落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第57話 Dランクへの最後の試練

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Eランク冒険者として数々の依頼をこなし、ギルド内での評価も確固たるものとなったアルト。
彼の視線は、すでに次なるステージ――Dランク――へと向けられていた。
そんなアルトの意気込みを知ってか知らずか、ギルドマスターは彼に一つの依頼を提示した。

「アルト、お前に任せたい依頼がある」

それは、以前アルトがリーダーであるホブゴブリンを討伐した、あの西の森のゴブリンの巣に関するものだった。

「君の報告によれば、巣の主は倒したものの、まだかなりの数の残党が潜んでいる可能性がある。リーダーを失い、統率が乱れている今が、巣を完全に掃討し、脅威の芽を摘む好機だ。これは、Eランク依頼としては最高難度になるだろう。……どうだ、引き受ける覚悟はあるか?」

依頼内容は『ゴブリンの巣・完全掃討』。
報酬は銀貨5枚と、これまでの依頼とは桁が違う。
そして、この依頼の達成こそが、Dランク昇格への最後の鍵となるであろうことを、アルトは直感した。

「はい、やらせてください!」

アルトは、迷うことなく即答した。
因縁の場所。
そして、自分の成長を証明するための、最高の舞台だ。

アルトは、この任務のために周到な作戦を立てた。
前回の潜入で、巣の内部構造はほぼ頭に入っている。
リーダーを失ったゴブリンたちが、どのように動くか。
おそらく、統率は乱れ、小グループに分散しているか、あるいは恐怖から洞窟の奥に籠っている可能性もある。
アルトは、奇襲と分断、そして各個撃破を基本方針とし、洞窟の入り口から順に、各エリアを確実に制圧していく計画を立てた。

装備の準備も怠らない。
修理と強化を終えた革鎧とバックラー、鋭く研ぎ澄まされたショートソード。
回復薬や解毒薬草、そして十分な量の松明とロープ。
考えうる限りの準備を整え、アルトは三度(みたび)、あの忌まわしいゴブリンの巣窟へと向かった。

洞窟の入り口には、やはり数匹の見張りがいた。
しかし、以前のような緊張感はなく、どこかだらけた様子だ。
リーダー不在の影響は明らかだった。
アルトは隠れることなく、堂々と見張りの前に姿を現した。

「キィ!?」
突然現れたアルトに驚き、ゴブリンたちが慌てて武器を構える。
だが、もはやアルトの敵ではなかった。
洗練された剣捌きで攻撃をいなし、バックラーで打撃を防ぎ、そしてカウンター反射で骨を砕く。
見張りのゴブリンたちは、抵抗らしい抵抗もできないまま、あっという間に沈黙した。

洞窟内部へと侵入する。
以前感じたような、統率された集団の気配はない。
ゴブリンたちは、洞窟内のあちこちに、数匹ずつの小グループで潜んでいるようだった。
アルトは、松明の灯りを頼りに、慎重に、しかし迷いなく進んでいく。

曲がり角から飛び出してきたゴブリンの奇襲。
アルトはそれをバックラーで受け止め、体勢を崩した相手の喉元に、ショートソードを正確に突き入れた。
小さな広場で焚き火を囲んでいたゴブリンのグループ。
アルトは物陰から飛び出し、まず一体を反射で吹き飛ばして混乱させ、残りを素早い剣技で次々と斬り伏せた。

彼の動きには、以前のような必死さや危うさはない。
そこにあるのは、厳しい訓練と数々の実戦によって培われた、確かな技術と冷静な判断力だった。
剣と盾は、もはや彼の体の一部となり、ギフト【ダメージ反射】は、防御と攻撃を兼ね備えた必殺の切り札として、その威力を遺憾なく発揮していた。

洞窟の奥へ進むにつれて、遭遇するゴブリンの数は減っていった。
リーダーを失い、仲間たちが次々と倒されていく状況に、残った者たちは恐怖を感じ、洞窟のさらに奥深くへと逃げ込んでいるのかもしれない。

アルトは、洞窟の隅々まで探索し、隠れていたゴブリンも残らず掃討した。
そして最後に、ゴブリンたちが貯め込んでいた腐りかけの食料を燃やし、寝床として使っていた汚れた藁を掻き集めて燃やすなどして、この洞窟が二度とゴブリンの巣として使われないように、念入りな後始末を行った。

全ての作業を終え、アルトが洞窟から出た時には、空は高く澄み渡っていた。
洞窟内に漂っていた悪臭も、掃討と後始末によっていくらか薄らいでいるように感じられた。

ギルドへ戻り、アルトはギルドマスターに巣の完全掃討完了を報告した。
マスターは、アルトの落ち着いた様子と、任務遂行の確実さに、深く感心した表情を見せた。

「……見事だ、アルト。報告を聞く限り、完璧な仕事ぶりだったと言えるだろう。君の成長は、我々の予想を遥かに超えている」

マスターは、厳粛な面持ちでアルトに向き直ると、高らかに宣言した。

「アルト!これまでの数々の功績、そして今回の困難な任務の達成を認め、本日付をもって、君を【Dランク】冒険者へと昇格させる!」

その言葉と共に、ギルド内から大きな歓声と拍手が沸き起こった。
アルトは、Eランクの銀色プレートをマスターに返し、代わりに、少し重みのある、青銅で作られた新しい【Dランク】プレートを受け取った。
プレートに刻まれた「D」の文字が、誇らしく輝いて見えた。

「おめでとう、アルト!」
「よくやったな!」
「Dランクか、大したもんだ!」

バルガスをはじめ、顔見知りの冒険者たちが次々とアルトに祝福の言葉をかける。
アルトは、込み上げてくる熱い思いを抑えながら、一人一人に丁寧に礼を言った。
落ちこぼれギフトと蔑まれ、ギルドから追い出されそうになったあの日々が、まるで遠い昔のことのように感じられた。

Dランク冒険者。
それは、一人前の冒険者として認められた証であり、中堅への入り口とも言えるランクだ。
しかし、アルトは知っていた。
これはゴールではない。

彼の視線の先には、アッシュフォード村の、そしてこの地域の枠を超えた、より広い世界が広がっている。
ギルドで耳にした、王都の噂、他の地域の出来事…。
漠然とした憧れは、Dランク昇格という現実的なステップアップを経て、より具体的な目標へと変わりつつあった。

(王都へ……行ってみるべきかもしれない)

アルトの心の中に、新たな決意が芽生え始めていた。
Dランク冒険者となったアルト。
その第一歩として、彼はまず何をすべきか。
アルトは、新たなランクプレートの重みを確かめながら、静かに考え始めていた。
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