【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

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16.キスと仕事(メレディス視点)

 
「メレディス様、ありがとうございます。僕、メレディス様の側にいられるんですね」
「あぁ、そうだよ」
「嬉しいです。最近少し寂しかったから」

 夜のことは覚えていなくても、寂しかったのは本当だったんだな。
 レスターも私の側にいたいと思ってくれたんだろうか。

「寂しい思いをさせてすまなかった。これから忙しくなるぞ」
「はい。僕、頑張ります」

 レスターは本当にいい子だな。
 私は思わずレスターの髪を撫でていた。
 すると、レスターがみるみるうちに赤く染まっていった。


「どうした?」
「いえ、その……前に髪を撫でてくれた時にソファーでキスしてくれたから、それを思い出して、それで……」

「あ、あぁ……」

 私が大人は危険だと教えようとして失敗した時のことだな……
 そういえばあの時もこの部屋だったか。
 なんとも気まずい雰囲気になってしまったな。



「レスター」
「は、はい」

 俯いていた顔をあげたレスターは、なんとも欲情を煽るような顔をしており、私の側に置いて連れ歩くのが不安になった。

「……そんな顔をしてはダメだ。そんな顔をしていては、先方に目を付けられる。レスターはただでさえ綺麗なんだから、感情のない冷めた表情くらいで丁度いい。できるか?」
「はい。できます!」

「……キス、したいか?」
「したい、です」
「そうか。私もしたい」


 そう言うと、レスターは上を向いて目を閉じた。
 前は怖さと危険を教えるために乱暴なキスをした。
 でも今日は、レスターを労わりたいし、褒めてやりたいし、甘やかしてやりたい。
 こんなに頑張ってくれたんだ。私の期待に応えようと努力する彼も愛おしい。

 頬に触れ、チュッチュッと唇に触れるだけのキスを繰り返す。

「私の首に両手を回して」
「はい」

 恐る恐るという感じで首に回された彼の細い腕にドキドキした。
 私は彼の腰に手を回して引き寄せると、口付けをどんどん深くしていく。


「はぁ……ん……ぁ……」

「レスター可愛い。気持ちいい?」
「はい……ぁ……」

「ちゃんと息はして。止めなくていい」
「はぁ……ぁ……はい……」

 初めは戸惑っていた彼の舌も、私の動きに合わせて絡めてくるようになった。
 健気だ。もう本当に離してやれないと思った。
 レスターはそれを告げたら逃げ出すだろうか?
 彼が本当に私から逃げたいと思うのなら、私はその時には潔く身を引こう。
 でも、彼が私を慕ってくれるうちは手放す気は無い。

 あぁ、やっぱり私はレスターが好きだ。
 抱きしめると、彼は私の胸に頬を寄せた。
 そんなことをするから、心臓の音で私の気持ちがバレてしまうのではないかと冷や冷やしたが、彼は何も言わなかった。



 その日の午後には仕立て屋を呼んで彼の服を注文した。
 翌週には服が仕上がってきたため、彼を連れて職場である王城へ向かった。

「そんなに緊張しなくていい。レスターを一人にすることはないから」
「はい」
「他国の貴族の子息となると色々ややこしいことになるかもしれないから、今は出自については何も言わないことにしよう」
「はい」
「嘘を言うわけにはいかないからな」
「はい」


 言ってもいいんだが、今は明かす時ではない。
 明かすにしても、彼の家族の名誉を回復してからでないと、彼の立場が悪くなってしまうからな。
 陛下にだけは一応話をしてある。
 彼の処刑された家族が無実であることも。
 陛下は、私が秘書官をつけずにいることをずっと心配していたから喜んでくれたし、私が彼に対してそれ以上の感情を持っていることもどうやら気付いているようだった。
 私は分かりやすいのか? ポーカーフェイスを得意としていたはずなのに。

 最初に陛下の元へ連れていくと、ドアを開けるまではとても緊張した様子だったのに、ドアを開けた途端に落ち着き払って堂々と陛下を見据え、綺麗な挨拶をした。
 そして、前に私が言ったことをしっかりと覚えていたようで、無表情で少し冷たい目をしていた。
 きっと彼の兄や親も優秀な人物だったんだろうな。



「こちらはレスター。まだ見習いの扱いだが、いずれ私の秘書官となる者だ。今後ともお見知り置きを」
「随分若い秘書官ですな。宰相殿はもう秘書官など持たずにやっていくのかと思っていましたよ」
「いえ、今までは適任が見つからなかっただけですよ。ずっと彼のような人材を探していたのです」
「ほう、それは良きお人を見つけられたんですな」
「えぇ。それはもう」


「レスター、疲れたか?」
「大丈夫です」
「しばらくはこうした挨拶回りが多くなると思う」
「分かりました」

 執務室には、既に彼の机が用意してあるが、とりあえずは私の横に張り付いて、どんな仕事をしているのかを見学してもらうことにした。


「メレディス様、この陳情ですが、2年前にも全く同じ内容が届いていました」
「ん? レスターは書斎に置いてあった書類に目を通しただけでなく、内容を全て覚えているのか?」
「全て完璧にとはいきませんが、大体の内容は覚えています」
「凄いな。その時の対応を確認してみる」

 レスターは思った以上に優秀だった。
 これで私は、彼を公私共に手放せなくなった。

 彼が心変わりしてしまうのが怖い。
 今は慕ってくれているが、彼はまだ若い。彼の家族の名誉を回復して、家が再興することになったら、彼はオルロー王国に帰ってしまうかもしれない。
 あんな国に置いておきたくないと思うのは私の個人的な感情であって、彼にとっては家族との思い出があり、生まれた国なのだから、帰りたいと言われたら、私に止めることはできない。

 
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