【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら

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第七章 新しい始まり

その名は薔薇

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 その手紙が、ヴァルモント領のエリアナのもとに届いたのは、ほぼ一か月後のことだった。

 明るい陽射しに満ちた書斎で、エリアナは封筒を手にした。
 差出人の名を見て、心臓が跳ねた。
 どきどきしながら封を切る。

 手紙には、見覚えのあるリリアーナの筆跡で、思いもよらない言葉が綴られていた。

 最後にひとこと。

「今までいろいろごめんなさい。お幸せに」

 エリアナは手紙を何度も何度も読み返した。
 胸がいっぱいだった。
 幸福感に微笑みながら――でも、涙がこぼれ落ちる。

 エリアナは、その手紙を、デスクの引き出しに大切にしまった。



 そして、運命の日が来た。
 冬の朝、エリアナに陣痛が始まった。

「アレクシス……」
「大丈夫だ。医師を呼んでいる」

 アレクシスは、エリアナの手を握った。

 痛みは途方もなく長く続いた。エリアナは、苦しみながらも、必死に耐えた。

「もう少しです、公爵夫人!」

 助産婦が、励ます。
 そして——
 唐突に、赤ん坊の泣き声が部屋に響いた。

「生まれました! 女の子です!」

 エリアナは、涙を流した。

「女の子……」

 助産婦が、赤ん坊を抱いて、エリアナに見せた。
 小さな、小さな命。
 でも、力強く泣いている。

「美しい……」

 エリアナは、娘を抱いた。
 温かい。柔らかい。しっとりしている。
 そして、愛おしい。

「アレクシス……見て……」

 アレクシスは、娘を見つめていた。その目から涙があふれた。

「私たちの娘……」

 彼は、そっと娘の頬に触れた。

「小さいな……こんなに小さいのに、こんなにも愛おしい」

 三人は、そこにいた。
 家族。
 本当の家族。
 愛で結ばれた、家族。

 エリアナは、娘を抱きながら思った。

 この子には、自分が経験したような苦しみは、絶対に味あわせない。
 この子は、愛されて育つ。
 そして、自分を愛することができる、強い人間になる。

「名前は、どうする?」

 アレクシスが尋ねた。

「ローズ……と名付けたいです」
「ローズ?」
「はい。薔薇です。わたくしたちの愛が育まれた、薔薇園のように」

 アレクシスは、微笑んだ。

「いい名前だ。ローズ・ヴァルモント」

 ローズは、真っ赤な顔をして、しきりと泣いている。

 エリアナとアレクシスは、娘を見つめて、微笑んだ。

 新しい人生の始まり。
 ローズと共に歩む、新しい道。
 それは、きっと幸せに満ちている。
 なぜなら、愛があるから。
 真実の愛が。
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