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第98話 Cランクの誉れ、新たな地平へ
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忘れられた祠での死闘を終え、アルト、ノエル、ゴルドーは、しばしその場に座り込み、激闘の余韻と、全身を襲う極度の疲労感に身を任せていた。
誰もが満身創痍だったが、その表情には、事件の元凶であるコア・ゴーレムを打ち破ったという、確かな安堵と達成感が浮かんでいた。
しばらく休息を取った後、三人は最後の力を振り絞り、戦後処理に取り掛かった。
コア・ゴーレムが消滅した跡には、禍々しい気配は消え失せていたが、例の「黒い核」の破片がいくつか残っていた。
アルトは、エリアーヌからの警告を思い出し、直接触れないように注意しながら、革手袋を使ってそれらを慎重に採取袋へと回収した。
これは、彼女の研究にとって、そしてこの異変の原因を完全に解明する上で、非常に重要なサンプルとなるはずだ。
他にめぼしい戦利品はなかったが、これで依頼達成の証拠は十分だろう。
疲労困憊の体を引きずり、三人は互いを支え合うようにして、浄化された(と思われる)森を後にし、村へ、そして王都への帰路についた。
道中、ゴルドーがアルトに尋ねた。
「おい、アルト。あの最後の、お前から放たれた蒼白い光は、一体なんだったんだ?あれで、あの化け物の動きが完全に止まったように見えたが…。お前のギフトは、ただ攻撃を反射するだけではなかったのか?」
ノエルも、無言ながら強い好奇心をたたえた目でアルトを見つめている。
アルトは、正直に話すことにした。
ホブゴブリン戦でも一度だけ、無意識に発動したこと。
ギフト【ダメージ反射】の未知の効果であるらしいこと。
そして、自分にもまだ完全には理解できておらず、自在に操ることはできないことを。
「…仲間を守りたい、って強く思った時に、出たような気がするんだ」
その言葉に、ゴルドーは「ふむ…守護の意志が引き金か。ますます興味深いな、お前のギフトは」と唸り、ノエルは「…アルト、すごい力。…でも、危ない。…気をつけて」と、彼女らしい言葉で気遣いを見せた。
ギフトの謎は、仲間たちとの間でも共有され、同時に彼らの絆をさらに深めるきっかけとなったのかもしれない。
王都ギルドへ帰還したアルトたちの姿は、前回以上の衝撃をもって迎えられた。
そのボロボロの様子が、依頼の過酷さを物語っている。
アルトがカウンターにコア・ゴーレムの核の破片を置き、冷静に、しかし確かな声で報告を始めた時、ギルド内は水を打ったような静寂に包まれた。
「依頼『バーンスタイン子爵領・家畜連続死事件調査』、完了しました。原因は、生命力を吸収する未知の黒いスライムと、その発生源である古代の人工生命体『コア・ゴーレム』でした。発生源のコア・ゴーレムは、パーティで連携し、討伐・破壊しました。これで、領地の異変は収まるはずです」
コア・ゴーレム討伐。
その信じられない報告内容と、提出された禍々しい核の破片に、ギルドマスターは言葉を失い、ただただ目を見開いていた。
そして、我に返ると、これまでにないほどの興奮と称賛の声を上げた。
「……信じられん!コア・ゴーレムだと!?古代の禁断の産物を、君たちCランクパーティが、本当に討伐したというのか!?これは……これは、ギルドの歴史においても特筆すべき、途方もない偉業だぞ!」
マスターは、アルト、ノエル、ゴルドー、三人の顔を順番に見つめ、深く頷いた。
「アルト君、ノエル君、ゴルドー君!君たちの勇気と実力、そして見事な連携に、ギルドとして最大級の賛辞を送る!そして、アルト君、君の【Cランク】への昇格は、もはや誰にも異論はないだろう!いや、この功績ならば、Bランクへの飛び級すら検討に値するかもしれん…!」
最終的に、アルトは正式にCランク冒険者として認められ、ノエルとゴルドーの二人も、今回の功績によってランクアップへの道が大きく開かれることになった。
依頼達成報酬に加え、破格の特別功労金(金貨が多数含まれていた)が三人に支払われ、ギルド内からは惜しみない拍手と称賛の声が送られた。
アルトたちパーティの名声は、この一件で王都中に轟くことになるだろう。
ギルドでの報告を終えた後、アルトはすぐにエリアーヌの研究室を訪れた。
コア・ゴーレムの討伐と、戦闘中にギフトの麻痺効果が明確に発動したことを報告し、回収してきた核の破片を分析用として提供する。
エリアーヌは、その黒い破片を見るなり、目を大きく見開き、狂喜乱舞した。
「まあ!まあ!まあ!これがコア・ゴーレムの核!しかも麻痺効果も再び!素晴らしい!実に素晴らしいですわ、アルトさん!これでわたくしの研究が、一気に、いえ、飛躍的に進展すること間違いなしですわ!このエネルギーパターン、この古代の術式痕…!ああ、解析が待ちきれません!」
彼女は完全に研究者の顔に戻り、早速、核の破片の分析に取り掛かり始めた。
アルトは、彼女にならギフトの謎を解き明かす手助けをしてくれるかもしれない、という期待を改めて強くした。
大きな依頼を終え、Cランクになり、ギフトも覚醒の兆しを見せたアルト。
彼は下宿屋に戻り、数日間、心身の回復に専念することにした。
これまでの戦いを振り返り、自身の成長を実感する。
しかし同時に、まだまだ足りないものが多いことも理解していた。
攻撃力、スタミナ、魔法への対処能力、そして何より、覚醒したギフトの制御。
王都での活動を続けるか?
それとも、もっと広い世界へ?
リナとの約束は?
バルガスの教えは?
アルトの心の中には、様々な思いが交錯していた。
「Cランク冒険者アルト・リフレクト」
彼の名は、王都の冒険者たちの間で、そしてあるいは貴族たちの間でも、特別な響きを持つようになっていた。
バーンスタイン子爵からの感謝の言葉と、新たな協力依頼の打診。
シルヴィからの、興味津々な様子の伝言。
クラウスたちの、もはや羨望とも諦めともつかない複雑な視線。
アルトの周囲の世界は、確実に、そして急速に変化している。
彼は、その変化の中心に立ちながら、次なる一歩をどこへ踏み出すべきか、静かに考え始めていた。
アッシュフォード村の少年は、今、王都アステリアで、大きな未来への扉を開けようとしていた。
誰もが満身創痍だったが、その表情には、事件の元凶であるコア・ゴーレムを打ち破ったという、確かな安堵と達成感が浮かんでいた。
しばらく休息を取った後、三人は最後の力を振り絞り、戦後処理に取り掛かった。
コア・ゴーレムが消滅した跡には、禍々しい気配は消え失せていたが、例の「黒い核」の破片がいくつか残っていた。
アルトは、エリアーヌからの警告を思い出し、直接触れないように注意しながら、革手袋を使ってそれらを慎重に採取袋へと回収した。
これは、彼女の研究にとって、そしてこの異変の原因を完全に解明する上で、非常に重要なサンプルとなるはずだ。
他にめぼしい戦利品はなかったが、これで依頼達成の証拠は十分だろう。
疲労困憊の体を引きずり、三人は互いを支え合うようにして、浄化された(と思われる)森を後にし、村へ、そして王都への帰路についた。
道中、ゴルドーがアルトに尋ねた。
「おい、アルト。あの最後の、お前から放たれた蒼白い光は、一体なんだったんだ?あれで、あの化け物の動きが完全に止まったように見えたが…。お前のギフトは、ただ攻撃を反射するだけではなかったのか?」
ノエルも、無言ながら強い好奇心をたたえた目でアルトを見つめている。
アルトは、正直に話すことにした。
ホブゴブリン戦でも一度だけ、無意識に発動したこと。
ギフト【ダメージ反射】の未知の効果であるらしいこと。
そして、自分にもまだ完全には理解できておらず、自在に操ることはできないことを。
「…仲間を守りたい、って強く思った時に、出たような気がするんだ」
その言葉に、ゴルドーは「ふむ…守護の意志が引き金か。ますます興味深いな、お前のギフトは」と唸り、ノエルは「…アルト、すごい力。…でも、危ない。…気をつけて」と、彼女らしい言葉で気遣いを見せた。
ギフトの謎は、仲間たちとの間でも共有され、同時に彼らの絆をさらに深めるきっかけとなったのかもしれない。
王都ギルドへ帰還したアルトたちの姿は、前回以上の衝撃をもって迎えられた。
そのボロボロの様子が、依頼の過酷さを物語っている。
アルトがカウンターにコア・ゴーレムの核の破片を置き、冷静に、しかし確かな声で報告を始めた時、ギルド内は水を打ったような静寂に包まれた。
「依頼『バーンスタイン子爵領・家畜連続死事件調査』、完了しました。原因は、生命力を吸収する未知の黒いスライムと、その発生源である古代の人工生命体『コア・ゴーレム』でした。発生源のコア・ゴーレムは、パーティで連携し、討伐・破壊しました。これで、領地の異変は収まるはずです」
コア・ゴーレム討伐。
その信じられない報告内容と、提出された禍々しい核の破片に、ギルドマスターは言葉を失い、ただただ目を見開いていた。
そして、我に返ると、これまでにないほどの興奮と称賛の声を上げた。
「……信じられん!コア・ゴーレムだと!?古代の禁断の産物を、君たちCランクパーティが、本当に討伐したというのか!?これは……これは、ギルドの歴史においても特筆すべき、途方もない偉業だぞ!」
マスターは、アルト、ノエル、ゴルドー、三人の顔を順番に見つめ、深く頷いた。
「アルト君、ノエル君、ゴルドー君!君たちの勇気と実力、そして見事な連携に、ギルドとして最大級の賛辞を送る!そして、アルト君、君の【Cランク】への昇格は、もはや誰にも異論はないだろう!いや、この功績ならば、Bランクへの飛び級すら検討に値するかもしれん…!」
最終的に、アルトは正式にCランク冒険者として認められ、ノエルとゴルドーの二人も、今回の功績によってランクアップへの道が大きく開かれることになった。
依頼達成報酬に加え、破格の特別功労金(金貨が多数含まれていた)が三人に支払われ、ギルド内からは惜しみない拍手と称賛の声が送られた。
アルトたちパーティの名声は、この一件で王都中に轟くことになるだろう。
ギルドでの報告を終えた後、アルトはすぐにエリアーヌの研究室を訪れた。
コア・ゴーレムの討伐と、戦闘中にギフトの麻痺効果が明確に発動したことを報告し、回収してきた核の破片を分析用として提供する。
エリアーヌは、その黒い破片を見るなり、目を大きく見開き、狂喜乱舞した。
「まあ!まあ!まあ!これがコア・ゴーレムの核!しかも麻痺効果も再び!素晴らしい!実に素晴らしいですわ、アルトさん!これでわたくしの研究が、一気に、いえ、飛躍的に進展すること間違いなしですわ!このエネルギーパターン、この古代の術式痕…!ああ、解析が待ちきれません!」
彼女は完全に研究者の顔に戻り、早速、核の破片の分析に取り掛かり始めた。
アルトは、彼女にならギフトの謎を解き明かす手助けをしてくれるかもしれない、という期待を改めて強くした。
大きな依頼を終え、Cランクになり、ギフトも覚醒の兆しを見せたアルト。
彼は下宿屋に戻り、数日間、心身の回復に専念することにした。
これまでの戦いを振り返り、自身の成長を実感する。
しかし同時に、まだまだ足りないものが多いことも理解していた。
攻撃力、スタミナ、魔法への対処能力、そして何より、覚醒したギフトの制御。
王都での活動を続けるか?
それとも、もっと広い世界へ?
リナとの約束は?
バルガスの教えは?
アルトの心の中には、様々な思いが交錯していた。
「Cランク冒険者アルト・リフレクト」
彼の名は、王都の冒険者たちの間で、そしてあるいは貴族たちの間でも、特別な響きを持つようになっていた。
バーンスタイン子爵からの感謝の言葉と、新たな協力依頼の打診。
シルヴィからの、興味津々な様子の伝言。
クラウスたちの、もはや羨望とも諦めともつかない複雑な視線。
アルトの周囲の世界は、確実に、そして急速に変化している。
彼は、その変化の中心に立ちながら、次なる一歩をどこへ踏み出すべきか、静かに考え始めていた。
アッシュフォード村の少年は、今、王都アステリアで、大きな未来への扉を開けようとしていた。
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