落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第45話 アンデッドの骨と反射の衝撃

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一体目のスケルトン兵を沈黙させ、アルトは即座に残る二体へと意識を切り替えた。
墓地に響くのは、骨が擦れ合う耳障りな音と、アルト自身の荒い呼吸音だけ。
骨の戦士たちは、仲間の骸にも全く動じる様子を見せず、ただ無機質な殺意をたたえた空っぽの眼窩を侵入者に向け、じりじりと距離を詰めてくる。

二対一。
まだ数の上では不利だが、アルトの動きには先ほどまでのような硬さが消えていた。
一度、スケルトン兵の攻撃パターンと、それに対する有効な戦術(カウンター反射)を経験したことで、彼の立ち回りには明確な自信と落ち着きが生まれていたのだ。

右手のショートソードで一体の斬撃を受け流し、同時に左腕のバックラーでもう一体の突きを防ぐ。
まるで訓練のように、しかし実戦の緊張感の中で、剣と盾の連携が流れるように決まる。
バルガスとの厳しい訓練の日々が、血肉となっていることを実感する。

防御だけではない。
アルトは好機を逃さなかった。
一体のスケルトンが、大きく錆びた剣を振りかぶった。
その動きは単調で、隙が大きい。
アルトはその攻撃を、あえてバックラーで正面から受け止めた。
ガキン!という衝撃と共に、左腕に鈍い痺れが走る。
しかし、アルトはその衝撃に耐え、体重を乗せ、ギフトを発動!

バキィッ!
甲高い破砕音が響き渡る。
カウンター反射の衝撃を受けたスケルトン兵の肋骨が、まるで枯れ枝のように数本砕け散った。
その衝撃で体勢を大きく崩し、前のめりによろめく。

(今だ!)

アルトはその隙を見逃さなかった。
素早く踏み込みながら、ショートソードを突き出す。
狙いは頭部。
剣先は、空っぽの眼窩の奥深く、頭蓋骨の内側にあると言われる魔力の源――あるいはそれに類する何か――を正確に捉えた。
グシャリ、という鈍い手応え。
スケルトンはガクンと動きを止め、力なくその場に崩れ落ちた。

残るは一体。
アルトは息を整え、最後の敵と対峙する。
仲間たちが次々と破壊されていくのを目の当たりにしても、最後の一体は表情一つ変えない。
感情というものが、そこには存在しないのだ。
ただ、プログラムされた人形のように、錆びた剣を構え、アルトに向かってくる。
その無機質さが、逆に不気味なプレッシャーとなっていた。

アルトは、もはや油断なく、しかし確かな自信を持って迎え撃つ。
剣で相手の攻撃をいなし、バックラーで致命的な一撃を防ぐ。
そして、相手が力を込めて攻撃してきた瞬間を狙い、カウンター反射を叩き込む。
一度、二度、三度……。
反射の衝撃が、スケルトンの骨格を確実に蝕んでいく。

バキッ!メキッ!
腕の骨が砕け、脚の関節が外れ、それでもスケルトンは動きを止めようとしない。
その執念とも呼べる動きに、アルトはアンデッドという存在の異質さを改めて感じていた。
痛みも恐怖も感じない敵。
それは、生物系の魔物とは全く違う種類の、厄介な手強さを持っていた。

最後は、アルトが放った渾身のカウンター反射が、スケルトン兵の頭蓋骨そのものを直撃した。
パリンッ!と乾いた音を立てて頭蓋骨が粉々に砕け散り、ようやく三体目の骨の戦士も、完全にその活動を停止した。

しん……。
古い墓地に、完全な静寂が戻った。
アルトの周囲には、もはや動くものは何もない。
ただ、砕けた白い骨と、錆びた鉄の武具が、不気味に散らばっているだけだった。

「はぁ……はぁ……終わった……」

アルトは、その場に膝をつき、大きく息をついた。
全身は汗でびっしょりになり、革鎧もバックラーも、細かい傷がついている。
疲労感は大きい。
しかし、それ以上に、初めてのアンデッド戦を乗り越え、依頼を達成したという確かな達成感が、彼の心を満たしていた。

しばらく休息を取った後、アルトは立ち上がり、討伐の証拠を集め始めた。
バラバラになった骨の中から、比較的損傷の少ない頭蓋骨を3つ選び出し、布袋に慎重に入れる。
これが一番分かりやすい証拠になるだろう。

そして、アルトはスケルトンが現れた原因が気になり、彼らが出てきたと思われる古い霊廟の周辺を、少しだけ調べてみることにした。
霊廟の石造りの扉は、固く閉ざされており、人の手で開けられたような形跡はない。
しかし、その扉のすぐ近くの地面に、アルトは奇妙な跡を発見した。
土が、比較的新しく掘り返されたような跡だ。
それほど深くはないが、明らかに誰かが何かを探したか、あるいは、何かを埋めたかのような痕跡。

「盗掘…?それとも、誰かが何かを埋めたのかな…?気味が悪いな……」

確かなことは何も分からない。
これ以上深入りするのは危険だと判断し、アルトはその場所を記憶に留めておくにとどめ、墓地を後にした。

村に戻ったアルトは、ギルドへ直行し、スケルトン兵3体の討伐完了を報告した。
証拠として頭蓋骨3つをカウンターに置くと、ギルドマスターはその状態を見て頷いた。

「ほう、スケルトンを3体、見事に仕留めてきたか。しかも、アルト、お前自身はほとんど無傷のようだな。アンデッド相手に、どうやって戦ったんだ?」

アルトは、斬撃が効きにくかったこと、打撃や弱点狙いが有効だったこと、そして何よりも、ギフト【ダメージ反射】が骨を砕くのに非常に効果的だったことを正直に報告した。

その報告を聞いたギルドマスターは、興味深そうに腕を組んだ。

「ほう、反射が奴らの骨を砕くのに有効だった、と。それは面白いな。アンデッドには打撃や聖属性が有効と相場が決まっているが、君のギフトも、対アンデッド戦においては強力な切り札になるかもしれん。良い経験になったようだな」

マスターは、約束の報酬である銅貨40枚をアルトに手渡した。

「よくやった、アルト。これでEランクとしての実績も十分と言えるだろう。今後も、その調子でギルドに貢献してくれることを期待しているぞ」

労いの言葉を受け取り、アルトは深く頭を下げた。
近くで話を聞いていたバルガスも、「へっ、言った通りだろうが。お前の反射は、ああいう硬いだけの奴にはよく効くんだ。盾との連携も、だいぶモノになってきたようだな」と、満足げに笑っていた。

初めてのアンデッドとの戦いは、アルトに多くの経験と学びをもたらした。
アンデッドという特殊な敵の特性と、それに対する有効な戦術。
ソード&バックラースタイルの、実戦における確かな手応え。
そして、ギフト【ダメージ反射】の、打撃力・破壊力という新たな可能性。

同時に、霊廟近くで見つけた不審な土の跡や、アンデッドが出現した根本的な原因など、気になる謎も残った。
聖属性の攻撃手段がないことや、精神的な攻撃(もしアンデッドが使ってきたら?)への備えなど、新たな課題も見えてきた。

それでも、Eランク冒険者として、アルトは着実に実力をつけ、対応できる敵の幅を広げている。
今回の経験を糧に、彼はさらなる高みを目指す決意を新たにした。
次はどんな依頼に挑戦しようか。
あるいは、少し時間を取って、ギフトの謎の探求や、剣術のさらなる鍛錬に励むべきか。
アルトの前には、やるべきこと、そしてやりたいことが、山のように広がっている。
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