【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
36 / 78
三章 転機の訪れ

③⑥

しおりを挟む

メイジーはすぐにミミの元へと向かった。
フルーツの種を大量にもらって葉の袋に詰める。
頑張って作った網を持って慌てて海へと戻っていく。 
それから手当たり次第に貝を乱獲して網のそばに持っていた。
この貝は取るだけなら何の問題はない。

問題は中身を確認しようとする時だ。
口を開いた瞬間にこちらに噛みついてくる凶暴さに、挟まれた鼻をそっと触れた。

外側は似ているからわからないけど、中はハッキリ色がわかれている。
メイジーはチラリと中を見てから色別に仕分けていく。
どんなに気をつけても貝が早すぎて噛みつかれてしまう。
何度も指や鼻を噛まれてしまった。


「いたたっ……! もうなんでこんなに凶暴なのよ!」


色を確認するだけでこんな風になってしまうのだ。
種を入れ込むのも苦労しそうだ。
そして七枚の網に赤やピンク、青と水色、黄とオレンジ、緑、紫、茶色、黒とわけていく。

波が高くなる時間は避けて島の手伝いに向かい、また海辺に戻って作業をしていると日が暮れてしまう。

(そろそろ戻らないと。夕食の支度の時間だわ……!)

次の日のために、貝が入った網を岩場に固定しなければならないのだが、その作業に苦戦していた。

(貝も暴れるし、気を抜くと転んでしまいそう。なかなか括れない……! 海の中は動きづらいわ)

大苦戦しながらも、なんとか貝が入った網を一つずつ固定していく。
すっかりと日が落ちて暗くて手元が見えずらくなってしまった。
それに加えて皮膚が擦り切れていたり、貝に噛まれていた部分に海水が沁みて痛い。


『手伝ってやろうか?』

「……!」


声を掛けられたメイジーはハッとした。
ガブリエーレの周りには不思議な光の玉が飛んでいる。
いつも油を染み込ませた木を松明代わりにしているのだが、ガブリエーレの元にそれを持っていくのはメイジーの役割りだ。
つまりそれがないため自分で何かを光らせているのだろう。

(いけない……っ! もうこんな時間に!)
 
メイジーが慌てて立ち上がると、波に貝と網が流されてしまう。


「あっ……!」


慌てて網を取りに行こうとするものの岩に躓いて転んでしまう。
顔面から飛び込んでしまい、額を強くぶつけてしまったらしい。
頭が割れるような痛みが走る。
貝もここぞとばかりに網から逃げていく。
顔を上げたメイジーは腕を伸ばしながら涙目になっていた。

(ああ……わたくしの努力がっ)

メイジーは空っぽな網が波に流れないように掴む。
嫌な予感がしつつ、ゆっくりと体を起こす。
水でびしょ濡れだし、そこら中が痛すぎて顔が歪む。

(黒い真珠が逃げちゃったわ。一番数が少なかったのに……)

メイジーは顔についた水を拭って海岸へと戻る。
そしてこの惨状をずっと見ていたであろうガブリエーレを見上げた。


「ごめんなさい……もう夕食の時間よね。すぐに準備するわ」

『……そこまで時間をかけて苦労して、ボロボロになっても何も成果が得られない。それでも続けるのか?』


ガブリエーレはメイジーの顔を見れば質問ばかりする。
水を払ってスカートの裾の水分を絞りながら答えた。


「えぇ、続けるわ。当たり前じゃない」

『……何故?』

「何故って……」


そう聞かれてメイジーは改めて考えた。
うまい言葉が見つからずに顎に手を当てて首を捻っている。


『もう俺の力に気がついているのだろう? どうして頼ろうとしない?』


ガブリエーレは不思議な力を使う。
言葉を理解する能力、周りに浮いている光の玉、メイジーとムーを助けた時、水が操った時だってそうだ。
恐らく彼はやろうと思えば大抵のことは何だってできてしまうのだろう。
これだけ自信満々なのも頷ける。

それなのにこうして何もせずに毎日海を眺めているのがよくわからない。
何かを待っているにしては余裕があるようだし、目的があるわけでもない。
神のようにただ海を眺めているだけだ。

ガブリエーレはメイジーの答えを待っているのか、こちらをじっと見ている。
暗闇の中で青い瞳が光に照らされて怪しく光る。


「どうしてって言われても……」


どうして時間をかけて用意するのか。
なぜ島民たちやガブリエーレを頼らないのか。
苦労をして丸い真珠を作るために思考錯誤するのか。
ボロボロになっても成果がなくても続けるのかと自分に問いかける。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

処理中です...