落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第85話 三位一体、死霊術師の終焉

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忘れられた神殿の最深部、祭壇の間。
高位アンデッド、スケルトンメイジ・マルバスとの死闘は、佳境を迎えていた。
ゴルドーがその巨体でマルバスを足止めし、ノエルが祭壇にある力の源と思しき聖杯へ向かう。
そしてアルトは、二人を援護し、マルバス本体への攻撃と牽制を担当する。
三人の連携作戦が、今まさに実行に移されようとしていた。

「小賢しい虫けらどもがァ!我が聖域をこれ以上穢すことは許さん!」

マルバスは、ノエルの意図に気づき、骨の杖を祭壇へと向けた。
彼の足元の影から、黒い触手のようなものが無数に伸び、蛇のようにうねりながらノエルの行く手を阻もうとする!

しかし、ノエルの動きは、影そのもののように素早く、そして捉えどころがなかった。
彼女は驚異的な俊敏さで触手を掻い潜り、時には腰の短剣で切り裂きながら、一切速度を落とすことなく祭壇へと突き進んでいく。
その動きは、まるで複雑な罠の間をすり抜けていく時のように、正確無比だった。

「貴様からだ!」

マルバスは、ノエルを止められないと判断したのか、ターゲットをゴルドーへと変更した。
杖の先端に、腐食性の高い緑色の酸の霧を集束させ、ゴルドーに向けて放つ!

「させるかぁ!」

ゴルドーは雄叫びを上げ、巨大な戦斧を盾にするようにして、酸のブレスを受け止める。
ジュウウウッ!と、金属が溶ける嫌な音が響き、戦斧の表面が泡立つ。
呪いによって動きが鈍っているとはいえ、彼のドワーフならではの頑健さと、歴戦の戦士としての意地が、マルバスの攻撃を食い止めていた。

「ゴルドーさん!」

アルトも援護に入る。
マルバスが次の魔法を詠唱しようとした瞬間を狙い、ギフトの応用「衝撃波(仮)」を放つ!
ブォン!と空気が震え、マルバスの詠唱が一瞬途切れる。
さらに、マルバスが牽制のために召喚しようとしたスケルトンの手が地面から現れた瞬間、アルトはそれをカウンター反射で粉砕した。
ゴルドーが体勢を立て直すための、貴重な時間を稼ぐ。

そして、ついにノエルが祭壇へとたどり着いた!
祭壇の上には、黒く濁った、見るからに不気味な液体を満たした、黒曜石のような素材で作られた禍々しい聖杯が置かれている。
そこから放たれる邪悪なオーラは、触れることすら危険だと告げていた。

ノエルは一瞬ためらった。
だが、すぐに覚悟を決めたのか、腰の道具袋から取り出したのは、短剣ではなく、小さな金属製のハンマーだった。
彼女はそのハンマーを振り上げ、祭壇上の聖杯に向かって、力任せに叩きつけた!

パリンッ!!

甲高い破壊音が、ホール全体に響き渡る。
黒曜石の聖杯は粉々に砕け散り、中に満たされていた黒く濁った液体は、まるで蒸発するかのように、一瞬で掻き消えた。

その瞬間、マルバスの体が大きく揺らめき、苦悶の声が漏れた。

「グ…オオオオオッ!? 馬鹿な…我が力が…!?」

彼の全身から立ち昇っていた邪悪なオーラが、急速に薄れていく。
眼窩で爛々と輝いていた赤い光も、まるで風前の灯火のように弱々しく点滅し始めた。
同時に、ゴルドーを苦しめていた呪いの効果も消え去り、彼の動きに本来の力が戻る。
力の源である聖杯を破壊されたことで、マルバスは著しく弱体化したのだ!

「今だ!一気に決めるぞ!」

ゴルドーが叫び、本来の力を取り戻した怪力で、マルバスへと猛然と突進する。
巨大な戦斧が、先ほどまでびくともしなかった魔法障壁を、ガラスのように打ち砕き、マルバスの肋骨を数本、粉々に粉砕した!

「おのれぇ…!」

マルバスも、最後の力を振り絞り、骨の杖から弱々しいながらも闇の魔法を放つ。
しかし、アルトがそれをバックラーで難なく受け止め、そして、容赦のないカウンター反射を叩き込んだ!

「グアアアッ!」

弱体化したマルバスは、自身の魔法の反動と反射ダメージの複合効果を受け、大きくよろめき、その体勢を完全に崩した。
もはや、抵抗する力は残っていない。

アルトは、そのがら空きになったマルバスの頭部――魂の核があるとされる場所――へ、ショートソード「黒曜」を突き立てた。
ボルガンが柄に刻んでくれた浄化のルーンが、これまでで最も強く、淡い光を放つ!

ズブリ、という鈍い手応え。
剣先が、硬い頭蓋骨を貫通する。
マルバスの眼窩の赤い光が、フッと完全に消え失せた。
そして、その骸骨の体は、まるで長い年月の風化に耐えきれなくなったかのように、さらさらと音を立てて塵へと還っていき、後には禍々しい骨の杖と、いくつかの黒く輝く宝石のようなものだけが、静かに床に残された。

マルバスが消滅すると共に、祭壇の間に満ちていた重く、よどんだ死の気配が、嘘のように消え去った。
代わりに、どこからか清浄な、そして穏やかな空気が流れ込み始める。
天井のわずかな隙間からは、柔らかな陽の光が幾筋も差し込み、埃っぽかった空間を神々しく照らし出した。
忘れられた神殿は、ついに永い間の穢れから解放され、本来の静けさを取り戻したのだ。

「………終わった………のか?」

アルトは、剣を杖代わりにその場に膝をつき、荒く、深く息をついた。
隣では、ゴルドーが戦斧を下ろし、「ふん、手間取らせやがって、骨だけのくせによ…」と悪態をつきながらも、その表情には安堵の色が浮かんでいる。
ノエルは、いつの間にか祭壇周辺の調査を再開しており、何か小さな装飾品のかけらのようなものを見つけて、興味深そうに指でつまんでいた。

激しい戦いだった。
それぞれの能力が試され、そしてパーティとしての連携が求められた。
彼らは、それぞれの役割を見事に果たし、協力して強敵を打ち破ったのだ。
言葉数は少なくとも、この死闘を共に乗り越えたことで、三人の間には、確かな信頼と、パーティとしての強い絆が芽生え始めていた。
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