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15.レスターの実力(メレディス視点)
しおりを挟む「ん……メレディス様?」
「すまない、起こしたか?」
「……寂しかったです」
そう言うと、レスターは私の寝衣の胸元をギュッと握って顔を埋めてきた。
起きているのか? それとも寝ぼけているのか? 分からないが、彼は頼れる者が少ない。寂しい思いをさせてしまったのは本当のことなんだろう。
「ごめん。明日はずっと側にいるからな」
「うん」
愛しい。可愛い。もう打ち明けてしまいたい。彼が好きだと。
「え? メレディス様? いつの間に? あ、おはようございます」
「おはよう。レスター」
残念だが、夜中のことは覚えていない様子だった。寝ぼけていただけだったか。
「メレディス様、書斎の整理、終わりましたよ」
「え? もう終わったのか? まだ1ヶ月ほどしか経っていないと思うんだが」
「先週には終わっていたんですが、言う機会がなくて今になってしまいました」
「そうか。ありがとう。あとで見せてもらおう」
早くても3ヶ月ほどはかかると思っていた。
どうやったのかは知らないが、学業だけでなくこのような場面でも優秀なんだな。
教師のマイストが手伝ったのかもしれない。後で聞いてみよう。
彼の授業が終わると、私はマイストを呼び出した。
「最近のレスターはどうだ?」
「相変わらず優秀ですよ。最近は魔法陣に興味を持ったとかで、私も彼と共に勉強していて楽しいです」
「そうか。それで、書類の整理はお前も手伝ってくれたのか?」
「手伝ってはいませんね。話には聞いていますが」
「そうなのか」
「メレディス様から仕事をもらったのだと嬉しそうに話してくれました。
しかし、機密書類があるかもしれないから内容は教えられないし、中にも入れられないと言われましたよ」
「それでは、彼が一人でやったんだな」
「えぇ」
特に何も言ってはいないが、済んだものであっても確かに機密書類はあるかもしれないな。
そこまで私でも気が回っていなかったというのに、確かに優秀だ。
しっかり秘密を守れるのは実にいい。私の部下にほしいくらいだ。
「レスター」
「はい。今行きます」
レスターと一緒に書斎のドアを開けると、書類は綺麗に箱に分けられていた。
床に無造作に置いてあった書類も無いし、テーブルも綺麗に片付いている。
物置と化していたこの部屋が、このまま仕事ができそうなほど片付いていた。
「ここが10年以上前の書類で、こっちが……」
レスターはどこに何を置いたのかを説明してくれた。
「メレディス様、面白いことが分かったんですよ」
「ん? なんだ?」
「自然災害の報告と要請を確認していくと、南西の地域では約5年に一度の割合で洪水が起きていて、日付も同じなんです。あと、東の火山ですが、定期的に噴火していて、どうも規則性があるみたいなんです。
そのように規則性のある自然災害と、要請があることが面白いと思って、まとめてみたんです」
「もしかして、ここにある書類全てに目を通したのか?」
「はい。そうじゃないと整理できませんから」
「レスター、私の秘書官になってくれ!」
「え?」
優秀だと聞いていたし、話をしていても優秀なのは分かっていた。
しかしこれほどまでとは。
書類整理が思いの外早く終わってしまったため、次はどんな仕事を与えようかと思っていたが、私の側に置いておく方法があっさりと見つかった。
これでずっとレスターと一緒にいられる。
「嫌か?」
「嫌ではないです。
えっと、メレディス様は宰相様なんですよね? 僕は他国の人間ですし、まだ成人も迎えていないし仕事の経験も書類整理しかないです。そんな僕にできますか?」
「レスターにならできると思う。初めはできなくていい。私も初めから何もかもできたわけじゃない。父に付いて学んでいって色々できるようになっていったんだ」
「僕にもできるなら、やりたいです。やらせて下さい」
「そう言ってくれるか。ありがとう」
私は思わずレスターを抱きしめた。
驚いた表情をしたレスターが可愛い。
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