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第58話 決意の先、王都への道
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Dランク冒険者。
その証である青銅のプレートが、アルトの胸で確かな重みをもって輝いていた。
ギルドを訪れると、その雰囲気が以前とはっきりと変わっていることを、アルトは肌で感じていた。
Eランクの頃とは違い、Dランク、あるいはそれ以上のランクの冒険者たちが、ごく自然に声をかけてくる。
「よう、アルト。昇格おめでとう。次はどんな依頼を受けるんだ?」
「聞いたぜ、ホブゴブリン討伐。大したもんだな」
彼らの視線には、もう侮りや好奇の色はない。
同じ土俵に立つ、一人の冒険者として認められている。
その事実が、アルトに新たな自信と、同時に責任感をもたらしていた。
依頼掲示板に目をやれば、そこにはDランク向けの、より高度で報酬も高い依頼が並んでいる。
「オークの斥候部隊の追跡」、「ワイバーンの卵の回収(親のいない巣限定)」、「隣国への重要書類の護衛配達」……。
どれも、これまでの依頼とは比較にならないほどの危険と、そして冒険の匂いを漂わせていた。
ギルドの談話スペースでは、相変わらず様々な情報が飛び交っている。
その中でも、アルトの耳に特に頻繁に入ってくるようになったのが、国の中心である王都アステリアに関する話題だった。
「王都のギルド本部は、建物自体が城みたいにでかいらしいな。Sランク冒険者なんていう、生ける伝説みたいな連中もいるとかいないとか…」
「もうすぐ王立騎士団の選抜試験だろ?腕に覚えのある連中が、今、王都に続々と集まってきてるらしいぜ。今年も荒れそうだ」
「王都にあるっていう魔道具工房で、また新しいゴーレムが開発されたそうだ。なんでも、自己修復機能までついてるって話だぜ?」
聞いているだけで、胸が躍るような話ばかりだ。
活気に満ち、あらゆるものが集まる都、アステリア。
自分の実力は、あの場所でどこまで通用するのだろうか?
そして、自分の持つギフト【ダメージ反射】の謎。
あのホブゴブリン戦で垣間見せた、麻痺させるような力。
王都にあるという大神殿や、高名な賢者が集うという王立魔法学院なら、何か手がかりが見つかるかもしれない……。
アルトの中で、王都への興味と憧れは、もはや抑えきれないほどに膨らんでいた。
そんなアルトの心の変化を、師であるバルガスは見抜いていたのかもしれない。
ある日の訓練後、バルガスは汗を拭うアルトに、ぽつりと言った。
「アルトよぉ。お前ほどの腕と、その訳の分からんが面白いギフトがあれば、こんな田舎のギルドで燻ってるのは、ちいとばかし勿体ねえかもしれんな」
バルガスは、アルトの目を見て、続けた。
「一度、でかい世界を見てくるのも、悪くねえ経験になるはずだ。例えば……王都アステリアあたりへ行って、腕試しでもしてきちゃどうだ?」
その言葉は、アルトの背中を強く押した。
さらに、ギルドマスターも、アルトが次の依頼を探している際に、それとなく声をかけてきた。
「アルト君、君の成長は本当に目覚ましい。正直、このアッシュフォードのギルドでは、君の実力に見合う依頼も、そう多くはなくなってきただろう」
マスターは、真剣な眼差しでアルトを見つめる。
「もし、君にその気があるのなら……王都にあるギルド本部のマスター宛に、私から推薦状を書いてやろう。君の実績と、バルガス殿の弟子であるということを伝えれば、向こうでもきっと注目されるはずだ。どうだろうか?」
師からの後押し。
そして、ギルドマスターからの具体的な支援の申し出。
それは、アルトの心の中にあった王都への思いを、揺るぎない決意へと変えるのに十分だった。
未知の世界への挑戦。
大きな不安がないわけではない。
生まれ育ったこの村を離れることへの寂しさもある。
しかし、それ以上に、広い世界を見てみたい、もっともっと強くなりたい、そして自分のギフトの謎を解き明かしたいという、冒険者としての渇望が、アルトの心を支配していた。
(行こう……王都へ!)
アルトは、ついに決断した。
その決意を、アルトはまず家族に告げた。
母親は、やはり涙ながらに猛反対した。
「王都なんて、そんな遠いところに一人で行くなんて!何かあったらどうするの!」
しかし、父親は、黙ってアルトの話を聞き終えると、静かに、しかし力強く言った。
「……アルト。お前も、もう自分の力で道を切り拓ける、一人前の冒険者だ。親としては心配だが、お前が決めた道ならば、反対はしない。行ってこい」
そして、兄のヨハンは、アルトの肩を乱暴に、しかし力強く叩いた。
「ふん、せいぜい王都の華やかさに浮かれて、へまやるんじゃねえぞ。だがな、アルト……」
ヨハンは少し照れたように視線を逸らすと、続けた。
「お前なら、きっとやれる。俺は、そう信じてるぞ。……ただし、一つだけ約束しろ。必ず、必ず生きて帰ってこい。それが、俺たち家族との絶対の約束だ」
兄からの、不器用だが心からのエール。
母親も、最後は涙を拭い、「体にだけは気をつけてね…」と、息子の旅立ちを受け入れてくれた。
最後に、アルトはリナに自分の決意を告げた。
王都へ行くこと。
それは、しばらくの間、二人が離れ離れになることを意味する。
リナは、その言葉を聞くと、一瞬、悲しそうに瞳を潤ませたが、すぐに顔を上げ、アルトに精一杯の笑顔を向けた。
「……そっか。アルト、王都へ行くんだね。……うん、分かってた。アルトなら、きっとそうするだろうなって」
彼女の声は、少し震えていた。
「寂しくなるなぁ……。でも、アルトの夢だもんね!私、ずっと応援してる!絶対に、王都で一番すごい冒険者になってね!」
そして、リナは決意を込めた強い眼差しで、アルトを見つめ返した。
「私も、ここでじっとしてるわけじゃないんだから!もっともっと治癒魔法を勉強して、腕を磨いて、いつか、絶対にアルトの役に立てるような、ううん、アルトを守れるくらいの立派な治癒師になるから!だから……だからね……!」
リナは一度、ぐっと言葉を飲み込み、そして最高の笑顔で言った。
「王都で、待ってて!私も、1年か、2年したら…ううん、もっともっと早く、必ずアルトの後を追いかけるから!約束だよ!」
「……うん!約束だ!待ってる!絶対に待ってるよ、リナ!」
アルトも、リナの手を強く、強く握り返した。
二人の間には、言葉以上に固く、そして温かい約束が交わされた。
王都へ行く。
その決意は、もう揺るがない。
家族の理解、リナとの約束、そして師やギルドマスターからの力強い後押し。
アルトの新たな冒険が、今、始まろうとしていた。
生まれ育ったアッシュフォード村を離れ、未知なる王都アステリアへ。
旅立ちの準備、そして、この村で過ごす最後の時間。
未来への大きな期待と、故郷を離れる一抹の寂しさ。
様々な感情がアルトの胸の中で交錯する中、彼の視線は、輝かしい未来が待つであろう、まだ見ぬ地平線の彼方へと、真っ直ぐに向けられていた
その証である青銅のプレートが、アルトの胸で確かな重みをもって輝いていた。
ギルドを訪れると、その雰囲気が以前とはっきりと変わっていることを、アルトは肌で感じていた。
Eランクの頃とは違い、Dランク、あるいはそれ以上のランクの冒険者たちが、ごく自然に声をかけてくる。
「よう、アルト。昇格おめでとう。次はどんな依頼を受けるんだ?」
「聞いたぜ、ホブゴブリン討伐。大したもんだな」
彼らの視線には、もう侮りや好奇の色はない。
同じ土俵に立つ、一人の冒険者として認められている。
その事実が、アルトに新たな自信と、同時に責任感をもたらしていた。
依頼掲示板に目をやれば、そこにはDランク向けの、より高度で報酬も高い依頼が並んでいる。
「オークの斥候部隊の追跡」、「ワイバーンの卵の回収(親のいない巣限定)」、「隣国への重要書類の護衛配達」……。
どれも、これまでの依頼とは比較にならないほどの危険と、そして冒険の匂いを漂わせていた。
ギルドの談話スペースでは、相変わらず様々な情報が飛び交っている。
その中でも、アルトの耳に特に頻繁に入ってくるようになったのが、国の中心である王都アステリアに関する話題だった。
「王都のギルド本部は、建物自体が城みたいにでかいらしいな。Sランク冒険者なんていう、生ける伝説みたいな連中もいるとかいないとか…」
「もうすぐ王立騎士団の選抜試験だろ?腕に覚えのある連中が、今、王都に続々と集まってきてるらしいぜ。今年も荒れそうだ」
「王都にあるっていう魔道具工房で、また新しいゴーレムが開発されたそうだ。なんでも、自己修復機能までついてるって話だぜ?」
聞いているだけで、胸が躍るような話ばかりだ。
活気に満ち、あらゆるものが集まる都、アステリア。
自分の実力は、あの場所でどこまで通用するのだろうか?
そして、自分の持つギフト【ダメージ反射】の謎。
あのホブゴブリン戦で垣間見せた、麻痺させるような力。
王都にあるという大神殿や、高名な賢者が集うという王立魔法学院なら、何か手がかりが見つかるかもしれない……。
アルトの中で、王都への興味と憧れは、もはや抑えきれないほどに膨らんでいた。
そんなアルトの心の変化を、師であるバルガスは見抜いていたのかもしれない。
ある日の訓練後、バルガスは汗を拭うアルトに、ぽつりと言った。
「アルトよぉ。お前ほどの腕と、その訳の分からんが面白いギフトがあれば、こんな田舎のギルドで燻ってるのは、ちいとばかし勿体ねえかもしれんな」
バルガスは、アルトの目を見て、続けた。
「一度、でかい世界を見てくるのも、悪くねえ経験になるはずだ。例えば……王都アステリアあたりへ行って、腕試しでもしてきちゃどうだ?」
その言葉は、アルトの背中を強く押した。
さらに、ギルドマスターも、アルトが次の依頼を探している際に、それとなく声をかけてきた。
「アルト君、君の成長は本当に目覚ましい。正直、このアッシュフォードのギルドでは、君の実力に見合う依頼も、そう多くはなくなってきただろう」
マスターは、真剣な眼差しでアルトを見つめる。
「もし、君にその気があるのなら……王都にあるギルド本部のマスター宛に、私から推薦状を書いてやろう。君の実績と、バルガス殿の弟子であるということを伝えれば、向こうでもきっと注目されるはずだ。どうだろうか?」
師からの後押し。
そして、ギルドマスターからの具体的な支援の申し出。
それは、アルトの心の中にあった王都への思いを、揺るぎない決意へと変えるのに十分だった。
未知の世界への挑戦。
大きな不安がないわけではない。
生まれ育ったこの村を離れることへの寂しさもある。
しかし、それ以上に、広い世界を見てみたい、もっともっと強くなりたい、そして自分のギフトの謎を解き明かしたいという、冒険者としての渇望が、アルトの心を支配していた。
(行こう……王都へ!)
アルトは、ついに決断した。
その決意を、アルトはまず家族に告げた。
母親は、やはり涙ながらに猛反対した。
「王都なんて、そんな遠いところに一人で行くなんて!何かあったらどうするの!」
しかし、父親は、黙ってアルトの話を聞き終えると、静かに、しかし力強く言った。
「……アルト。お前も、もう自分の力で道を切り拓ける、一人前の冒険者だ。親としては心配だが、お前が決めた道ならば、反対はしない。行ってこい」
そして、兄のヨハンは、アルトの肩を乱暴に、しかし力強く叩いた。
「ふん、せいぜい王都の華やかさに浮かれて、へまやるんじゃねえぞ。だがな、アルト……」
ヨハンは少し照れたように視線を逸らすと、続けた。
「お前なら、きっとやれる。俺は、そう信じてるぞ。……ただし、一つだけ約束しろ。必ず、必ず生きて帰ってこい。それが、俺たち家族との絶対の約束だ」
兄からの、不器用だが心からのエール。
母親も、最後は涙を拭い、「体にだけは気をつけてね…」と、息子の旅立ちを受け入れてくれた。
最後に、アルトはリナに自分の決意を告げた。
王都へ行くこと。
それは、しばらくの間、二人が離れ離れになることを意味する。
リナは、その言葉を聞くと、一瞬、悲しそうに瞳を潤ませたが、すぐに顔を上げ、アルトに精一杯の笑顔を向けた。
「……そっか。アルト、王都へ行くんだね。……うん、分かってた。アルトなら、きっとそうするだろうなって」
彼女の声は、少し震えていた。
「寂しくなるなぁ……。でも、アルトの夢だもんね!私、ずっと応援してる!絶対に、王都で一番すごい冒険者になってね!」
そして、リナは決意を込めた強い眼差しで、アルトを見つめ返した。
「私も、ここでじっとしてるわけじゃないんだから!もっともっと治癒魔法を勉強して、腕を磨いて、いつか、絶対にアルトの役に立てるような、ううん、アルトを守れるくらいの立派な治癒師になるから!だから……だからね……!」
リナは一度、ぐっと言葉を飲み込み、そして最高の笑顔で言った。
「王都で、待ってて!私も、1年か、2年したら…ううん、もっともっと早く、必ずアルトの後を追いかけるから!約束だよ!」
「……うん!約束だ!待ってる!絶対に待ってるよ、リナ!」
アルトも、リナの手を強く、強く握り返した。
二人の間には、言葉以上に固く、そして温かい約束が交わされた。
王都へ行く。
その決意は、もう揺るがない。
家族の理解、リナとの約束、そして師やギルドマスターからの力強い後押し。
アルトの新たな冒険が、今、始まろうとしていた。
生まれ育ったアッシュフォード村を離れ、未知なる王都アステリアへ。
旅立ちの準備、そして、この村で過ごす最後の時間。
未来への大きな期待と、故郷を離れる一抹の寂しさ。
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