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三章 転機の訪れ
③⑤
しおりを挟む『スリーダイト帝国に? 何故?』
「魔石と宝石でトラブルになったと読んだわ。これがアクセサリーになればスリーダイト帝国も稼げる手段になるかもしれないでしょう? もし帝国貴族たちの間で流行れば他の国にも広がるかもしれない」
『ほう……なるほどな』
意外にも真面目に話を聞くガブリエーレに驚いていた。
「馬鹿にしないの?」
『向上心のある奴は嫌いじゃない』
「……そ、そう」
いつも偉そうなガブリエーレのことだ。
絶対に馬鹿にしてくると思っていたが、普通に話を聞いてくれていることに驚いていた。
これは杏珠の記憶だが、いつかは自分の店を持ちたい。独立したいと考えていた。
そんな考えを話すと、馬鹿にする人やできるわけがないと反対する人もいた。
悔しい記憶が鮮明に蘇っていくが、それに反発するようにがむしゃらに突き進んできたのだ。
『だが貝から出るシンジュが宝石の代わりになるとは思えないがな。輝きも宝石に勝ることはないだろう?』
「……そうよね。誰もがそう思うはずよ」
貝から出る真珠は歪なものばかり。
だからこそ女性たちもアクセサリーなどに加工することもなく子どものおもちゃになっているのだろう。
「それでこの種の出番なの!」
『…………種?』
メイジーは先ほどガブリエーレの口から取った種を見せる。
「これを使って丸い形にしてみたいの。うまくいくかはわからないけど、やってみたい!」
『これが丸になったら何かが変わるのか?』
「えぇ、とても綺麗な層になるはずなの。それに何事もやってみないとわからないじゃない!」
『……そうか』
「わたくしはスリーダイト帝国でも真珠を流行らしてみせるから」
メイジーが気合い十分にそう言った。
ガブリエーレは意外にも納得したように頷いている。
それがメイジーを応援してくれているように思えて嬉しくて仕方ない。
(今まで性格最悪だって思っていたけど、いいところもあるのね)
木の実の容器からあるものを取り出して、ガブリエーレの手のひらに乗せる。
「はい、これをあなたにあげるわ」
『……これは』
ガブリエーレの手のひらの上には瞳の色と同じ、ブルーの真珠を二粒渡す。
しかも雫型の綺麗なものだ。光の加減で色が変わるところも美しい。
(本当はイヤリングに加工したかったんだけど、ガブリエーレには何度も助けられているし仕方ないわ)
ガブリエーレはブルーの真珠をじっと見つめたまま動かなくなってしまった。
「もしかして他の色のがよかった?」
『…………いや』
ガブリエーレはそのまま手のひらを握りしめた。
そのまま黙り込んでしまった彼にメイジーが首を傾げていると、ガブリエーレの頬がほんのりと赤く染まっているような気がした。
(そんなに気に入ったのかしら。意外だけど真珠が好きなのかも……)
メイジーは皿代わりの葉を片付けていると、ガブリエーレはあることをポツリと呟いた。
『……そろそろ、か』
「え……?」
『いや、なんでもない。お前はずっとここで暮らすのか?』
「いいえ。でもここでまだまだこの島でやりたいことがあるもの。それに……島の人たちにも恩返しがしたいわ」
『……そうか』
「真珠で儲けて、いろんなものをこの島に届けられたら最高よね」
メイジーはそう言って立ち上がる。
『お前を見ていると、なんだか嫌な気分になる』
「嫌な気分……? それってどういう意味?」
『…………さぁな』
ガブリエーレはそのまま顔を背けてしまった。
メイジーは首を傾げながら色々と片付ける。
あった時から不思議だったが、いまだにガブリエーレのことは何一つわからない。
(あっ、こうしちゃいられない。早くフルーツの種をもらいに行かなくちゃ……!)
メイジーの頭はすべて真珠に埋め尽くされていた。
早く実験したいソワソワとした気持ちを思い出す。
(──よし! 今からやってやるわよ)
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