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三章 転機の訪れ
③⑦
しおりを挟むメイジーはたどり着いた答えを話していく。
「自分から動かないと何も得られないでしょう?」
『…………』
「幸せと成功が、待っているだけで自分の元に来てくれるわけないんだから」
メイジーはそう言うと、ガブリエーレは大きく目を見開いた。
その後いつもの表情に戻ってしまうと、光の玉がこちらにフワフワと飛んでくる。
辺りが光で灯りに照らされている。
「これって……?」
『また怪我をしたのか?』
そう言われて自分の怪我の状態を確認するために俯いた。
それが広範囲な擦り傷は見ていて痛々しい。
(うぅ……また傷が増えたわ)
メイジーが思っている以上に怪我がひどくて、現実を直視したくなくて視線を逸らす。
またミミに無理をするなと怒られてしまうだろうか。
『治してやろうか?』
「何を?」
『その怪我をだ。軟弱者め』
ガブリエーレの提案は素直に嬉しいが、彼がこんなに優しいなんて逆に怖いではないか。
(何か請求されそうで怖いから断っておきましょう。きっとお腹が空いているのね)
勝手にそう解釈したメイジーは丁重に断った後に「すぐに夕食を取ってくるわね」と言って彼から距離を取る。
『本当にいいのか?』
「えぇ、そのうち放っておけば治るわ」
『…………』
ガブリエーレは驚いたような不思議そうな表情をしている。
夕食を取りに行こうとすると光の玉もメイジーについて来るではないか。
両手が空いているのに周囲が明るくて便利だが不思議な感覚である。
島民たちの元に着くと、メイジーの横に浮かんでいる光を見た瞬間、一斉に跪いて地面に額をつけた。
『神様……! メイジー、授かった』
『光、神様の力』
『神の力、授かった! 素晴らしいっ』
「これは違うの……! ただ光がポワッて飛んできただけだから」
どうやらメイジーが神の力を授かったと勘違いしているらしい。
メイジーが説明すると島民たちは違うと納得してくれたようだ。
興奮する島民を落ち着かせながら、メイジーはガブリエーレの食事が欲しいと頼む。
食事はもうすでにできていた。
やはり時計がないため、正確な時間はわからないが辺りの暗さからかなり時間が経っていることがわかる。
メイジーが食事を運ぼうとすると、子どもたちが心配そうな表情で声を掛ける。
『メイジー、傷だらけ』
『神の力、痛かった?』
「これは貝と戦ってできた傷よ。心配してくれてありがとう」
メイジーは子どもたちの頭を撫でてから足早にガブリエーレの元へと向かった。
また食べさせろと言われるのかと心配していると、彼は普通に食べ始めた。
(やっぱりお腹が空いていたのね。今度からは気をつけないと……)
明日からは時間通りに食事を運ぼうと心に決めながら、メイジーは葉の上に種を並べていた。
今日、ガブリエーレはとても静かだった。
何も言うことなく淡々と食事を終えたためメイジーは食事を乗っていた葉を片付ける。
この後、簡単に自分の食事を済ませて貝の様子を見に行こうと思っていた。
網が流れていないか心配になったのだ。
メイジーが立ち上がると、光の玉が一緒に持ち上がる。
「この光の玉って……」
『今日だけは貸してやる』
「……。なんか優しくて怖いわ」
『なんだと?』
「いえ、なんでもありませんわ。ありがとう!」
ガブリエーレの機嫌を損ねる前にとメイジーは走り出す。
この光の玉は両手が開くので貝の様子を見るのに便利である。
メイジーは食事を済ませて、貝を入れた網を見に行くと、食い破られていることはなかったが、たくさん入っていた貝の網は波のせいか外れてしまっている。
半分ほど中身は残っていたので、網を再び岩にくくりつける。
(網の改良も必要だわ。網が荒すぎても逃げられそうだから、もう少し細かいものがいいわね。くくりつける紐は長めに作って……貝に噛まれないような工夫も必要だわ)
メイジーは夜遅くまで貝を入れた網を直しながら作戦を練り直していたのだった。
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