落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第104話 地下迷宮の死線、闇ギルド「黒蛇の牙」

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王都の古い地区、打ち捨てられた建物の地下へと続く、巧妙に隠された入り口。

ノエルが特殊な道具を使い、錆びついた鉄格子と、その奥の石の扉に仕掛けられた二重の鍵を開けると、ひんやりとした、そして淀んだ空気が生暖かい地上の空気と混じり合い、むわりとした悪臭と共に吹き上げてきた。

ここが、闇ギルド「黒蛇の牙」のアジトへと続く、地下水路への入り口に違いない。

「……行く」

ノエルが先行し、三人は次々と、暗く湿った地下世界へと足を踏み入れた。
背後でゴルドーが音を立てないように慎重に石の扉を閉めると、完全な暗闇と、下水の不快な匂い、そしてどこからか絶えず聞こえる水の滴る音だけが、彼らを包み込んだ。

ランタンの灯りを最小限に絞り、ノエルを先頭に、アルト、ゴルドーの順で、彼らは迷路のように入り組んだ地下水路を慎重に進んでいく。

通路は狭く、天井も低い。
足元はぬかるみ、時にはくるぶしまで汚れた水に浸かる場所もある。
壁には、アジトとして改修されたのであろう、見張り用の小さな覗き窓や、不自然に新しい通路、隠し扉らしきものなどが、注意深く見れば確認できた。

さすがは悪名高い闇ギルドのアジトだ。
侵入者を拒むための悪意に満ちた罠が、至る所に仕掛けられていた。

「……止まって。床、緩い。…下、水路。落ちる」
ノエルが囁き、一見普通の石畳に見える床の一部を指差す。彼女が細い金属棒で軽く突くと、石畳は音もなく崩れ、下には汚水の流れる深い水路が口を開けていた。

「…前、壁。微細な穴。…毒ガス、注意」
壁に開けられた、髪の毛ほどの細さの無数の穴。ノエルは、そこから甘い匂いが漂ってくるのを敏感に察知し、三人にフィルター付きの布マスクを配った。彼女の罠発見能力がなければ、気づかずに毒ガスを吸い込んでいただろう。
他にも、足元に仕掛けられたワイヤー、天井からの落石、踏むと大きな警報音が鳴り響く仕掛けなど、物理的なものから魔術的なものまで、多種多様な罠が彼らの行く手を阻む。
しかし、その全てを、ノエルは驚くべき冷静さと、卓越した技術で、一つ一つ無力化していった。

「ふん、ネズミどもが、こそこそと小細工をしおって。だが、この小娘(ノエル)の目と腕は確かじゃわい」
ゴルドーが、感心したように(もちろん、口調はぶっきらぼうだが)呟いた。

罠を解除しながら慎重に進んでいた彼らだったが、ついに敵に見つかってしまった。
通路の先の曲がり角から、松明を持った黒革の軽鎧姿の男たちが、複数現れたのだ。
腰には短剣やメイスを提げ、その目つきはチンピラとは違う、訓練された兵士のそれだ。
闇ギルド「黒蛇の牙」の構成員に違いない。

「侵入者だ!」
「どこから入ってきやがった!」
「囲め!逃がすな!」

発見されるや否や、構成員たちは連携を取りながら、素早くアルトたちを包囲しようと襲いかかってきた。

「来るぞ!数は6人!」
アルトが叫ぶ。狭い通路での乱戦。数はこちらが不利だ。

「道を空けろやァ!」
ゴルドーが雄叫びを上げ、巨大な戦斧を振り回し、先頭の構成員の盾ごと叩き潰す!
彼の圧倒的なパワーが、狭い通路でこそ最大の威力を発揮する。

アルトもゴルドーに続く。
右から回り込もうとした構成員の短剣をバックラーで受け止め、そのまま盾で殴りつけ(バッシュ)、体勢を崩させる。
正面から突き出された剣は、黒曜の剣で弾き返し、がら空きになった胴体にカウンターの突きを入れる。
さらに、背後から迫る気配を感じ取り、振り返りざまに「インパクト・パルス」!
衝撃波が狭い通路に反響し、構成員を壁に叩きつけた。
剣と盾、そしてギフトの応用技。アルトの戦闘スタイルは、確実に進化を遂げていた。

ノエルは、直接的な戦闘には極力加わらない。
しかし、彼女の存在は、戦況を有利に進める上で不可欠だった。
物陰から音もなく現れ、敵の死角から短剣を投擲し、動きを牽制する。
アルトやゴルドーが戦っている敵の足元に、滑りやすい油を撒いたり、目くらましになる粉末を投げつけたり。
そのトリッキーなサポートが、敵の連携を乱し、味方に有利な状況を作り出していく。

三人の息の合った連携の前に、闇ギルドの構成員たちは次々と倒れていった。
彼らも決して弱くはない。
訓練された動きと、容赦のない攻撃。
しかし、アルトたちCランクパーティの実力は、それを上回っていた。

最初の襲撃を退け、アルトたちはさらにアジトの奥深くへと進んでいく。
通路はより複雑に分岐し、いくつもの小部屋が並んでいた。
そこは、構成員たちの寝床や、質素な食料庫、そして壁に様々な武器や拷問器具のようなものが掛けられた、武器庫兼訓練場のような部屋だった。
中には、鉄格子のはめられた牢獄のような部屋もあり、闇ギルドの非道な活動の一端を垣間見て、アルトは改めて強い怒りを覚えた。

アジトの深部へ近づくにつれて、敵の抵抗はさらに激しくなっていった。
遭遇する構成員の数が増え、中には明らかに手練れと思われる、熟練の暗殺者のような雰囲気を漂わせる者や、ノエルが警告したような特殊な毒を塗った暗器を使う者、あるいは簡単な呪いを呟きながら襲ってくる、邪悪な術師のような者まで現れ始めた。

戦闘は熾烈を極め、アルトたちも無傷ではいられなくなってきた。
ゴルドーの分厚い鎧にも、深い斬り傷が刻まれ、彼の顔には疲労の色が濃くなっている。
アルトのバックラーの亀裂はさらに広がり、革鎧もあちこちが破損している。
ノエルも、素早い動きで敵の攻撃をかわし続けているが、その肩口からはわずかに出血が見られた。

それでも、三人は足を止めなかった。
互いを庇い、励まし合い、傷つきながらも、着実に前進を続ける。
彼らの間には、言葉はなくとも、共に死線を乗り越える仲間としての、強い信頼と連帯感が生まれていた。

そして、ついに。
いくつもの戦闘と、巧妙な罠を乗り越え、アルトたちはアジトの中でもひときわ大きく、そして他の場所とは明らかに違う、重々しい空気が漂う鉄製の扉の前にたどり着いた。
扉には、あの「黒蛇の牙」の紋章が刻まれている。
内部からは、複数の人間の話し声と、時折、誰かの怒鳴り声のようなものが、くぐもって聞こえてくる。

ここが、闇ギルド「黒蛇の牙」の幹部、あるいはリーダーがいるであろう、アジトの中心部に違いない。
ノエルが、扉に仕掛けられたであろう複雑な鍵と、魔術的な罠の気配を、慎重に調べ始める。

鉄の扉の向こう側には、一体何が待ち受けているのか。
闇ギルドの首領か、それともさらなる刺客か、あるいは、マルコム男爵自身がいる可能性も…?
アルトたちは、息を殺し、ノエルが扉を開けるのを待つ。
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