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第78話 閃光の剣士、格上への挑戦
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貴賓席でも、感嘆の声が上がっていた。
「見事な対応力だ。あの影移動を破るとは…」
「ギフトだけでなく、基礎的な戦闘能力、そして何より精神力が高いと見える」
騎士団長らしき人物も、隣の貴族に同意するように頷いている。
アルト・リフレクト。
その名は、もはや単なる「面白い新人」ではなく、「無視できない実力者」として、王都の有力者たちの間にも浸透し始めていた。
控え室に戻ったアルトは、激闘の疲労を癒しながら、安堵の息をついた。
ジンは、これまでのどの相手とも違う、本当に厄介な敵だった。
勝てたのは、幸運もあったかもしれない。
だが、自分の力が通用したという手応えも、確かにあった。
「アルトさん!またまた素晴らしいデータが取れましたわ!あの影からの出現を予測した際の、あなたの脳波(?)のパターン!そして反射エネルギーの指向性制御!これはギフトの新たな可能性を示唆する…」
エリアーヌが興奮冷めやらぬ様子で駆け寄り、いつものように専門的な分析を始めようとしたが、アルトはそれをやんわりと制した。
今はただ、少し休みたかった。
しかし、休息の時間も長くはなかった。
大会は佳境を迎え、すぐに次の試合、準々決勝の組み合わせが発表されたのだ。
そして、アルトの次の対戦相手としてコールされた名前に、控え室全体が、先ほど以上のどよめきと、そしてある種の諦めにも似たため息に包まれた。
「対戦相手、Bランク冒険者、『閃光』のシルヴィ!」
シルヴィ。
その名を知らない者は、この王都の冒険者ギルドにはいないだろう。
Bランクという、アルトよりも二つも格上の実力者。
そして何より、彼女の異名「閃光」が示す通り、目で追うことすら困難なほどの超高速の剣技の使い手。
今大会においても、これまでの対戦相手を文字通り「瞬殺」し、圧倒的な強さで勝ち上がってきた、優勝候補の筆頭と目される存在だ。
(Bランクの…“閃光”シルヴィ……)
アルトは、その名前を聞いただけで、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
これまでの相手とは、レベルが違う。
次元が違うと言ってもいいかもしれない。
控え室の空気も、一変していた。
「おいおい、相手はシルヴィかよ…」
「いくらアルトがすごくても、さすがに今度ばかりは無理だろう…」
「Bランク、それも“閃光”だぜ?反射する前に、何十回も斬られて終わりだろ…」
アルトの勝利を疑う声が、あちこちから聞こえてくる。
それは無理もないことだった。
ランクの差は絶対的だ。
ましてや、相手はBランクの中でもトップクラスの実力者なのだから。
アルト自身も、これまでにないほどの強いプレッシャーと、そしてわずかな恐怖を感じていた。
しかし、彼は逃げるわけにはいかなかった。
ここで諦めてしまっては、何のために王都に来たのか分からない。
それに、どんなに格上の相手であろうと、戦う前から負けを認めるのは、彼の流儀ではなかった。
(やるしかない…!今の俺の全力で、どこまで通用するのか…!)
アルトは、心の内で闘志を燃え上がらせた。
失うものは何もない。
ただ、自分の持つ剣と盾、そしてギフトの全てをぶつけるだけだ。
そして、運命の試合の時が来た。
闘技場に、まず挑戦者としてアルトの名前がコールされる。
観客席からは、激励と、しかしどこか同情的な声援が飛ぶ。
続いて、優勝候補、シルヴィの名前が呼ばれると、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。
闘技場の中央に現れたシルヴィは、アルトの予想とは少し違っていた。
屈強な女戦士、というイメージではなく、むしろ華奢(きゃしゃ)とさえ言える体つき。
身にまとっているのは、動きやすさを重視したと思われる、軽装の革鎧と、風に揺れる青いマント。
腰に下げているのは、刀身の細い、優美なレイピアだ。
しかし、その佇まいには、一切の隙がなく、彼女が放つオーラは、間違いなく一流の剣士のものであることを示していた。
その美しい顔立ちは冷静そのもので、アルトのことなど、全く意に介していないかのようだった。
アルトも、黒曜の剣とバックラーを構え、意識を集中させる。
相手は格上。
そして、おそらく自分のギフトについても、ある程度は知っているだろう。
厳しい戦いになることは、覚悟の上だ。
「両者、前へ!……始めっ!!」
審判の鋭い声が響き渡る。
その合図と同時に、シルヴィの姿が、文字通りアルトの視界から消えた!
いや、消えたのではない。
常人では捉えきれないほどの速度で、アルトの懐へと踏み込んできたのだ!
(速いっ!!!)
アルトが反応するよりも早く、銀色の閃光が走る。
キンキンキンキンキンッ!!
無数の、鋭く、そして正確無比な剣閃が、アルトの全身を襲う!
それは、まるで銀色の嵐。
アルトは、もはや何が起こっているのかを正確に把握することすらできず、ただ本能的に、バックラーと黒曜の剣を振り回し、その嵐を防ぐことしかできなかった。
バックラーには無数の突き傷が、革鎧には浅いが数えきれないほどの切り傷が、瞬く間に刻まれていく。
シルヴィの攻撃は、一撃一撃の威力こそ、オーガやホブゴブリンのそれには及ばない。
しかし、その圧倒的な手数と速度が、アルトの防御網を確実に切り裂き、彼をじわじわと追い詰めていく。
(反射を…!カウンター反射を狙わないと…!)
アルトは必死に、反射のタイミングを探ろうとする。
しかし、シルヴィの攻撃は、一瞬たりとも途切れない。
アルトが反射を発動させようとした瞬間には、すでに次の剣閃が襲いかかってくる。
反射ダメージを与える隙がない。
それどころか、シルヴィはアルトの反射を警戒しているのか、的確に攻撃の角度を変え、あるいはヒットアンドアウェイを繰り返し、アルトに有効な反撃の機会を一切与えない。
アルトの最大の武器である【ダメージ反射】が、完全に封じられている…!
これは、アルトがこれまでの戦いで経験したことのない、絶望的な状況だった。
防戦一方。
傷は増え続け、体力も、集中力も、急速に削られていく。
(どうする…?どうすれば、この閃光の嵐を止められる…?)
アルトは、降り注ぐ剣閃の中で、必死に思考を巡らせていた。
このままでは、負ける。
それも、何もできないまま、一方的に。
何か、何か打開策はないのか…?
アルトは、シルヴィの超高速の動きの中に、わずかな、しかし決定的な「何か」を見つけ出そうと、その五感を極限まで研ぎ澄ませた。
勝機は、まだあるはずだと信じて。
激しい剣戟の音が、熱狂する闘技場に鳴り響いていた。
「見事な対応力だ。あの影移動を破るとは…」
「ギフトだけでなく、基礎的な戦闘能力、そして何より精神力が高いと見える」
騎士団長らしき人物も、隣の貴族に同意するように頷いている。
アルト・リフレクト。
その名は、もはや単なる「面白い新人」ではなく、「無視できない実力者」として、王都の有力者たちの間にも浸透し始めていた。
控え室に戻ったアルトは、激闘の疲労を癒しながら、安堵の息をついた。
ジンは、これまでのどの相手とも違う、本当に厄介な敵だった。
勝てたのは、幸運もあったかもしれない。
だが、自分の力が通用したという手応えも、確かにあった。
「アルトさん!またまた素晴らしいデータが取れましたわ!あの影からの出現を予測した際の、あなたの脳波(?)のパターン!そして反射エネルギーの指向性制御!これはギフトの新たな可能性を示唆する…」
エリアーヌが興奮冷めやらぬ様子で駆け寄り、いつものように専門的な分析を始めようとしたが、アルトはそれをやんわりと制した。
今はただ、少し休みたかった。
しかし、休息の時間も長くはなかった。
大会は佳境を迎え、すぐに次の試合、準々決勝の組み合わせが発表されたのだ。
そして、アルトの次の対戦相手としてコールされた名前に、控え室全体が、先ほど以上のどよめきと、そしてある種の諦めにも似たため息に包まれた。
「対戦相手、Bランク冒険者、『閃光』のシルヴィ!」
シルヴィ。
その名を知らない者は、この王都の冒険者ギルドにはいないだろう。
Bランクという、アルトよりも二つも格上の実力者。
そして何より、彼女の異名「閃光」が示す通り、目で追うことすら困難なほどの超高速の剣技の使い手。
今大会においても、これまでの対戦相手を文字通り「瞬殺」し、圧倒的な強さで勝ち上がってきた、優勝候補の筆頭と目される存在だ。
(Bランクの…“閃光”シルヴィ……)
アルトは、その名前を聞いただけで、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
これまでの相手とは、レベルが違う。
次元が違うと言ってもいいかもしれない。
控え室の空気も、一変していた。
「おいおい、相手はシルヴィかよ…」
「いくらアルトがすごくても、さすがに今度ばかりは無理だろう…」
「Bランク、それも“閃光”だぜ?反射する前に、何十回も斬られて終わりだろ…」
アルトの勝利を疑う声が、あちこちから聞こえてくる。
それは無理もないことだった。
ランクの差は絶対的だ。
ましてや、相手はBランクの中でもトップクラスの実力者なのだから。
アルト自身も、これまでにないほどの強いプレッシャーと、そしてわずかな恐怖を感じていた。
しかし、彼は逃げるわけにはいかなかった。
ここで諦めてしまっては、何のために王都に来たのか分からない。
それに、どんなに格上の相手であろうと、戦う前から負けを認めるのは、彼の流儀ではなかった。
(やるしかない…!今の俺の全力で、どこまで通用するのか…!)
アルトは、心の内で闘志を燃え上がらせた。
失うものは何もない。
ただ、自分の持つ剣と盾、そしてギフトの全てをぶつけるだけだ。
そして、運命の試合の時が来た。
闘技場に、まず挑戦者としてアルトの名前がコールされる。
観客席からは、激励と、しかしどこか同情的な声援が飛ぶ。
続いて、優勝候補、シルヴィの名前が呼ばれると、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。
闘技場の中央に現れたシルヴィは、アルトの予想とは少し違っていた。
屈強な女戦士、というイメージではなく、むしろ華奢(きゃしゃ)とさえ言える体つき。
身にまとっているのは、動きやすさを重視したと思われる、軽装の革鎧と、風に揺れる青いマント。
腰に下げているのは、刀身の細い、優美なレイピアだ。
しかし、その佇まいには、一切の隙がなく、彼女が放つオーラは、間違いなく一流の剣士のものであることを示していた。
その美しい顔立ちは冷静そのもので、アルトのことなど、全く意に介していないかのようだった。
アルトも、黒曜の剣とバックラーを構え、意識を集中させる。
相手は格上。
そして、おそらく自分のギフトについても、ある程度は知っているだろう。
厳しい戦いになることは、覚悟の上だ。
「両者、前へ!……始めっ!!」
審判の鋭い声が響き渡る。
その合図と同時に、シルヴィの姿が、文字通りアルトの視界から消えた!
いや、消えたのではない。
常人では捉えきれないほどの速度で、アルトの懐へと踏み込んできたのだ!
(速いっ!!!)
アルトが反応するよりも早く、銀色の閃光が走る。
キンキンキンキンキンッ!!
無数の、鋭く、そして正確無比な剣閃が、アルトの全身を襲う!
それは、まるで銀色の嵐。
アルトは、もはや何が起こっているのかを正確に把握することすらできず、ただ本能的に、バックラーと黒曜の剣を振り回し、その嵐を防ぐことしかできなかった。
バックラーには無数の突き傷が、革鎧には浅いが数えきれないほどの切り傷が、瞬く間に刻まれていく。
シルヴィの攻撃は、一撃一撃の威力こそ、オーガやホブゴブリンのそれには及ばない。
しかし、その圧倒的な手数と速度が、アルトの防御網を確実に切り裂き、彼をじわじわと追い詰めていく。
(反射を…!カウンター反射を狙わないと…!)
アルトは必死に、反射のタイミングを探ろうとする。
しかし、シルヴィの攻撃は、一瞬たりとも途切れない。
アルトが反射を発動させようとした瞬間には、すでに次の剣閃が襲いかかってくる。
反射ダメージを与える隙がない。
それどころか、シルヴィはアルトの反射を警戒しているのか、的確に攻撃の角度を変え、あるいはヒットアンドアウェイを繰り返し、アルトに有効な反撃の機会を一切与えない。
アルトの最大の武器である【ダメージ反射】が、完全に封じられている…!
これは、アルトがこれまでの戦いで経験したことのない、絶望的な状況だった。
防戦一方。
傷は増え続け、体力も、集中力も、急速に削られていく。
(どうする…?どうすれば、この閃光の嵐を止められる…?)
アルトは、降り注ぐ剣閃の中で、必死に思考を巡らせていた。
このままでは、負ける。
それも、何もできないまま、一方的に。
何か、何か打開策はないのか…?
アルトは、シルヴィの超高速の動きの中に、わずかな、しかし決定的な「何か」を見つけ出そうと、その五感を極限まで研ぎ澄ませた。
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激しい剣戟の音が、熱狂する闘技場に鳴り響いていた。
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