと覗き込む、
「・・・いい色ですね、可愛い・・・」
「うん、ちゃんと描きたいなー」
「もう、ニコさんはそれなんだからー」
「えー、リンゴの赤とも違いますしー、なんか鮮烈です・・・絵具の調合が難しそう」
「もう、またそんな事言い出してー」
「ハナコー、トマトだよー、分かるー」
ミナがトマトにハナコを近づけるもハナコはまるで感心が無いのかプイッとそっぽを向いてしまう、
「ありゃ、嫌いなのかな?」
「あっ、多分そうだねー」
タロウがのほほんと微笑んだ、そうなの?と視線がタロウに集まる、
「うん、まぁ無理に食べさせない方がいいね、犬も猫もさ、嫌いな食べ物も苦手な食べ物もあるからね、トマトはあまり好みじゃないんだろうね」
そっかーと残念そうにトマトを見つめるミナ、
「じゃ、やるか、あっ、悪い、すぐ終わるから」
タロウは少し待ってくれなと一同を見渡す、既に夕食の準備は終わっており、旨そうな匂いが食堂に満ち、二つの炬燵は皿でいっぱいになっている、
「そうね、冷めちゃうからね、ほら、何をどうしたいの?」
ソフィアがやれやれと厨房へ向かい、これは大事だとティルとミーンも続く、サレバが踊るような足取りでそれに続き、やれやれとコミンも厨房へ向かった、
「楽しみですねー」
グルジアがニコニコとその背を見つめ、
「そうねー・・・しっかし、こんな野菜があるなんてね・・・」
「これはこのまま食べれるの?」
「はい、昨日はこれの四つ切くらいのを頂きました」
「へー・・・しっかしどこから持って来るんだかあのヤローもまったく」
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悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
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