落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第44話 骨の戦士と砕ける反射

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カチャカチャ、カチャカチャ……。
古い墓地に響くのは、骨と骨が擦れ合う乾いた音。
3体のスケルトン兵が、錆びついた剣と朽ちかけた盾を構え、アルトを取り囲むようにじりじりと距離を詰めてくる。
生ける者の持つ熱や感情とは無縁の、ただただ空虚な眼窩が、侵入者を無機質に見据えていた。

その異様な雰囲気に、アルトは一瞬、背筋が凍るような感覚を覚えた。
しかし、すぐに気を取り直し、右手にショートソード、左腕には新しいバックラーを構える。
相手がアンデッドであろうと、やるべきことは変わらない。

最初に仕掛けてきたのは、アルトの正面にいたスケルトンだった。
錆びた剣を、ぎこちないながらも力任せに振り下ろしてくる。
同時に、左右にいたスケルトンも動き出し、一方は盾で殴りかかり、もう一方は剣での突きを繰り出してきた。
連携と呼べるほど洗練されてはいないが、三方向からの同時攻撃は十分に厄介だ。

(落ち着け…!)

アルトは自分に言い聞かせ、バルガスとの訓練を思い出す。
正面からの剣撃を、ショートソードの側面を使って受け流す。
同時に、左腕のバックラーを素早く動かし、側面からの突きを弾き返す。
カキン!ガンッ!という硬い音が響く。

「盾があると、やっぱり全然違う!」

バックラーのおかげで、複数の攻撃を捌くのが格段に楽になっている。
防御面での安心感が、アルトの立ち回りに余裕を生んでいた。

防御を固めつつ、アルトは反撃の機会をうかがう。
ショートソードで、一体のスケルトン兵の胴体――肋骨が剥き出しになった部分――を狙って斬りつけてみた。
しかし、手応えは鈍い。
ガッ、という嫌な感触と共に、剣は骨に弾かれるか、あるいは骨と骨の隙間を虚しく滑り抜けてしまう。

「やっぱり、斬撃はほとんど効かないのか…!」

ギルドマスターの忠告は正しかった。
ただ斬るだけでは、この骨の戦士を倒すことはできない。

ならば、とアルトは即座に戦術を切り替えた。
斬るのではなく、叩く、そして砕くことを意識する。
ショートソードの切っ先ではなく、側面や、重みのある柄頭(つかがしら)を使って、スケルトン兵の腕や脚の骨を狙って打ち付ける。
バックラーでも、相手の盾を弾き飛ばしたり、あるいは隙を見て頭蓋骨めがけて打ち付けたり(バッシュ)してみる。

これらの打撃は、斬撃よりは多少効果があるようだ。
攻撃を受けたスケルトンが、わずかに動きを鈍らせる。
また、アルトは弱点とされる頭部や、動きの要である脚の関節部分を狙い、剣での精密な突きも繰り出した。
骨と骨の間の、わずかな隙間を狙うのは至難の業だが、何度かの試行の後、一体のスケルトンの膝関節に剣先が入り込み、その動きを大きく阻害することに成功した。

だが、決定打とは言えない。
痛みを感じないスケルトンは、多少動きが鈍っても、構わず攻撃を続けてくる。
もっと効果的なダメージを与える手段は…?
アルトは、バルガスのアドバイスを思い出した。
――お前の反射なら、骨を砕くことも可能かもしれん。

チャンスはすぐに訪れた。
膝を負傷したスケルトン兵が、体勢を崩しながらも、やけくそ気味に錆びた剣を振り下ろしてきた。
アルトはその攻撃を、左腕のバックラーで真正面から受け止めた。
腕に鈍い衝撃が伝わる。
その瞬間、アルトは全神経を集中させ、ギフトを発動させた!

盾越しのカウンター反射!

バキッ!!
乾いた、骨が砕ける甲高い音が、墓地に響き渡った!
反射の衝撃を受けたスケルトン兵の右腕が、肘のあたりから粉々に砕け散り、手にしていた錆びた剣がカランと音を立てて地面に落ちる。
腕を失い、さらには膝も負傷したスケルトンは、もはやまともに動くこともできず、その場に崩れ落ちた。

「やった!反射なら、骨も砕けるんだ!」

切り札を見つけたアルトの目に、闘志の光が強く宿る。
ギフト【ダメージ反射】の衝撃力は、斬撃が効きにくいアンデッドに対しても、極めて有効な攻撃手段となるのだ。

戦い方は決まった。
アルトはバックラーとショートソードで巧みに防御を固め、相手の物理攻撃を誘う。
そして、確実に受け止められる攻撃に対し、的確にカウンター反射を叩き込んでいく。
剣は、主に防御と、反射で動きを鈍らせた後の、弱点への追撃に使う。

痛みを知らないスケルトンは、腕が砕けようが、脚が折れようが、頭蓋骨にヒビが入ろうが、その体が完全に破壊されるまで、あるいは内部の魔力が尽きるまで、ただひたすらに攻撃を繰り返してくる。
その無機質で執拗な動きには、生物相手とは違う、独特の不気味さがあった。
それでも、アルトは冷静さを失わなかった。

まず、最初に動きを封じた一体。
アルトは、崩れ落ちたスケルトンの頭部を、ショートソードの柄頭で容赦なく何度も打ち据え、頭蓋骨を完全に粉砕し、その動きを完全に止めた。
一体目を確実に仕留めたことで、残る二体への対処に集中できる。

残るは二体。
アルトはバックラーを構え直し、次の相手を見据えた。
新しい装備である盾は、彼の防御力を飛躍的に高めてくれた。
そして、新しい戦術――反射による骨砕き――は、アンデッドという特殊な敵に対する、強力な回答となった。
これまでの地道な訓練と、数々の実戦経験が、今、この場で確実に実を結んでいることを、アルトは実感していた。

しかし、戦いはまだ終わっていない。
残るスケルトン兵たちも、仲間の破壊を目の当たりにしながらも、感情を見せることなく、ただただプログラムされたかのように、アルトに向かって骨の剣を振り上げてくる。
アルトは気を引き締め、残る骨の戦士たちとの戦いを続けた。
初めてのアンデッドとの戦いは、彼に新たな課題――例えば、精神的な攻撃への耐性など――を突きつけつつも、同時に大きな自信と、戦術の幅を広げるという確かな成果を与えようとしていた。
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