落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第97話 覚醒の閃光、黒き核の終焉

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古びた祠の奥深く、脈打つ黒き核から溢れ出した邪悪な気配は、形を成した。

それは、無数の漆黒スライムが融合し、核そのものを中心として形成されたかのような、巨大で不定形の異形の塊――コア・ゴーレム。

オーガをも上回る巨躯から放たれる、生命力をじわじわと吸い取る冷たいオーラは、アルトたち三人の冒険者に、本能的な恐怖と絶望感を抱かせた。
これが、この地の異変の元凶にして、最後の守護者か。

「な……なんだ、あれは……!?スライムの化け物か!?」
ゴルドーが、歴戦の勇士である彼ですら、その異様な存在感に思わず後退りながら、戦斧を握りしめる手に力を込める。

「……核、そのもの…が、動いてる…?…まずい、感じ」
ノエルもまた、フードの下でわずかに眉をひそめ、腰の短剣に手をかけた。
その表情には、珍しく明確な警戒の色が浮かんでいる。

コア・ゴーレムは、明確な「目」を持たない。
しかし、その不定形の体の一部が、ぬるり、とアルトたちの方を向き、そして巨大な触手のようなものを形成すると、凄まじい速度で薙ぎ払うように襲いかかってきた!

「うおおっ!」
ゴルドーが雄叫びを上げ、戦斧でその触手を受け止めようとする。
しかし、触手の衝撃は彼の想像を遥かに超えていた。
ドゴンッ!という鈍い音と共に、ゴルドーの巨体ですら、まるで木の葉のように軽々と弾き飛ばされ、背後の壁に激しく叩きつけられた!

「ゴルドーさん!」
アルトが叫ぶ。
ゴルドーは「ぐっ…!この、馬鹿力が…!」と呻きながらも、すぐに体勢を立て直そうとするが、動きが鈍い。

アルトとノエルにも、ゴーレムの攻撃が迫る。
アルトはバックラーで触手の一撃を防ぐが、その瞬間に、ぞわりとした悪寒と共に、体から力が急速に抜けていくような感覚に襲われた。
直接攻撃だけではない。
このゴーレムは、周囲にいるだけで生命力を奪うオーラを放っているのだ!

さらに、ゴーレムはその体から、砲弾のように漆黒のスライムを次々と撃ち出してきた。
ノエルは俊敏な動きでそれらを掻い潜るが、アルトと、まだ体勢を立て直せないゴルドーの鎧には数発が命中し、ジリジリと音を立てて装甲を溶かし始める。

攻撃は通じにくい。
防御すれば生命力を奪われる。
そして、相手は自己再生能力すら持っているように見える。
まさに絶望的な戦況だった。

「ちくしょう…!こんな化け物、どうやって倒せっていうんだ…!硬ぇし、掴みどころもねぇ!」
ゴルドーが悪態をつきながら、戦斧を振るうが、ゴーレムの不定形の体には決定打を与えられない。
ノエルの短剣による奇襲も、ほとんど効果がないようだ。

(このままじゃ、全滅だ…!でも、諦めるわけにはいかない!俺たちが、ここでこいつを止めないと、領地の皆が…!)
アルトの心に、かつてないほどの強い想いが込み上げてきた。
それは、単なる自己防衛の本能ではない。
仲間を守りたい、苦しむ人々を救いたいという、純粋で、そして強烈な「守護の意志」。

アルトは覚悟を決めた。
迫り来るゴーレムの、ひときわ巨大な触手のような一撃。
それを、あえて真正面から受け止める。
バックラーと、黒曜の剣を胸の前で交差させ、全身全霊で衝撃に備える。
そして、ギフト【ダメージ反射】に、全ての意識を、全ての意志を集中させた。

(守るんだッ!!!)

触手が、アルトの構えた剣と盾に激突した、まさにその瞬間!

パァァァァァァッ!!!

アルトの全身から、これまでにないほど眩い、魂そのものが震えるような、強烈な蒼白い閃光が迸った!

閃光は、嵐のようにコア・ゴーレムの巨体を包み込み、その動きを、完全に停止させたのだ!

まるで、時間が止められたかのように。
あるいは、琥珀の中に永遠に閉じ込められた虫のように。

「グ………オ………!?」

コア・ゴーレムの中心で脈打っていた黒き核が、苦痛に歪むかのように、激しく痙攣している。
その体から放たれていた、生命力を吸い取る不気味なオーラも、一時的に霧散している。
間違いない。
これが、あのホブゴブリン戦で見せた力の、完全な覚醒形態!
相手の行動を、完全に阻害する、強力な麻痺効果!
エリアーヌが可能性を示唆した、「魂縛(ソウルバインド)」にも似た、未知の力が、ついに発現したのだ!

「今だッ!!」

アルトは、残された最後の力を振り絞って叫んだ!
この好機を逃せば、もう次はない!

「おおおおおっ!」

ゴルドーが、その声に呼応し、回復した力で雄叫びを上げる。
そして、硬直して完全に無防備になったコア・ゴーレムの、中心で脈打つ黒き核めがけて、巨大な戦斧を渾身の力で振り下ろした!
抵抗なく、戦斧はゴーレムの体を切り裂き、黒き核そのものに、深々と食い込んだ!

同時に、ノエルも動いていた。
彼女は、いつの間にか懐から取り出していた、最後の切り札であろう「乾燥した核(黒い欠片)」を、ゴーレムの体の亀裂から露出した、脈打つ核の一部に向かって、正確に投げつけた!

そして、アルト自身も。
彼は、麻痺効果で動きを止めたゴーレムに対し、黒曜の剣を強く握りしめた。
ボルガンが刻んでくれた浄化のルーンに、全ての祈りを込めて。
狙うは、ゴルドーの戦斧が食い込み、ノエルの投げた核が触れている、まさにその中心点!

「うおおおおおおっ!!」

アルトは、最後の力を込めて、黒曜の剣を、ゴーレムの中心核へと突き刺した!
ズブリ、という鈍い、しかし確かな手応え。
剣先が、脈打つ核の奥深くまで達したのを感じた。

三人の攻撃が、コア・ゴーレムの弱点に、完璧なタイミングで集中した。
次の瞬間、黒き核は、内部から眩いほどの、しかし禍々しい光を放ち始めた。
そして、甲高い、耳をつんざくような断末魔の叫び声を上げ――

ドゴォォォォン!!!

大きな爆発と共に、コア・ゴーレムは、そしてその力の源であった黒き核は、木っ端微塵に砕け散り、塵となって完全に消滅した!

核が消滅すると、周囲にいた漆黒のスライムたちも、アンデッドの守護者たちも、まるで糸が切れた操り人形のように、次々と崩れ落ち、黒いシミを残して消えていく。
祠を満たしていた、重くよどんだ邪悪な気配も、嘘のように完全に消え去った。

後に残されたのは、激しい戦闘によって破壊された祭壇の間と、疲労困憊でその場に倒れ込む、アルト、ノエル、ゴルドーの三人の姿だけだった。
彼らは、互いの顔を見合わせ、言葉もなく、しかし深い安堵と、死線を共に乗り越えた者だけが分かち合える、強い達成感に包まれていた。

アルトは、まだ痺れの残る腕を見つめた。
ギフトの覚醒。
麻痺効果。
それは、彼に新たな、そして強力すぎるほどの力をもたらした。
しかし同時に、更なる謎も突きつけていた。
この力は一体何なのか?
どうすれば、自分の意志で自在に操れるようになるのか?

Cランク昇格を賭けた試練は、予想を遥かに超える死闘となった。
しかし、アルトたちは、仲間との揺るぎない絆と、そしてアルトのギフトの覚醒によって、ついに元凶を打ち破り、バーンスタイン子爵領に平和を取り戻した。
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