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第111話 魂の祭祀場、見えざる守護者
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広場の中央にある祭壇。
まずはあそこを調べるべきだろう。
アルトは、周囲を警戒しながら、ゆっくりと祭壇へと近づいていく。
祭壇や、周囲に倒れている石柱には、やはり複雑で、見たこともないような曲線的な模様や、象形文字のようなものがびっしりと刻まれていた。
(ゴルドーさんがいれば、これが何なのか、すぐに分かるんだろうけど……)
アルトは、少し前に別れたばかりの、博識なドワーフの仲間を思い浮かべた。
しかし、それらの古代の模様を注意深く見ているうちに、アルトは再び、あの奇妙な既視感に襲われた。
いくつかの模様の連なりや、螺旋を描くパターンが、自分のギフトが覚醒した時に見た、あの蒼白い閃光の軌跡や、エリアーヌが古文書から見つけ出したという古代の術式の図案と、どこか共通するものを感じさせるのだ。
これは単なる偶然なのか、それとも……。
アルトが祭壇にさらに近づこうとした、その時だった。
キーン、という甲高い耳鳴りのような音と共に、軽い頭痛が彼を襲った。
そして、どこからともなく、囁き声のようなものが聞こえ始めたのだ。
それは特定の言語ではない。
喜び、悲しみ、怒り、後悔……様々な人間の感情の断片が、混濁したノイズのように、アルトの脳内に直接響いてくる。
(なんだ…これは……!?)
さらに、目の前の霧の中に、一瞬だけ、幻影が浮かび上がっては消える。
故郷アッシュフォード村の懐かしい風景。
心配そうにこちらを見つめるリナの笑顔。
あるいは、かつて自分を嘲笑ったクラウスたちの顔。
過去の記憶や、心の奥底にある不安が、形となって現れようとしているかのようだ。
この場所は、間違いなく訪れる者の精神に直接干渉してくる。
アルトは、バルガスに教わった精神集中の呼吸法を実践し、必死に心を乱さないように努めた。
見えるもの、聞こえるものに惑わされるな。
現実に意識を集中しろ。
その一方で、アルトは自身のギフト【ダメージ反射】にも、奇妙な変化が起きているのを感じていた。
まるで、高感度のアンテナを立てたかのように、ギフトの感覚が普段よりも遥かに過敏になっているのだ。
周囲に漂う、目には見えない微弱なエネルギーの流れや、遺跡の石材そのものに残る、古代の魔力の残滓のようなものを、漠然とではあるが、肌で感じ取れるような気がする。
そして、時折、強い幻聴や幻覚に襲われると、ギフトがアルトの意志とは関係なく、勝手に反応しかけるような、危うい感覚もあった。
リフレクト・ショックの力が、制御を失って暴発しそうになる。
アルトは、それを必死に抑え込みながら、この場所が自分のギフトと深く共鳴し、あるいは干渉し合っていることを、強く確信した。
(やっぱり、この遺跡は、俺のギフトと何か関係があるんだ……!)
アルトが、祭壇まであと数メートルというところまで近づいた、その時だった。
彼の周囲の霧が、まるで意思を持ったかのように、急速に渦を巻き始めた。
そして、その渦巻く霧の中から、明確な形を持たない、半透明で、ゆらゆらと揺らめく人型の影のようなものが、複数、音もなく姿を現したのだ!
それらは、足もなく、ただ空中を滑るように移動している。
実体があるのかないのかすら判然としない。
しかし、その影からは、凍てつくような冷気と、そして直接こちらの精神を蝕み、恐怖を植え付けようとするような、悪意に満ちたプレッシャーが、ひしひしと放たれていた。
スペクター、あるいはレイスと呼ばれるような、霊体系の魔物に近い存在か。
あるいは、この祭祀場に溜まった、負の精神エネルギーが生み出した、意思なき守護者のようなものなのか。
いずれにせよ、歓迎されざる客であることは間違いない。
影たちは、甲高い、耳障りな叫び声のようなものを上げながら、アルトに向かって一斉に襲いかかってきた!
その動きは、物理法則を無視するかのように、予測不能な軌道を描く。
アルトは、咄嗟に黒曜の剣で迎え撃つ。
しかし、剣は、まるで空気を切るかのように、手応えなく影の体をすり抜けてしまう!
(物理攻撃が、効かない!?)
バックラーでの防御も同様だった。
影は盾をすり抜け、その冷たい気配がアルトの体に直接触れる。
激しい悪寒と共に、精神的な疲労感がどっと押し寄せてきた。
(まずい…!剣も盾も、ほとんど役に立たない…!)
アルトは距離を取り、ギフトの応用「インパクト・パルス」を放つ!
斥力エネルギーの波なら、実体のない相手にも効果があるかもしれない。
ブォン!
衝撃波は影に命中し、その不定形の体をわずかに揺らがせた。
しかし、それだけだ。
ダメージを与えている様子は全くない。
衝撃波ですら、決定打にはならないのか…!
追い詰められるアルト。
物理攻撃も、ギフトの応用も効果が薄い。
ならば、残された手段は一つしかない。
ギフト【ダメージ反射】そのものだ。
だが、相手の攻撃は物理的な衝撃ではない。
精神を蝕むような、見えざる攻撃と、肌を刺す冷気だ。
これらを、本当に反射することなど可能なのだろうか?
(でも、他に手はない…!やるしかない!)
アルトは覚悟を決めた。
一体の影が、精神を直接引き裂くような、鋭い叫び声と共に突進してくる。
アルトはそれを、逃げずに、あえて受け止める覚悟で、バックラーを構え、ギフトに意識を集中させた。
(守る!俺の心を、精神を、守り抜くんだ!)
影がアルトの体に触れた瞬間、激しい頭痛と、全身が凍りつくかのような悪寒が、彼の存在そのものを揺さぶる!
しかし、同時に、アルトのギフトが、彼の強い意志に応えるかのように反応した!
それは、物理的な反撃ではない。
アルト自身の精神的な抵抗力、守護の意志そのものが、ギフトによって何倍にも増幅され、目に見えない力となって、相手の影へと叩き返されるような感覚!
「キィィィィイイイイッ!?」
影は、これまでとは全く違う、明らかに苦痛に満ちた、甲高い悲鳴を上げた!
その半透明の姿が、まるで陽炎のように激しく揺らめき、大きく後退していく!
(効いた……!やっぱり、精神的な攻撃にも、反射は効くんだ!)
アルトは、確かな手応えを感じた。
自分のギフトは、単なる物理ダメージの反射ではない。
受けたエネルギーの種類に応じて、その性質を変化させ、反撃する力を持っているのかもしれない。
それは、ギフトの謎を解き明かす上で、非常に大きな発見だった。
しかし、安堵する暇はない。
苦しげに後退した影も、他の影たちも、すぐに体勢を立て直し、再びアルトへと襲いかかってくる。
そして、精神攻撃を受け止め、反射するたびに、アルト自身の精神力もまた、確実に、そして大きく削られていくのだ。
これは、肉弾戦以上に過酷で、危険な消耗戦になるだろう。
魂の祭祀場を守る、見えざる守護者たち。
物理攻撃が効きにくい難敵に対し、アルトはギフト【ダメージ反射】の新たな可能性、精神的な攻撃への対抗手段を見出した。
まずはあそこを調べるべきだろう。
アルトは、周囲を警戒しながら、ゆっくりと祭壇へと近づいていく。
祭壇や、周囲に倒れている石柱には、やはり複雑で、見たこともないような曲線的な模様や、象形文字のようなものがびっしりと刻まれていた。
(ゴルドーさんがいれば、これが何なのか、すぐに分かるんだろうけど……)
アルトは、少し前に別れたばかりの、博識なドワーフの仲間を思い浮かべた。
しかし、それらの古代の模様を注意深く見ているうちに、アルトは再び、あの奇妙な既視感に襲われた。
いくつかの模様の連なりや、螺旋を描くパターンが、自分のギフトが覚醒した時に見た、あの蒼白い閃光の軌跡や、エリアーヌが古文書から見つけ出したという古代の術式の図案と、どこか共通するものを感じさせるのだ。
これは単なる偶然なのか、それとも……。
アルトが祭壇にさらに近づこうとした、その時だった。
キーン、という甲高い耳鳴りのような音と共に、軽い頭痛が彼を襲った。
そして、どこからともなく、囁き声のようなものが聞こえ始めたのだ。
それは特定の言語ではない。
喜び、悲しみ、怒り、後悔……様々な人間の感情の断片が、混濁したノイズのように、アルトの脳内に直接響いてくる。
(なんだ…これは……!?)
さらに、目の前の霧の中に、一瞬だけ、幻影が浮かび上がっては消える。
故郷アッシュフォード村の懐かしい風景。
心配そうにこちらを見つめるリナの笑顔。
あるいは、かつて自分を嘲笑ったクラウスたちの顔。
過去の記憶や、心の奥底にある不安が、形となって現れようとしているかのようだ。
この場所は、間違いなく訪れる者の精神に直接干渉してくる。
アルトは、バルガスに教わった精神集中の呼吸法を実践し、必死に心を乱さないように努めた。
見えるもの、聞こえるものに惑わされるな。
現実に意識を集中しろ。
その一方で、アルトは自身のギフト【ダメージ反射】にも、奇妙な変化が起きているのを感じていた。
まるで、高感度のアンテナを立てたかのように、ギフトの感覚が普段よりも遥かに過敏になっているのだ。
周囲に漂う、目には見えない微弱なエネルギーの流れや、遺跡の石材そのものに残る、古代の魔力の残滓のようなものを、漠然とではあるが、肌で感じ取れるような気がする。
そして、時折、強い幻聴や幻覚に襲われると、ギフトがアルトの意志とは関係なく、勝手に反応しかけるような、危うい感覚もあった。
リフレクト・ショックの力が、制御を失って暴発しそうになる。
アルトは、それを必死に抑え込みながら、この場所が自分のギフトと深く共鳴し、あるいは干渉し合っていることを、強く確信した。
(やっぱり、この遺跡は、俺のギフトと何か関係があるんだ……!)
アルトが、祭壇まであと数メートルというところまで近づいた、その時だった。
彼の周囲の霧が、まるで意思を持ったかのように、急速に渦を巻き始めた。
そして、その渦巻く霧の中から、明確な形を持たない、半透明で、ゆらゆらと揺らめく人型の影のようなものが、複数、音もなく姿を現したのだ!
それらは、足もなく、ただ空中を滑るように移動している。
実体があるのかないのかすら判然としない。
しかし、その影からは、凍てつくような冷気と、そして直接こちらの精神を蝕み、恐怖を植え付けようとするような、悪意に満ちたプレッシャーが、ひしひしと放たれていた。
スペクター、あるいはレイスと呼ばれるような、霊体系の魔物に近い存在か。
あるいは、この祭祀場に溜まった、負の精神エネルギーが生み出した、意思なき守護者のようなものなのか。
いずれにせよ、歓迎されざる客であることは間違いない。
影たちは、甲高い、耳障りな叫び声のようなものを上げながら、アルトに向かって一斉に襲いかかってきた!
その動きは、物理法則を無視するかのように、予測不能な軌道を描く。
アルトは、咄嗟に黒曜の剣で迎え撃つ。
しかし、剣は、まるで空気を切るかのように、手応えなく影の体をすり抜けてしまう!
(物理攻撃が、効かない!?)
バックラーでの防御も同様だった。
影は盾をすり抜け、その冷たい気配がアルトの体に直接触れる。
激しい悪寒と共に、精神的な疲労感がどっと押し寄せてきた。
(まずい…!剣も盾も、ほとんど役に立たない…!)
アルトは距離を取り、ギフトの応用「インパクト・パルス」を放つ!
斥力エネルギーの波なら、実体のない相手にも効果があるかもしれない。
ブォン!
衝撃波は影に命中し、その不定形の体をわずかに揺らがせた。
しかし、それだけだ。
ダメージを与えている様子は全くない。
衝撃波ですら、決定打にはならないのか…!
追い詰められるアルト。
物理攻撃も、ギフトの応用も効果が薄い。
ならば、残された手段は一つしかない。
ギフト【ダメージ反射】そのものだ。
だが、相手の攻撃は物理的な衝撃ではない。
精神を蝕むような、見えざる攻撃と、肌を刺す冷気だ。
これらを、本当に反射することなど可能なのだろうか?
(でも、他に手はない…!やるしかない!)
アルトは覚悟を決めた。
一体の影が、精神を直接引き裂くような、鋭い叫び声と共に突進してくる。
アルトはそれを、逃げずに、あえて受け止める覚悟で、バックラーを構え、ギフトに意識を集中させた。
(守る!俺の心を、精神を、守り抜くんだ!)
影がアルトの体に触れた瞬間、激しい頭痛と、全身が凍りつくかのような悪寒が、彼の存在そのものを揺さぶる!
しかし、同時に、アルトのギフトが、彼の強い意志に応えるかのように反応した!
それは、物理的な反撃ではない。
アルト自身の精神的な抵抗力、守護の意志そのものが、ギフトによって何倍にも増幅され、目に見えない力となって、相手の影へと叩き返されるような感覚!
「キィィィィイイイイッ!?」
影は、これまでとは全く違う、明らかに苦痛に満ちた、甲高い悲鳴を上げた!
その半透明の姿が、まるで陽炎のように激しく揺らめき、大きく後退していく!
(効いた……!やっぱり、精神的な攻撃にも、反射は効くんだ!)
アルトは、確かな手応えを感じた。
自分のギフトは、単なる物理ダメージの反射ではない。
受けたエネルギーの種類に応じて、その性質を変化させ、反撃する力を持っているのかもしれない。
それは、ギフトの謎を解き明かす上で、非常に大きな発見だった。
しかし、安堵する暇はない。
苦しげに後退した影も、他の影たちも、すぐに体勢を立て直し、再びアルトへと襲いかかってくる。
そして、精神攻撃を受け止め、反射するたびに、アルト自身の精神力もまた、確実に、そして大きく削られていくのだ。
これは、肉弾戦以上に過酷で、危険な消耗戦になるだろう。
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