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第35話 昇格の光と妬みの影
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偵察任務から無事帰還したアルトは、すぐに冒険者ギルドへ向かい、収集した情報をギルドマスターに報告した。
ゴブリンの巣の正確な位置、洞窟の構造、おおよそのゴブリンの数(15匹前後)、装備の内容、そしてリーダー格らしき大型個体の存在。
見張りのゴブリンを一体、やむを得ず無力化したことも正直に付け加えた。
ギルドマスターは、アルトの報告書とメモに目を通し、その内容の正確さと、冷静な状況判断に深く頷いた。
「ふむ…素晴らしい報告だ、アルト。危険な状況下で、よくぞこれだけの情報を持ち帰った。見張りの対処も、偵察任務としては的確な判断と言えるだろう」
マスターは満足げにアルトを見据え、そして宣言した。
「これまでの功績、そして今回の偵察任務の成功。文句のつけようがない。アルト、君の【Eランク】への昇格を正式に認める!」
「! はいっ!ありがとうございます!」
アルトは、思わず大きな声で返事をした。
ついに、Eランク冒険者へ。
ギフトを授かったあの日、嘲笑され、絶望しかけた自分が、ここまで来れたのだ。
込み上げてくる喜びと達成感に、アルトの胸は熱くなった。
ギルドマスターは、アルトのFランクの銅製プレートを預かり、代わりに少しだけ意匠の凝らされた、銀色の【Eランク】プレートを手渡した。
「これが新しいお前のランクプレートだ。Eランクになれば、受けられる依頼の幅も広がる。だが、それだけ危険も増すということだ。常に気を引き締め、慢心することなく励め」
「はい!」
アルトが力強く頷くと、ギルド内にいた他の冒険者たちから、拍手や祝福の声が上がった。
「おい、アルト!Eランク昇格おめでとう!」
「やるじゃねえか、ルーキー!」
特に、師であるバルガスは、誰よりも大きな声で笑いながらアルトの背中を叩いた。
「でかしたぞ、アルト!俺の目に狂いはなかった!だが、Eランクなんざ、まだまだ始まりに過ぎんからな!これからもビシビシ鍛えてやる!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
アルトは照れながらも、周囲からの温かい祝福に心から感謝した。
自分がこのギルドの一員として、仲間として受け入れられていることを、改めて実感できた瞬間だった。
しかし、全ての冒険者がアルトの昇格を快く思っているわけではなかった。
ギルドの隅のテーブルで、苦々しい表情でアルトを睨みつけている二人組の若者がいた。
キースとレジー。
アルトと同年代の、剣士と斥候のコンビだ。
彼らは、アルトが「使えないギフト持ち」として燻っていた頃を知っていた。
それだけに、最近のアルトの急成長と、ギルド内での評価の高まりが、妬ましくて仕方がないのだ。
「ちっ…なんだってんだよ、あいつ…」
剣士のキースが、忌々しげに吐き捨てる。
「ギフトは役立たずのダメージ反射なんだろ?バルガス爺さんに気に入られて、いい気になりやがって…」
「まったくだぜ、キース」
斥候のレジーが、ずる賢い笑みを浮かべて同調する。
「どうせ、まぐれ当たりか、誰かの手柄を横取りしただけだろ。ちょっと痛い目に遭わせて、現実を教えてやる必要があるんじゃねえか?」
「ああ、そうだな…」
キースは、ギルドを出ていくアルトの後ろ姿を、暗い瞳で見送っていた。
その数日後。
アルトがバルガスとの訓練を終え、汗だくになって訓練場から帰ろうとした時のことだった。
キースとレジーが、道の真ん中でわざとらしく立ち話をしていた。
アルトが通りかかると、キースがわざとアルトの方へ肩をぶつけてきた。
「おっと、危ねえな!どこ見て歩いてんだ、てめえ!」
明らかに、言い掛かりをつけるつもりだ。
しかし、アルトは、日々のフットワーク訓練の成果か、あるいは無意識の反応か、キースがぶつかってくる直前に、まるで流れるようなステップで、ひらりとその体をかわしていた。
「え?……あ、すみません」
アルトは、ぶつかりそうになった(ように見えた)ことに対して、素直に謝ると、そのまま通り過ぎようとした。
キースは、完全に肩透かしを食らった形になり、あっけにとられてアルトの後ろ姿を見送るしかなかった。
「な……なんだ、あいつ!?」
「わざとかわしたのか…?」
レジーも信じられないといった表情だ。
別の日。
アルトが一人で素振りの練習をしていると、近くの茂みからレジーが、アルトの足元めがけて小石をいくつか転がしてきた。
アルトを転ばせて、笑いものにするつもりなのだろう。
しかし、アルトは剣の軌道と自身の体の動きに集中しており、足元の些細な変化にも、訓練で培われた感覚が自然と反応した。
転がってきた石を、彼は踏むことなく、まるで最初からそこに道があったかのように、ステップを踏んで避けてしまう。
アルト自身は、石が転がってきたことにすら気づいていないかもしれない。
「……効かねえ」
レジーは、茂みの中で悪態をついた。
さらに別の日。
今度はキースが、アルトがダミー相手に打ち込みの練習をしている最中に、わざと近くで大声を出したり、訓練場の隅にあった石ころをアルトの近くに投げ込んだりして、集中力を削ごうとした。
しかし、アルトは驚くほど冷静だった。
バルガスの厳しい指導の下で、多少の妨害には動じない集中力が身についていたのだ。
それどころか、近くに投げ込まれた石ころが、打ち込みの邪魔になりそうだと感じた瞬間、アルトはほとんど無意識のうちに、ショートソードの腹で石ころを払い、同時にギフトの「衝撃波(仮)」のようなものを放っていた。
パンッ!
石ころは、アルトが意図したわけでもないのに、弾き飛ばされ、キースの足元近くまで飛んでいった。
「うおっ!?」
キースは驚いて飛びのき、アルトを睨みつけた。
だが、アルトは気にも留めず、再びダミーへの打ち込みに集中している。
「なんなんだよ、あいつは……!?」
キースとレジーは、自分たちの嫌がらせが全く通用しないどころか、アルトが全く意に介していない(ように見える)ことに、拍子抜けすると同時に、得体の知れない不気味さと苛立ちを感じ始めていた。
「気味が悪い奴だぜ…」
「ああ、何か、俺たちとは違う…」
一方のアルトは、自分が嫌がらせを受けているとは夢にも思っていなかった。
彼は、Eランク冒険者になったという喜びと、新たな目標――剣術とギフトのさらなる向上、そしてEランク依頼への挑戦――に心を向けていた。
周囲に渦巻く妬みの影など、彼の視界には入っていないかのようだった。
無意識のうちに発揮される回避能力や、ギフトの応用。
それは、アルトの地道な努力と、類稀なるギフトの特性が融合し始めた証なのかもしれない。
Eランクという新たなステージに立ったアルト。
その前途には、光だけでなく、新たな軋轢という影もまた、忍び寄ってきているのだった。
しかし、今のアルトは、ただひたすらに前だけを見据え、自身の道をまっすぐに進もうとしていた。
ゴブリンの巣の正確な位置、洞窟の構造、おおよそのゴブリンの数(15匹前後)、装備の内容、そしてリーダー格らしき大型個体の存在。
見張りのゴブリンを一体、やむを得ず無力化したことも正直に付け加えた。
ギルドマスターは、アルトの報告書とメモに目を通し、その内容の正確さと、冷静な状況判断に深く頷いた。
「ふむ…素晴らしい報告だ、アルト。危険な状況下で、よくぞこれだけの情報を持ち帰った。見張りの対処も、偵察任務としては的確な判断と言えるだろう」
マスターは満足げにアルトを見据え、そして宣言した。
「これまでの功績、そして今回の偵察任務の成功。文句のつけようがない。アルト、君の【Eランク】への昇格を正式に認める!」
「! はいっ!ありがとうございます!」
アルトは、思わず大きな声で返事をした。
ついに、Eランク冒険者へ。
ギフトを授かったあの日、嘲笑され、絶望しかけた自分が、ここまで来れたのだ。
込み上げてくる喜びと達成感に、アルトの胸は熱くなった。
ギルドマスターは、アルトのFランクの銅製プレートを預かり、代わりに少しだけ意匠の凝らされた、銀色の【Eランク】プレートを手渡した。
「これが新しいお前のランクプレートだ。Eランクになれば、受けられる依頼の幅も広がる。だが、それだけ危険も増すということだ。常に気を引き締め、慢心することなく励め」
「はい!」
アルトが力強く頷くと、ギルド内にいた他の冒険者たちから、拍手や祝福の声が上がった。
「おい、アルト!Eランク昇格おめでとう!」
「やるじゃねえか、ルーキー!」
特に、師であるバルガスは、誰よりも大きな声で笑いながらアルトの背中を叩いた。
「でかしたぞ、アルト!俺の目に狂いはなかった!だが、Eランクなんざ、まだまだ始まりに過ぎんからな!これからもビシビシ鍛えてやる!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
アルトは照れながらも、周囲からの温かい祝福に心から感謝した。
自分がこのギルドの一員として、仲間として受け入れられていることを、改めて実感できた瞬間だった。
しかし、全ての冒険者がアルトの昇格を快く思っているわけではなかった。
ギルドの隅のテーブルで、苦々しい表情でアルトを睨みつけている二人組の若者がいた。
キースとレジー。
アルトと同年代の、剣士と斥候のコンビだ。
彼らは、アルトが「使えないギフト持ち」として燻っていた頃を知っていた。
それだけに、最近のアルトの急成長と、ギルド内での評価の高まりが、妬ましくて仕方がないのだ。
「ちっ…なんだってんだよ、あいつ…」
剣士のキースが、忌々しげに吐き捨てる。
「ギフトは役立たずのダメージ反射なんだろ?バルガス爺さんに気に入られて、いい気になりやがって…」
「まったくだぜ、キース」
斥候のレジーが、ずる賢い笑みを浮かべて同調する。
「どうせ、まぐれ当たりか、誰かの手柄を横取りしただけだろ。ちょっと痛い目に遭わせて、現実を教えてやる必要があるんじゃねえか?」
「ああ、そうだな…」
キースは、ギルドを出ていくアルトの後ろ姿を、暗い瞳で見送っていた。
その数日後。
アルトがバルガスとの訓練を終え、汗だくになって訓練場から帰ろうとした時のことだった。
キースとレジーが、道の真ん中でわざとらしく立ち話をしていた。
アルトが通りかかると、キースがわざとアルトの方へ肩をぶつけてきた。
「おっと、危ねえな!どこ見て歩いてんだ、てめえ!」
明らかに、言い掛かりをつけるつもりだ。
しかし、アルトは、日々のフットワーク訓練の成果か、あるいは無意識の反応か、キースがぶつかってくる直前に、まるで流れるようなステップで、ひらりとその体をかわしていた。
「え?……あ、すみません」
アルトは、ぶつかりそうになった(ように見えた)ことに対して、素直に謝ると、そのまま通り過ぎようとした。
キースは、完全に肩透かしを食らった形になり、あっけにとられてアルトの後ろ姿を見送るしかなかった。
「な……なんだ、あいつ!?」
「わざとかわしたのか…?」
レジーも信じられないといった表情だ。
別の日。
アルトが一人で素振りの練習をしていると、近くの茂みからレジーが、アルトの足元めがけて小石をいくつか転がしてきた。
アルトを転ばせて、笑いものにするつもりなのだろう。
しかし、アルトは剣の軌道と自身の体の動きに集中しており、足元の些細な変化にも、訓練で培われた感覚が自然と反応した。
転がってきた石を、彼は踏むことなく、まるで最初からそこに道があったかのように、ステップを踏んで避けてしまう。
アルト自身は、石が転がってきたことにすら気づいていないかもしれない。
「……効かねえ」
レジーは、茂みの中で悪態をついた。
さらに別の日。
今度はキースが、アルトがダミー相手に打ち込みの練習をしている最中に、わざと近くで大声を出したり、訓練場の隅にあった石ころをアルトの近くに投げ込んだりして、集中力を削ごうとした。
しかし、アルトは驚くほど冷静だった。
バルガスの厳しい指導の下で、多少の妨害には動じない集中力が身についていたのだ。
それどころか、近くに投げ込まれた石ころが、打ち込みの邪魔になりそうだと感じた瞬間、アルトはほとんど無意識のうちに、ショートソードの腹で石ころを払い、同時にギフトの「衝撃波(仮)」のようなものを放っていた。
パンッ!
石ころは、アルトが意図したわけでもないのに、弾き飛ばされ、キースの足元近くまで飛んでいった。
「うおっ!?」
キースは驚いて飛びのき、アルトを睨みつけた。
だが、アルトは気にも留めず、再びダミーへの打ち込みに集中している。
「なんなんだよ、あいつは……!?」
キースとレジーは、自分たちの嫌がらせが全く通用しないどころか、アルトが全く意に介していない(ように見える)ことに、拍子抜けすると同時に、得体の知れない不気味さと苛立ちを感じ始めていた。
「気味が悪い奴だぜ…」
「ああ、何か、俺たちとは違う…」
一方のアルトは、自分が嫌がらせを受けているとは夢にも思っていなかった。
彼は、Eランク冒険者になったという喜びと、新たな目標――剣術とギフトのさらなる向上、そしてEランク依頼への挑戦――に心を向けていた。
周囲に渦巻く妬みの影など、彼の視界には入っていないかのようだった。
無意識のうちに発揮される回避能力や、ギフトの応用。
それは、アルトの地道な努力と、類稀なるギフトの特性が融合し始めた証なのかもしれない。
Eランクという新たなステージに立ったアルト。
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